参加型デザインの理論
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都市環境デザインとは何か

改行マーク今日は参加型都市環境デザインがテーマです。 先ほどの「普遍性の希求」はこの都市環境デザインにおいてより重要なのではないか、 より顕著なのではないかと思います。 なぜそうなのか。 それを明らかにするために、 まず、 都市環境デザインであることにこだわって、 そのことについて吟味してみたいと思います。

改行マーク実は私は“都市環境デザイン”の「環境」という言葉にひっかかりました。 我々は「モノ」はデザインすることはできます。 でも「環境」をデザインするとはどういうことでしょうか。 厳密に言えば環境自身を直接デザインする事は出来ないのです。

改行マークもちろん「環境デザイン」という言葉も常識的には解るんですが、 「参加」という今日のテーマを考える時にはもう少し正確に言葉を使う必要があるだろうと思います。 ではどう考えるべきかを整理してみましょう。


システム論(主体と客体、 システムの関係概念図)

改行マークたしかに「参加」とは個人個人が、 ふと疑問に思うとか、 使命感に燃えるとか、 それなりの動機から始まるのでしょうが、 むしろ参加を通して個人が喧嘩したり納得し合ったりして他の人と結びつき、 場合によっては、 自然と触れて、 文化的なものに触れて、 過去の人や未来の人、 目の前にいない人にまで関わりをもちうる可能性にあれこれ思いめぐらせることに大きな意味があるのではないでしょうか。 だから、 個人主義的なアプローチではなく、 「システム」という言葉をそこにあてはめて、 要素である人や自然や人工物のつながりを考えていく、 そういう発想からお話ししたいと思います。

改行マークところで、 「主体がもの(客体)をつくる」というのがデザインの行為です。 「主体」としてはデザイナーでも建築家でも結構です。 いずれにしても従来のデザインは主体としての「ヒト」と作る「モノ」しか考慮に入れていませんでした。

改行マークしかし我々が“環境デザイン”と呼んでいるものは、 実は「作るモノ」である“客体”も、 ある環境に取りこまれているし、 逆に作る側である“主体”も特定の環境に埋めこまれています。 それなのにその環境との相互作用を無視して考え、 機能だけで済むといった話をしてきたからおかしいわけです。

改行マーク「環境」という言葉を入れるのだったら、 “主体”が包まれている「環境」が含まれている、 あるいは“客体”が含まれている「環境」も含まれている。 そういうとらえどころがない関係をどうやって考えて行くか、 それが、 出発点なのだろうと思います。

 

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図1−主体と客体、システムの関係概念図
 
改行マークさてこの関係をイメージでかくと図1のようになります。

改行マークデザイナーである「主体」が、 「デザイン」するときに「あるシステム」(客体)を作る。 「システム」という言葉が抽象的ならモノなりビルなりに置き換えて考えてくださって結構です。 その「システム」が囲まれている所が「環境」にあたります。

改行マークシステムを建物と考えると、 建築家が主体になるわけで、 建物の構造を決定すること、 すなわち設計図を書くことが、 システムをデザインすることですが、 それはあくまで建物をデザインしているわけで、 このときは決して、 建物の周りの環境をデザインしているわけではありません。 しかし、 その建物の周囲をやはり考慮に入れて、 例えば屋根を揃えるとか、 隣と同じようにセットバックするとかの配慮をしてデザインすることもあります。 この場合は、 建築家は建物の置かれている環境を考慮している、 つまり主体はシステムの含まれる環境を考慮してデザインしていると言えます。

改行マークところが、 そうして「システム(建物)」を作るときに、 「システム」と「環境」については考えてもデザイナーについては考慮に入れない、 デザイナー自身もある環境に含まれている、 とは考えていないことがあります。 このように「デザイナーはデザインという行為から切り離せる」と考える場合が、 小さく囲まれた「環境」にあたります(図中、 環境2)。 そうではなくて、 「主体(デザイナー)自身もそこに含まれる」と考える場合が、 大きな「環境」(図中、 環境1)にあてはまるわけです。

改行マークこれで、 概念道具である「主体」とか、 「システム」とか「環境」とかのお話が終わりました。 で、 一応テーゼというのを書きましたが、 都市環境デザインにおける「デザイン」は次のように言うことができると考えています。

 テーゼ:主体−システム―環境
 デザインとは、 システムの「目的」を「機能」として与え、 そのシステムの「機能」が「環境」において発現すべくシステムの「構造」を決定すること。
 
改行マークめちゃくちゃ抽象化するとこうなるだろうということです。 先ほど挙げたように建物をシステムとすると、 その建物には目的があるわけです。 レストランを建てようとするなら、 まずレストランをつくること自体が目的になりますし、 さらにそのレストランの空間をどういう風に構成していくか、 カウンターを設けていくか、 席間を広々ととるか、 など様々な下位の目的がまた発生します。 その目的に合わせて、 設計図を書いて、 キッチンの場所とか受付の場所とか、 導線の付け方など具体的な機能を落としこんでいく。 そしてこれはやはりレストランという建物としてのシステムをデザインすることであるけれども、 ここで当然、 想定される客とか、 近隣施設とか、 交通条件とかそのレストランの周囲の環境も考慮されるわけで、 こうして実際にそこで客が快適に食事ができるようになるならば、 そのレストランの建物(システム)が、 ある場所で(環境)で、 食事のサービスを行う(機能の発現)していると、 いえるということです。

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