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環境共生のまちとくらしを育む、 農業用水路の新しい使い方

「水生植物」を活かした長瀬川の水辺環境づくりプロジェクト(大阪府八尾市)

地域計画建築研究所

原田弘之、 堀口浩司

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ヤシガラマットに切り込みを入れて、 約60名の市民により、 約20種類の水生植物を植栽(平成12年6月10日)
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水生植物の観察会では、 簡単な水質検査も実施。 透視度計で本流と水生植物植栽帯の水質を比べる(平成12年7月8日)
 「オタマジャクシやアメンボ、 タニシ、 ナマズまでいる」「ジュズダマはよく成長したけど、 ミニトマトは流されたみたい」「水生植物が植わっている水路の方が透視度が高い」これらは水生植物の観察会時の参加者からの声である。 市民、 水路管理者(土地改良区)、 行政などが協働で、 「水生植物」を都市内の農業用水路で育てる取り組みに関わった。

 場所は八尾市の長瀬川である。 1704年の大和川の付替工事によって生まれた農業用水路で、 水質全国ワースト1を競う大和川から取水しており、 周辺市街地の排水路にもなっている。 したがって、 水質改善、 水路の美化などが継続的な課題となっている。

 水路の断面形状はコンクリート三面張りであるが、 これまで治水面、 親水・景観面のハード整備が実施されるとともに、 エアレーションや木炭などによる水質浄化も試みられてきた。 一方、 行政主導による府民フォーラムも行われ、 その中では、 市民が広く参加する具体的な水辺環境づくりの提案も出されていた。

 そこで「水生植物」に注目した取り組みを始めることになった。 水生植物とは水中の養分などを吸収して、 水の中でも生きられる植物で、 一般に、 吸収、 吸着、 沈降などによる水質浄化、 花や緑などによる景観形成、 生き物の生息環境づくりの機能がある。 さらに例えば、 ヨシはスダレ、 パピルスは紙、 クレソンは食用など収穫物を加工品の原料にすることができる。 こうした水生植物の多面的な特性を活かし、 子どもを含む公募市民(約40名)、 地域住民、 土地改良区、 府、 市、 専門家等により、 平成12年2月より水生植物を育てる試みを行っており、 現在進行中である。

 長瀬川の歴史や問題、 水生植物などの学習を経て、 小グループごとに植栽計画づくりを行い、 6月にパピルス、 ケナフ、 トクサ、 アヤメ、 キショウブ、 クワイ、 セリ、 サトイモ、 ワサビ、 ミントなど約20種類の水生植物を植えた。 水路内に小段をつくり、 ヤシガラマットを敷いた部分(80m×0.6m)が植栽場所である。

 7月、 8月には観察会を開き、 グループごとに成長度合いの記録、 簡単な水質調査や生き物調査を行った。 10月に刈り取り、 11月に紙漉などを体験する収穫祭の予定である。 なお、 周辺小学校の授業と連携するなど、 人の輪も広がりつつある。

 水質改善の効果のみを見ると確かに微々たるものであるが、 生き物の生息、 花や緑による景観形成、 さらには収穫物を使い、 加工品をつくる楽しさなど多様な効果がある。 そして何より、 参加者がこうした効果や可能性を自ら発見する面白さがある。 活動の継続性や拡大のためにはさまざまな課題があるが、 少なくともこうした効果の多様性にもとづく、 参加と発見、 面白さのある取り組みが、 環境共生のまちとくらしを育んでいく気がしている。

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