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『環境共生型都市デザイン』を 鶴橋のまちづくりの目標理念とする試み
環境開発研究所
有光友興
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目標理念設定主旨
「大阪市まちづくり活動支援制度」にもとづく鶴橋のまちづくりのコンサルタントを担当して5年になる。
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図1まちづくり研究会の位置とまちの構成
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生野区側、 東成区側の研究会を合わせると約15.5ha、 約1840件の住民(権利者)が対象である(図1及び「まちづくり研究会の概要」参照)。
生野区側では支援制度最終年の5年目を迎え、 住民の市長宛「まちづくり構想」をまとめる段階に至っている。 多くの住民に支持される「構想」とするため下記主旨より「環境共生型都市デザイン」をまちづくりの目標理念とする提案を行っている。
(1) 鶴橋のまちづくりは、 次世代、 21世紀のまちづくりである。 環境に配慮したまち、 「環境共生」により持続可能なまちをつくる。
(2) 商・住混在の多くの住民(権利者)を対象とするまちづくりは合意形成が難しい。 誰もが共感し、 やりがいを感じる目標が必要である。
(3) 当地区には、 下町の婦人パワーのネットワークが健在である。 次世代のために高い理念を目標としたまちづくりに婦人パワーの発揮が期待される。
鶴橋のまちの現況
ここでの「鶴橋のまち」とは、 図1の生野区、 東成区の2つの研究会の範囲である。 JR環状線鶴橋駅の東側、 近鉄鶴橋駅を挟む南北の地区である。 このまちは、 特徴ある2つのまちに分けられる。
(1) 商(あきない)のまち
・食料品の強いまち……鮮魚中心の卸売市場が2つ
・韓国商品の強いまち…ファッション、 雑貨、 食材
・大衆娯楽混在のまち…パチンコ、 ゲームセンター他
(2) 住(すまい)のまち
非戦災地域で戦前長屋を含む木造住宅密集地区である。 戦災復興土地区画整理が行われなかったため、 殆どの道路が4M未満で私道が多く、 露路的な使われ方である。 人情味豊かな下町の良さが残っている。
まちづくり研究会の概要
・平成8(1996)年発足 区域:約13ha、 約1400件
・研究会メンバー52名、 幹部会6名、 小委員会21名
・再開発分科会(平成10年度発足 対象約600件)27名
・住民参加手法:広報ビデオを制作し、 小グループ集会(各町会の班単位)で意見集約又はアンケート調査実施 ビデオNo. 1「研究会2年間の記録 平成10年8月」No. 2「具体案に向けて 再開発分科会発足 平成12年1月」
・研究会主催イベント:盆踊り(夏)、 わくわく楽市(秋)
・研究会対象地区の特徴
商:鶴橋中央卸売市場(組合員約340-近鉄高架下を含む)、 鶴橋本通商店街、 高麗市場(韓国食材)
住:戦前長屋を含む木造住宅密集地区
・平成10(1998)年発足 区域:約2.5ha、 約440件
・研究会メンバー53名、 幹事会24名
・研究会構成団体と特徴
ア)鶴橋商店街振興組合―韓国ファッション、 雑貨、 食材、 イ)丸小市場・商店街振興組合―生鮮食品、 乾物の卸・小売市場、 ウ)小橋南商店会―千日前通り沿いのパチンコ等娯楽及び銀行等業務、 エ)第5町会―専用住宅を一部含む
環境共生型まちづくりの目標(想定ゴール)
(1) 徹底した省資源エリア
・自然エネルギーの活用―熱源の一部自給、 風力・太陽光発電、 天水(雨水)の利用―中水道
・地区内での資源リサイクル廃棄物地区外流出の極小化と処理熱の利用
・建築物は究極の省エネ仕様、 ビル排熱の極小化
(2) 地区内発生CO2、 NOxの極小化
・ハイブリットカー、 電気自動車にインセンティブ(駐車料金の割引等)を与える
・自転車路、 駐輪場の優先整備
・道路幅員は緊急自動車通行可能に止める
・建物内車路動線の極小化設計
・鉄道利用客の来街利便性重視
(3) 発生CO2吸収のため徹底した緑化
・オープンスペース(公園、 広場、 ポケットパーク等)の緑化
・建物屋上の緑化
・鉄道ホーム屋上の緑化
(4) バリアフリーの徹底
・道路、 通路、 建物内、 鉄道施設等
・高齢者対応福祉施設(介護を含む)の整備
・国籍のバリアフリー(インターナショナルなまち)サイン計画(日本語、 韓国語、 中国語、 英語他)
(5) 安全な食品の販売
・遺伝子組み替え食品は売らない
・無農薬、 無投薬の食品しか売らない
環境共生型鶴橋のまちづくり構想(図2参照)
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図2まちづくり構想(環境共生の拠点ネットワーク)
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(1)近鉄鶴橋駅のホーム上部にデッキをかけ、 鉄道利用客とまちとの利便性をはかる。 このデッキを環境共生のシンボルゾーンとする。
(2)シンボルゾーンは、 自然エネルギー活用諸設備の設置と共に徹底した緑化をはかり都心のオアシスとする。
(3)商(あきない)のまちは、 地上とシンボルゾーンレベルの両方からアクセスできる。 各建物には2つのレベルをつなぐアトリュウムを設ける。 それぞれのアトリュウムは国際色豊かなファッション、 飲食、 生鮮食品など特色ある空間となる。 アトリュウムは、 シンボルゾーンを軸とした回遊動線でつなぐ。
(4)住(すまい)のまちは、 「住み続けながらつくる、 住み続けられるまち」をテーマに、 共同建替、 協調建替を模索するまちづくりをすすめる。 ポイントは「環境共生」をキーワードに、 ブロック内住民によるワークショップによりオープンスペースをつくり出すことである。 このスペースを環境共生の拠点として整備する。 緑化は勿論、 自然エネルギー活用、 リサイクルなどのプラントを設置し、 ブロック内自給自足を目指す。
注)以上の構想は、 近鉄と協議したものでなく、 住民の賛同を得たものでもない。 あくまで私案段階である。
環境共生型まちづくりの効果
(1)消費者に支援される―営業(売上の向上)に直結
(2)生活者に支援される―保留床住宅入居希望者の増大、 住宅販売価額の向上―再開発事業採算性の向上
(3)国内・外の来街者増大―知名度増大―資産価値向上
(4)ランニングコスト(維持管理費)が低い
(5)イニシアルコストは高い―補助・助成制度の拡充要
[参考]市街地再開発事業等の環境共生に関る補助金
(1) 市街地再開発事業における共同施設整備費のうち
・太陽光・太陽熱発電施設の自家発電設備扱い
・ごみ処理施設の環境配慮のための機能高度化
・コ・ジェネ等の管路・熱交換器、 二重スラブ蓄熱槽
(2) 再開発緊急促進事業における環境対応促進型事業、 省エネ等環境負荷低減のための付加的経費―(1)以外の補助対象例:空調、 機械換気、 照明、 給湯、 EV設備に関る省エネ設備・中水道、 雨水利用装置・設備配管のための階高増、 等々。
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