それでは六甲道の場合の、 都市環境デザインに関わることで、 住民からどんな意見が出て、 それをどういうふうにまとめていったかということを、 OHPでごらんになっていただきます。
図10は、 まちづくり協議会の最初の頃の写真です。
図11は再開発事務所の二階で、 まちづくり提案をするときの投票、 開票の風景です。
もっとも問題になったのは公園の大きさです。 市の方で一方的に決めたのは1haという大きさでした。 それに対して住民側が、 もう一つ2,500m2の街区公園もあるやないかと言ったわけです。 それから、 建物の高さについて、 総じて住民は低層がいいというんですね。 ところがいろいろ説明している中で、 事業採算上、 やっぱり容積率一杯まで建てないとみなさんの住宅の価格が高くなりますよというと、 高層もやっぱり必要だな、 とだんだん分かってきたようです。
まちづくりとしては低層、 中層、 高層が混在した案と、 低層、 中層だけで作る案とがでました。 それと地区内に3つぐらい壊れずに残ったマンションがあったのですが、 この残存マンションを残したまま再開発をできないか、 ということで、 この建築計画では3通りできました。 公園の大きさでは2通りです。 これら全てについて代替案を作ろうということで、 全部で6通りの代替案を作って、 最終は投票で決めてもらったわけです。
図13は95年当時のものですが、 もうすでに公園の形が最初の都市計画決定の時の正方形の1haから、 同じ1haですが羽子板形に変わっています。 これは超高層、 高層、 低層が混ざった案です。 これが1案です。
図14は同じような高層、 中層、 低層の混在で、 2,500m2の街区公園の案です。
図15は公園1haで残存マンションを残すとこうなるという案で、 計6つの案についてそれぞれまちづくり協議会で投票していくことになりました。どんな意見が出て、
どのように反映されたか
図10 まちづくり協議会の様子(初期の頃)
図11 まちづくり提案をしている様子
図12 前提条件(6つの案の基礎条件)
図13 超高層、 高層、 低層混在案、 公園は1ha
図14 超高層、 高層、 低層混在案、 公園は0.25ha
図15 残存マンションを残す、 公園は1ha
図16 都市計画変更決定(97.02) |
図17 それぞれの協議会のまちづくり提案 |
これが都市計画決定を変更する元になった、 それぞれの協議会のまちづくり提案です。 この紫がかったところが低層階で、 だいだい色で囲んでいるのが高層階です。
こののように住民の意見がまとまってきたというところまでお話しましたが、 倉橋さん、 もしも住民が公園はやっぱり2,500m2でいい、 それで中層、 低層だけのまちがいいと、 仮に投票でそちらの方が多かった時は、 どういうふうにされるつもりやったんですか。
倉橋:
一番答えにくい質問なんですが、 六甲道に再開発の都市計画決定をかけたときの目的は、 あそこに防災拠点となる1haの公園をつくることでした。 したがってどうしても2,500m2で良いということであれば、 事業手法も変わるのではないかと思っていました。 我々としては風呂敷をたたんで本庁に戻ろうという気持ちでした。
有光:
というのは、 役員会では挙手程度の採決なのですが、 1haの公園で高層、 中層、 低層混在案と、 2,500m2の公園で高層、 中層、 低層混在案が非常に接近していたんです。 役員会ではちょっとだけ1haのほうが多かった。 それぐらい接近していたんです。 全体集会では、 いろんな意見を言う人がいますから、 ひょっとしたらその時にはどうしようかということです。
専門家としては拒否権というか、 ちょっと待ってほしい、 もう一度説明させてほしい。 その場でできるかどうかは別にして、 もう一度みなさんが理解できるように説明せなあかんという覚悟を持って臨んでいたんです。 非常にリスキーなことをやったと思います。 というのはもちろん、 公園は1haであるべし、 と私は思っていたからですけれども。
でも風呂敷たたんで帰るというのはできたんですか?
倉橋:
結果的にはどうなったか分かりませんが、 それぐらいの気持ちであったということです。 ここに六甲の方がおられたら、 語弊があるかもしれませんが、 六甲の人は、 あらゆるケースを検討したいという性癖があるというのが一つと、 それから、 すんなり従うのは気持ちがおさまらないというのが非常に強いところです。 そういうことで2,500m2の案も一緒に検討しないと公園の話を検討する意味がないということでしたし、 役員会では公園の話すらできない、 というような状況でした。 だからあえてリスクを背負いながらそういう比較検討をやってきました。