岡本では18年間まちづくり協議会活動をしてきましたが、 初期の10年間はルールづくりをしました。 最初にまちづくり協定をつくり、 その次に地区計画、 続いて景観形成地域の3つのルールづくりをしてきました。 ルールばっかり作っているものですから、 住民からは「実際のまちづくりはしないのか」と怒られることもありました。 ルールというのはどうしても「これはダメ」という規制になりますから、 商売をしている人にとってはやりにくいという話も出るんです。
そういう雰囲気の中でまちづくり協議会はけっこう頑張ったと思うのですが、 ルールづくりについてその効果や限界についてはどうお考えですか。
西崎:
ルールづくりはまちづくりの理念から発生するわけです。 「岡本は住商協調の街にしよう」「若者が安心して過ごせる街にしよう」「美しい街にしよう」などの理念があるんです。 そうしたものを集大成して、 神戸市に「まちづくり提案」として申し入れました。 それを神戸市が受けて条例化したのが「まちづくり協定」です。 その中には道路のセットバックなど、 いろいろな課題の解決策が盛り込まれています。
ただその当時の雰囲気を一言で言うならば、 「街がこれ以上悪くならないようにしたい」というものでした。 それが最初の目的でした。 パチンコ店や風俗営業が入ってこないよう、 その時点で阻止したんです。 つまり、 街の雰囲気が壊れないようルールの網をかぶせたわけです。
セットバックについては今現在建っているものを削るわけにもいかないので、 何十年もかけて行なう仕事です。
セットバックのような気の長いルールと、 雰囲気を壊さないというルールの2本立てが岡本のまちづくりルールです。 「これ以上悪くならない」ようにしたというのがルールの効果と言えるでしょうか。
限界について言えば、 ものづくりに関係するルールづくりは時間をかけてやっていかねばしょうがないというところでしょうか。 建築についてはいろんな法律がありますから、 その兼ね合いが難しいんです。
また、 岡本のような古い街で一番問題になるのは、 官民境界があいまいだということです。 この道が私道なのかどうか、 階段がはみ出していないかどうか。 それをすっきりさせると同時に、 街で生活していくにはルールが必要なのだということを住民に分かっていただかねばならない。 それにかける時間が10年必要だったという気がしています。
後藤:
岡本ではまちづくりと言うより、 いろんなルールを作って「作らせない」が街のデザインの基本になっているわけですね。 多分、 地域の住民の中にはまちづくり協議会の活動を理解されてない人もいるだろうと思います。 しかし「これ以上悪くならない」ことこそ、 街にとって宝物ではないかとも思います。
ここで、 岡本で今、 問題になっているスライドを見ていただこうと思います。ルールづくり
美観上問題となっている屋外広告物 |
西崎:
神戸市にも看板の大きさやはみ出しを規制する広告物取締条例があるのですが、 現場の商売人はそれに頓着してないのが実状です。 特にチェーン展開をしている店が地域ルールを無視します。 我々が腹が立つのは、 この地域の事を知らない大阪辺りの業者が街の景観に関係なく店を作ろうとすることです。 地域より店のオーナーの方を向いているわけで、 これを取り締まるのは難しい。 地域の中では「品がない」と顰蹙をかっているのですが、 看板を取れというわけにはいかないのです。 街を美しくしていこうという共通理念の不足があると思います。