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町家型集合住宅の提案

歴史的街区がもつ環境共生のしくみを継承する(京都市)

大阪芸術大学

田端 修

大揺れのマチナカ街区環境

 京都の都心にマンションが割込んできている。 120m×120mもしくは120m×60mのマチナカ街区では、 奥行の深い宅地を使いこなした完成度の高い伝統町家が居並び、 整った通り景観を形成していたが、 その中の大規模敷地を狙って高層マンションが、 また小敷地には中層マンションが侵入してきたのだから、 マチナカは大揺れである。


環境共生の装置:「街区中庭空間」

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マチナカ街区における建ぺい/非建ぺい地の構成
 手作業の連携と統合的なデザイン・販売に至るネットワークの中の伝統産業、 居住を支える多様な生活サービス網が併存するマチナカの居職機能空間は、 高密度・高建ぺいだが、 意外ともいえる程に居心地よい都市環境をつくってきた。

 その基本装置が、 ツボニワなどの非建ぺい空間とハナレなどの平家の建物が集まる「街区中庭空間」である。 庭の緑、 日照・採光の空間となるとともに、 まち通りからトオリニワを介して自然の風を通す役割も加わって、 マチナカ街区は環境と共生する仕組みを継承しつづけてきたのである。


町家型集合住宅の提案

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町家型集合住宅による都心地域の再生
 このような歴史的な環境共生のしくみは、 住み手間の相互了解のなかで蓄積されてきたのであるが、 近年の中高層マンションはこれらに顧慮する所がない。 周囲の敷地や部屋内を覗き込み、 まわりへの日照・通風を遮断してもマンション建設は認可される。 近代の都市・建築法制とはその程度のものである。 完成後の近隣関係がうまく結び合えないことは容易に察せられる。

 諸問題を調整しつつ、 在来からの環境秩序になじむ中高層住宅の計画・設計の方法論はないものか。 そんな問題意識から京都らしい集合住宅づくりをめざして研究を重ね、 『町家型集合住宅の提案』*を行った。 おのずから環境共生のしくみが組み込まれたその提案の、 実現・普及をつうじて近代諸制度を修正・改編していくことが最終的な環境共生のデザインになろう。