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土地利用計画からのアプローチ

生態学的視点に基づく土地利用評価

シェラプラン

河本一行

 
 
 「環境共生」の環境とは、 広い範囲で捉えられるが、 なかでも大自然の環境は、 人間がコントロールできるものではなく、 神にも似た絶対的なものである。 このような自然環境の下では人間は順応するしかなく、 ここでいう環境共生とは、 自分たちの住まう都市的環境の中で、 人間にとっていかに快適な空間を創出し維持していくかということになるのではなかろうか。

 自然環境を無視した開発は災害として大きなしっぺ返しを受けることになり、 自然環境と人間の住むエリアとの棲み分け的な考え方が必要になってくる。

 この土地利用面からのアプローチでは、 イアン・L・マクハーグ氏によって、 環境に関するデータを地域計画立案のプロセスに組み込む生態学的視点に基づく手法が提唱されている(「DESIGN WITH NATURE」1969年)。

 今や古典的ともいえる手法ではあるが、 この生態学的視点に基づく土地利用評価の考え方等を活用した調査研究例を次に紹介したい。

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生態学的土地利用評価の例/土地採取候補地の適地選定のフロー
 本調査の目的は、 関西国際空港の埋立事業に伴う土砂採取候補地の選定と跡地の有効利用、 事業性の両面から最終的な土地の評価を行い、 事業化の判断にしようというものであった。

 山地の土砂採取候補地の選定にあたっては、 (1)土砂採取・搬出の制約が小さいこと。 (2)環境保全上、 周辺地域に著しい影響を与えないこと。 (3)防災上、 周辺地域に著しい影響を与えないこと。 などを選定条件の基本とし、 広域エリア(大阪湾岸50km圏)から逐次、 土砂採取可能地を絞り、 最終的に土砂採取候補地を選定することを基本とした。 土砂採取候補地の選定は多段階抽出法を適用し、 右図に示すように、 各段階別選定条件に対応する環境データを重ね合わせることにより土砂採取可能地を選定し、 複数の土砂採取候補地を提案した。

 自然が何千年何万年にもわたって築きあげてきたすばらしい景観を保全し、 生かしながらいかに人間の技術を融合させていくかということがこれからの環境デザインの最大のテーマだと思う。 環境データを重ね合わせ、 生態学的に評価する方法は、 パソコンで多様なシミュレーションができる現在、 特に広域的な土地利用規制や評価をする上での有効な手法の一つと考える。

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