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環境にやさしい
「公共輸送+歩行システム」への挑戦

立川駅北口買い物バス乗換え実験・多摩センター高齢者歩行支援実験から

都市設計工房

成瀬惠宏、 小澤洋介

1 循環型社会づくりへの取り組み

 最近、 既存の交通施設を活用しながら総合的に交通需要に対策していこうという「交通需要マネジメント(TDM:トランスポーテーション・デマンド・マネジメント)」という手法が話題になることが多くなっている。

 東京都ではこのTDMを「循環型社会づくり」のための重要課題の一つとして、 平成9年度から本格的に検討が進められ、 平成11年度には四つの交通主体別に社会実験をおこなっている。


2 立川駅北口買物バス乗換え(P & BR)社会実験

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立川駅北口買物バス乗換え実験・ルート
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立川駅北口買物バス乗換え実験パンフレット
 我々は、 この四つの交通主体の一つである「休日の買物・レジャー目的車交通」を対象として、 立川駅北口でのパーク&バスライド(P & BR)実験を担当した。

 休日渋滞の顕著な立川駅北口の中心街から約3km離れた縁辺部に「乗り継ぎ駐車場」を設置して、 約10分間隔で送迎バス(立川バスに委託)を運行した。 今回は社会実験として実施したため、 バス・駐車場ともに無料のシステムを採ったが、 予想以上に利用者が多く、 アンケートの結果からは「続けて欲しい・お金を払っても良い」というような高い評価も得られている。

 利用者の多くは2度・3度利用しているいわゆる“リピーター”であったことはこの実験の中で大きな成果である言え、 そのような利用者の意識には自己利益だけでない社会的役割を果たしているという一種の誇りのようなものも感じる。


3 多摩センター高齢者歩行支援実験

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電動乗用カート走行実験/多摩センター
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電動乗用カート走行実験ロゴ
 平成11年に多摩センターで実施した「電動乗合カート走行実験/多摩センターあしすと号」は高齢者歩行支援の体勢は取っているが、 P & BRの一種の発展型であり、 同時にトランジットモールへの挑戦とも言える。 特に、 車両の種類・デザインに様々な工夫を施しており、 そこでは、 多摩センターという歩行者空間の充実した街の特徴を考えて、 「車両と歩行者の共存」という新たな街のあり方をも見据えている。


4 地球規模の環境問題への使命

 武蔵野の「ムーバス」や金沢の「フラットバス」をはじめ、 街の中でバスという公共交通機関が主役となった試みが全国で見られるようになってきた。 しかし、 中には思うように利用率が上がらず、 ついには廃止されてしまったものもある。

 このような試行錯誤の中で、 今後は、 これらから一歩前進したトランジットモールへの本格的な取り組みに期待したいところである。 既に欧米諸国では数々の実践例が挙げられるが、 我が国での本格的な実施のためには、 先ずは、 現状の都市基盤を抜本的に変えることなくできる方法を考えることが必要であろう。

 公共交通の活性化・商店街の活性化とともに、 環境への配慮という地球規模の使命を持つものとして「公共輸送+歩行システム」、 その発展型となるトランジットモールの存在意義を再確認すべき時代にきているのではなかろうか。

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