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21世紀の新都市像―山水都市・景観占地主義・ポスト共生の模索

首都機能移転に係る景観検討調査より

アジア航測

野村恭子、 馬木知子

 21世紀、 自然と人のあり方の思想は共生からどう発展するのか、 その思想を表現する都市像はどのようなもので、 どのような計画論・デザイン論で実現するのか。 それぞれの関係をふまえつつ、 模索してみた。


「天人合一」の思想

 20世紀、 工業化による自然と人間との対峙の深刻化は、 開発と保護という二分法に根ざす論争を経て、 共生の思想にたどりついた。 来る21世紀には、 共生を超え、 両者が和解し相交わりつつ地球文明を織りなしてゆく現代思想としての「天人合一」を探求したい。


「占地」の発想への展開(図1)

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図1 山水都市」のための景観占地
 普遍世界を志向したローマのバロック都市、 それを下敷きにしつつ帝都の威光を表現したオースマンの宮殿都市、 産業大都市へのアンチテーゼとしてのハワードの田園都市、 アメリカのCity BeautifulからCity Efficient、 近代建築の摩天楼都市等々。 過去人類が構想したいずれの都市像も、 その時代の文明観を鮮明な景観として表現しえている。

 今、 自然と人間の対峙、 共生という枠組みを超えた、 「地球」という思想を都市像に翻案するとき、 大地の象徴としての山と、 生命の象徴としての水、 つまり山と水の奏でる山水の美しい景観がみえてくる。 山水は汎地球的な普遍性を志向しつつ、 一方で、 その場所限りの特殊な文化的場所性を示すという両義的な性格を持つ。 東アジアの都市文明において、 地相として尊ばれてきた空間文化の古典でもある。 これを再解釈し、 新たな都市にふさわしい山水の地の占地を試みたい。


「山水都市」の構想

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図2 山水都市の大局的構造
 ここに提案する山水都市の景観は、 2つの側面から構想される。 第一は、 大局的な構造としての山水構造への着目であり、 第二は、 人間活動が生成するディテールへの着目である。 時々刻々と変容する現象としての風景を、 確かな都市実感とするため、 美しく多様な景観ディテールのつくり込みが求められる。 山水という自然の安定した大局構造と、 人間活動が関わることで生み出される豊かなディテールとの緊張によって、 景観計画は構想されるであろう。


景観計画のプロセス

 「景観」は建設中の配慮事項や都市の化粧の仕方ではないが、 事業アセスメントや土木・建設事業で誤解されがちである。 そこで、 前述の思想に立脚した都市像を実現するための景観計画プロセスを提案したい。 まず場所を選び、 これを演出する戦略をもち、 具体のデザインを行う、 というプロセスである。

 ※これら一連の検討は平成11年度、 首都機能移転に係る「景観の魅力」検討会(座長中村良夫教授のもとに篠原修教授、 油井正昭教授、 堀繁教授)において候補地選定を目的に実施され、 著者らがまとめたものである。

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