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デジタル・アーバンデザイン

ネット社会のまちづくりイメージ

PPI計画・設計研究所所長

三好庸隆

環境共生型社会実現にむけて、 強調したい3つの視点

 環境共生概念へのアプローチの仕方としては、 (1)エコロジカルアプローチ、 (2)技術・技法的なアプローチ、 (3)保全・再生的なアプローチ、 (4)社会・文化的なアプローチなど、 多様なアプローチが考えられている注1。 都市デザイン領域においても、 多くの事例・試みが報告されつつあるが、 そのような中で、 環境共生型社会を創り出そうとする人々(社会)の意思をいかにして創り出していくか、 という視点からの試み・発想が意外に欠落しているのではないか、 と筆者は危惧している。

 例えば、 技術的には解決している課題であったとしても、 人々(社会)の関心が薄ければ、 その技術の普及は遅れる訳で、 環境共生型社会の実現はその分遅れる(環境教育の問題)。

 また、 税制や、 土地・建物の評価面において、 環境共生型社会、 サスティナブルな社会を創り出す状況が確立しているとは、 とても思えない(税制・不動産評価の問題)。

 さらに、 例えば、 緑豊かで、 デザイン性の高いパブリックスペースを計画・設計したとして、 それが地方自治体に移管されたとき、 多くの地方自治体において財政事情の悪化が予想されることから、 当初の計画・設計が維持できない、 即ちサスティナブルでない状況が十分予測される(地方財政の問題)。


環境共生型社会の前提となる日本社会

 環境共生型社会を考える際、 その前提となる21世紀前半の日本社会は、 人口減少社会、 高齢社会、 (インターネットの普及を背景とした)市民ネットワーク型社会、 参加型まちづくり社会などのキータームで把握することが出来よう。 これらをおおむね必然としたうえで、 前項で強調した3つの視点をもからませつつ、 冒頭に示した多様なアプローチの成果を各論で生かし、 環境共生型社会実現にむけて総合的・戦略的に取り組む必要がある。


Sニュータウン主要街路における試み

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Sニュータウン主要街路コンセプトパターン
 都市デザイン領域での最近の提案例として、 Sニュータウンメインストリート主要街路における試みについて報告する。 提案の骨子は、 総幅員30m道路で片側7〜9.5mの歩道空間において、 共(コモン)の仕掛け―例えば、 ガーデニング・クラブによる花と緑の育成・管理といった、 住民参加システム―を導入し、 公的に仕上げられた画一的道路景観を目指すのではなく、 住民で育んでいく“庭園的環境づくり”をめざす。 一方、 沿道宅地側では、 土地条件に対応しつつ、 私の空間に、 共(コモン)の仕掛け―例えば、 オープン外構、 街路から楽しめる花壇、 窓辺の花、 歩行者のネットワークなど―を導入する、 というものである。

 このような共(コモン)の仕掛けを豊かにすることにより、 次世代型のコミュニティ形成を育む可能性を内包させるとともに、 道路維持費の低減を図る。 一方で、 デジタル技術を駆使しつつ、 あるルールのもとでの市民参画方式を開発し、 都市デザインの多様化を図る。 市民ネットワーク型社会、 参加型まちづくり社会を背景に、 このような仕組みは、 益々リアリティ現実味をおびる状況が来ている。 そこにネット社会における環境共生型社会実現にむけての“デジタル・アーバンデザイン”の可能性と魅力を感じている。

注1 例えば「サスティナブルアーキテクチュアー」ビオシティ参照。

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