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「エコトイレ」をつくる

その場で完結するトイレの実験

SESTA DESIGN

清水泰博

 このトイレの計画は、 京都府が進めている京都府北部・日本海に面した丹後リゾート公園計画地での「地球デザインスクール」の一貫として行われた。


定着していくエコロジーとは

 発端は、 電気も水もない屋外で様々なワークショップを行う折に必要になるトイレを作ることからきている。 大鋸屑(おがくず)を使った方式もあるのだが、 エコロジカルであること自体が「目的」になってしまって、 臭くても構わないというのでは使っていく上で疑問が残る。 実際に持続でき定着していく為には、 無理をせずに快適に使えてエコロジカルなものであること。 あくまでエコロジーを「手段」と捉えることではないかと思っていた。

 現在見受けられる様々なエコロジーへの試みも、 エコロジー自体が目的になってしまっているのではと思えるものもあり、 また生態系のことを考えるにも、 まず自分たち自身の後始末をするところから考えるべきではないかと日頃から思っていたので、 小さなトイレで大きな地球のことを考えることに興味を持った。 そして土壌浄化による仕組みを提案された森脇久嘉氏の参加によってその方向性がより明確になった。 スプーン一杯の土壌中に一億もの微生物がいることなどを聞くと、 正にスプーン一杯の中の地球を見ているようで、 様々な思いが膨らむ。 土壌の微生物による浄化は正にゼロエミッションの考え方であり、 また何も高価な設備を使わなくとも、 スティールの空き缶で土壌浄化は出来るのだということにも興味をもった。


「エコトイレ」の仕組み

画像z13-1
エコトイレ・概略構成図
画像z13-2
エコトイレ外観
 トイレの構成は、 大きく広げた屋根に降った雨水を屋根勾配を利用して1ヶ所に集めコンクリートヒューム管のタンクに貯留し、 それを普通の水洗トイレと同じように利用し、 汚水は浄化槽で一次浄化の後、 空き缶トレンチから毛細管現象を起こす「土」による土壌浄化を経て川へ放流されるというものである。 土壌浄化に使われるスペースは植物の生育に適した環境になり、 畑としてもまた花壇としても有効になる。

 トイレブース自体は自然の中にあることの快適さが実感出来るようにというコンセプトで作られている。 雨水を受ける屋根は半透明のシートで出来ている為、 外にいるのと同じような雰囲気が得られ、 屋根と壁の隙間からは周りの風景が垣間見える。 壁面も一枚の布で、 螺旋状に進入することによって出来るだけ扉のイメージをなくそうとしている。 得てして仮設トイレが暗くて狭いイメージになるのに対し、 ここではその逆のイメージを追求したものである。


都市空間に向けて

 全てのトイレがこのようになる必要はないだろうが、 災害時には避難所にもなる公園のトイレぐらいはそこだけで完結している必要があるのではないか。 それは電気も水もない状況が起こる非常時を考えれば尚更である。 水洗便所の普及は文明国のバロメーターの一つとされているが「文明」が一旦破壊されると原始的な生活の経験をもたない都会人は予想以上に脆い。 都市で貴重な自然の空間はより自然に近い仕組みで作られている方がいいだろう。 公園の排水までが下水管を流れる必要はない。

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