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滋賀県における広域的環境共生のあり方

滋賀県立大学 奥貫 隆/リョーワ伊藤 隆

 環境共生を目指した街づくりは、 これからの地域社会のあり方を考える上で基本とすべき課題であるが、 環境先進県を自負する滋賀県においては、 他の地域と異なる特別の姿勢が求められているように思われる。

 琵琶湖を中心に、 四方を比叡、 比良、 伊吹、 鈴鹿山系に囲まれた滋賀県の環境の骨格は、 40万年前の地殻変動を経て形成されたものであり、 その自然条件を利用しつつ社会的な活動を重ね現代に引き継がれている。

 中世、 近世を通じて、 東海道、 中山道等の交通の要衝として、 陸路、 水路を発達させ、 大津、 安土、 彦根、 長浜をはじめ歴史の舞台となった都市を形成してきた。

 今、 私たちが享受する環境や景観は、 この間の膨大な時間を堆積し存在しているのである。

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1.大津市仰木のの棚田景観。
2.大規模な土地の改変及び人間が住むことによる環境圧の変化の度合を考えると環境共生の本質とは何かを考えさせられる。 3.安曇川流域の沖積平野に広がる田園環境。
4.彦根市旧市街を俯瞰する。
 

 滋賀県におけるこれまでの緩やかな環境や景観の変化が、 今後も維持されるかという問いに対して、 私は極めて大きな危機感を抱いている。 1997年5月、 厚生省が公表した都道府県別将来人口推計によれば、 2025年に滋賀県は全国第一位の人口増加率(23%)が見込まれている。 (1995年末人口128万7千人が、 この30年間に30万人増加し158万5千人となる。 )滋賀県の土地利用は、 県土の約50%が森林、 約20%が水面であるから、 残る30%の平地部に約30万人の人口増加が集中することになる。 そしてこの平地部の9割が、 農地であることを考え合わせると21世紀初頭の滋賀県の環境変化とは即ち、 農地の都市化であり、 琵琶湖岸を中心とする水、 土、 緑、 生物の循環系が都市化の名のもと.に各所で断ち切られることを意味する。

 環境との共生をテーマとするとき、 それが多くの場合、 自然循環が徹底的に破壊され尽くした都市における対症療法的対策に技術者の目が向けられるが、 本質的な意味での環境との共生は、 土地利用のコントロールそのものであると私は考える。 ドイツを始め各国の環境共生技術に関心を持ち日本の都市や地域への導入に取り組む前に、 土地利用の規制或いは本来の都市計画を遂行する強い意志が、 行政担当者にない限り、 表面的な或いは時流に流された環境共生という結果に終わりかねないことを危惧するのである。

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