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川のビオトープ

因幡電機製作所

斉藤治夫

 大阪―京都間、 陸上交通が発達する前は、 淀川を行き交う船が重要な交通手段でした。

 明治の初め頃、 大阪湾から京都までの航路を保つために、 本流に対してほぼ垂直に石などを積んだ「水制」がつくられました。 長い間に、 この水制のまわりに土砂がたまって、 入り組んだ池のようなものができました。 これがワンドです。

 本流沿いの水の力によって自然にできた「たまり」とは違います。

 

 ワンドは、 入江または、 川の淀みや、 渕のことをいう湾処、 入江になっている所のことを言う神奈川県や長崎県のある地方のワンド、 ほらあなの意味のわんど、 わんどう、 など数箇所の地方の言葉から使われた。

 本来ワンドは、 浅いところがあって、 なだらかにだんだん深くなっていくことが必要なのです。 浅いところは魚が産卵し、 稚魚の時代を過ごす場所でもあるのです。 またそういう所は魚だけでなく、 いろいろな水生生物がたくさんいて、 貝類もたくさん生息している。

 いわゆる汀線という、 水際線、 そこからじょじょに深くなっていくのはよいが、 急に深くなるということは、 生物の繁殖再生産に非常に影響をもたらす。

 しかし、 現在のワンドは、 新大堰によって水位が高くなったりビニール袋のゴミ類をホッタラカシテ帰り、 それが覆い被さり貝が窒息してたくさん死んでいる。

 

 自然にできたワンドというのは、 砂地のところ、 泥のところ、 深いところ、 浅いところ、 沈水植物やヨシなどの水草帯があって、 こうした環境をワンドの多様性というのですが、 そうした環境がそろったところでは、 いろいろな生物を育むことができる。

 しかし、 現在は、 堰ができてから水が淀んで深くなり、 沈水池のようになりました。 それと底に沈んだゴミで生物が棲む環境ではなくなっています。

 

 わたしの住む牧野では、 昔からよく鰻が捕れました。 夜にワンドへ仕掛けをして、 翌朝竹の筒を確かめました。 少し離れた用水路には、 いつも雷魚がいましたがとても凶暴で、 ザリガニ釣りのえさをよく食べられた。 本流の少し流れの緩いところでは、 魚つりをしたり、 また泳いだりしました。 川に流されて死にそうなったこともあります。

 今の淀川河川敷のようにぜんぜん綺麗ではなく、 いっぱい危ないところがありましたが、 それが、 また楽しいのです。 自分たちだけの隠れ家があり、 夢がたくさんあったように感じます。 環境と共生することは、 どこかやっぱりワクワクするところがないと面白くない、 川をもっと身近に感じられるように、 色々仕掛けるのも面白いと思う。

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