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鹿島神宮駅前参道計画

竣工20年目を迎えて

GK設計

西澤 健

要旨 人工的計画から自然へ

 この計画・設計は1978年に始まった。

 人工と自然の融合、 車道と歩道の共存、 車椅子に優しい坂道などを第一の提案事項とした。

 しかし現在記しておきたいのは、 人工的とでもいうべき幾何学構成と、 自然の有機的表現をあわせる試みである。 それが20年を経て、 検証されたと言える。


緑に囲まれた道

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模型写真 左が南・神宮の森、 右が駅前広場。 その間が計画対象道路 左模型写真は道路全体図。 模型写真は道路部分
 

 鹿島神宮駅広場から、 南の神宮旧表参道までを登る約370m幅員14mの道路が対象である。 駅に立つと左側には御手洗という泉を持つ神宮の森が、 右側及び背後には自然林が残る。 そのような環境の中での発想は、 自然の中に収まる街の姿につながった。 要するに「緑のなかの道」である。


1mグリッドからの出発

 道路は安全で、 人に優しく、 かつ美しくなければならない。 また施工時の効率を考える必要もある。

 そこでまず寸法体系に1mグリッドを採用した。 路面はもちろんのこと、 それを植栽升や水路にも適応させることにした。


変化を与える樹木

 街路樹には、 中木と低木を植えることにした。 その配置は一般的に見られる等差とはせず、 視覚的にリズムを感じさせる配置とする。 また植栽升にも変化をつけた。 中木低木が共振しあい、 自然のままのような有機的な柔らかい空間を作り出している。


車道、 歩道、 広場の一体化

 車道と歩道、 途中にある広場を一体化することにした。 そこで舗装は歩車道、 広場共通の素材を使う。 現在では警察協議などで、 安全確保のためには歩車道を共通にするのは難しい。 しかし、 この道では特に事故等は起こっていないという。


誰もが楽しめる空間

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階段のある歩道。 反対側の歩道はスロープになっている
 この道の両側につながる歩道は坂になっているが、 階段と交互に設けられたスロープをS字状に設計した。 健常者も車椅子の人もそれぞれが楽しみながら利用出来る坂道になった。 今でいうユニバーサルデザインである。


単純な実験から得た大きな結果

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3種類の舗装材を貼り、 実験している風景
 計画や設計を実見するために、 色々な実験を行った。

 例えば、 当時の素材には信頼性がなく、 坂道でも滑らない舗装材を選ぶことに気を配った。 その為に坂と同程度の角度を持ったモデルを作成し、 多くの人に実際に歩いてもらい、 素材を決定した。

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現状写真
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せせらぎのちいさな滝
 もう一つは「せせらぎ」を作るにあたっての実験である。 水量は少なくとも、 視覚的に、 また聴覚的にも変化に富んだ表現を望んでいた。 これも実際にモデルをつくり実験を行った。

 いくつかの実験から得た結果から、 予想以上の良い効果を得ることが出来た。


実現しなかった誘導彫刻の試み

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鹿の彫刻のスケールモデル
 施工に入る段階で、 ある大手企業から2000万円の寄付が入る話が舞い込んだ。 我々は鹿島神宮の由来にも登場する「鹿」を彫刻に表し、 誘導案内を兼ねて道路全体に配置することを提案した。

 有名な作家に依頼となれば、 二頭の組み合わせ程度で終わってしまう。 それでは面白くない。 そこで、 製作を芸大の学生さんにお願いすれば、 1頭100万円で20頭出来上がると目算した。 次に注意したのは、 素材である。 朽ちないこと、 また再生が可能なこと、 更に鹿のイメージを想起させる色合いを持っていることから、 耐候性鋼板を採用した。 鋼板を紙細工的に加工し、 それを彫刻とすれば、 面白いものが出来るだろうと思った。 これもまた1/5のモデルまで作ってみたが、 結果として、 実現出来なかったのは残念に思っている。


人も風景も、 自然に馴染む

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歩道から広場への導入空間。 ここはモデュールを尊重しながら、 階段を変形させている
 計画時点では、 人工的造形表現が堅すぎるという意見もあった。 しかし、 今や水が流れる中を樹木や草花が成長した様子は、 柔らかい風景に変貌している。

 それは当初予測したとおりであった。

 管理については、 中木は年に1回、 低木や路面は年に2回程シルバーセンターの人たちが楽しみながら行っているという。 20年も経つと、 人の行動も、 風景もごく自然に馴染んでいくのである。 空間とはそういうものでありたい。

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