ここまでで六甲道のようにまちづくり協議会で進めるという方式ができる以前の公共施行のやり方を聞いていただきました。 これから六甲道の再開発で、 住民参加をどういうふうにしていったかということを、 話あっていきたいと思います。六甲道での再開発の進め方
図6 六甲道駅南地区第2種市街地再開発事業事業計画図(95.3.17時点) |
図7 六甲道駅南地区第2種市街地再開発事業完成予想パース(95.3.17時点) |
突然都市計画決定が行われたので、 住民は猛烈に怒りまして、 白紙に戻せという話がありました。 神戸市としては一応都市計画決定をしたので、 撤回はしないけれども、 これからは住民の意見を聞いてこの案を直していこうということでした。
図8 四つのまちづくり協議会 |
図9 六甲道駅まちづくり連合協議会の組織図 |
まちづくり協議会で意見をまとめて、 まとまったら住民の意見にしたがって都市計画の変更をする。 そして事業計画も、 住民の意見がまとまってまちづくり提案が出てきたら決定しましょうというようなやりかたです。
住民の意志決定が先で、 それに基づいて法手続きしていくというやり方について、 全般的な話ですが、 施行者の所長さんの立場においていかがですか。
倉橋:
まず話の前提で、 有光さんも言われましたように、 震災直後、 先に都市計画の網をかけたということで、 それに対する反発がとても強かったのです。 特に再開発の都市計画については、 意見書が四百何十通も出てまいりました。 一つの都市計画でこれだけ意見書が出てくることはかつてなかったことで、 これは大変なことになったということです。
県の都市計画審議会が終わったときの話では、 二段階の都市計画で進めていくという話でした。 枠はそのままなんだけれども、 地元のみなさんに関係が深い道路とか公園とかの取り方は、 あとでじっくり相談し、 直すべきところは変更していきましょうということでした。
そのためにまちづくり協議会を地元のみなさんにつくっていただいて、 そこで議論していただこうということです。 なにぶん専門的な話もあるので、 それについては行政からコンサルタントを派遣することになりました。
今振り返ってみますと、 実はこれと同じような体験を神戸市はしたことがあるんです。 どこかといいますと、 事業型のまちづくり協議会方式、 当時は都市計画協議会といっておりましたが、 板宿地区の区画整理事業です。
50年も昔の戦災復興の区画整理事業で、 ずっとやりたいやりたいと言いながら、 商業が集積してしまいなかなか難しく、 取り残されてきたというところです。 いよいよ取りかかろうという時に、 計画道路が商店街の真ん中を通るため猛反対にあい、 暗礁に乗り上げてしまいました。 そこで地元の方も、 専門家をいれてもう一度考え直しましょう、 ということになり、 やってきた事例です。 そのときも、 計画道路が変更された経験がありました。
私もそのとき横にいて状況を見ておりましたので、 住民の方々といっしょに話をしていくということには、 私はなんの抵抗もありませんでした。 当たり前の話だ、 と思っておりました。
あともう一つ、 個人的な話で申し訳ないんですが、 私は行政に入ってから長い間ずっと組合施行の再開発事業を担当しておりましたので、 地元の方々と話をするのは、 そういう経験からしても当然との思いでした。
当時の報道では「一度決めた都市計画は役所は絶対変更しない」とか「今回の震災復興は初めてのケースだ」という話があったのですが、 実はそうではなくて、 それまでにも我々は体験していたということです。
有光:
それは初めて聞きました。 市が説明したり、 地元の意見を吸い上げるということは公共施行の場合もあったんですが、 六甲道の場合、 これは異例だなあと思ったのは、 地元が決めないと次の法手続に入らないということです。
今までは、 地元にある程度説明したということになれば、 法手続に入る。 法手続に入るということは、 縦覧をかけて、 意見書を出してもらって、 意見書が多ければその通りに行かないでしょうが、 たいていの場合は意見書は不採択ということでそのまま流れていく。 これがが今までの公共施行の場合の住民の意見の吸い上げ方だったと思います。
それが六甲道の場合は、 まず住民が意思決定してから公共が手続きに入るということですから、 ぜんぜん違うと思っていたんですが、 神戸市は以前にこういうことをやっていたということですね。
私たちは、 住民の意見集約を手助けするということでコンサル派遣をされました。 そうするとこれは当然、 施行者の立場に立ったり、 そういう立場でものを言うと思われたら役割が果たせません。 あくまで中立的であるということが要求されます。
制度再開発は法律に基づいて進めているわけですから、 我々は行政の考え方はわかるし、 むしろ行政と我々コンサルタントは同じような考え方で進めていかなければと思っています。 しかし、 そういう姿勢で住民に説明したのでは、 「行政といっしょやないか」「お前らは市役所の代弁者か」ということになります。 そう思われないようにしていくのが非常に難しかったというところです。 まあそれはこれからおいおいお話させていただきます。