都市に住む
外の気配とつながる空地のしくみ(京都)
大阪大学
小浦久子
緩やかに連続する内側の空地 |
打ち水された隣地に続くロジ奥の木戸 |
長い時間をかけて形成されてきた町家の暮らしにおいては、 街区の内側に空地(庭)を持つ。 この空地は、 それぞれの家の採光と通風を確保する役割を担うとともに、 それらが穏やかに連続することで、 街区の環境構造を決めてきた。
奥行きの深い敷地は、 分割され、 裏に長屋が建てられ、 ますます高密化する。 しかし、 内側に空地のある街区の基本構造が維持されていると、 ロジが空地となり、 毎朝、 打ち水され、 緑があふれるとともに、 ロジ奥の木戸で隣地の空地とつながり、 高密度居住の安全性も確保されている。
内側の空地によって光や風が生活に取り込まれ、 庭の緑や生き物が季節の移ろいを伝えてくれる。 住まいの内と外は連続し、 外の気配が内に入ってくる。 これに対し、 外側の空地は、 みちと連続することで舗装され、 街区から土がなくなっていくと同時に、 まちの開放性が高まっても、 住まいを閉塞させる方向に働く。
このとき外の気配が共生の手がかりになる。 共生とは「共」に生きることである。 気配を感じることのできるしなやかな感性によって、 「共」を知る。 多様な人が集まり住む都市で、 個々の技術やデザインが「環境共生だ」といっても、 「共に」を実現できなくては何の意味があるのだろうか。 京のまちなかの空地のしくみは、 それを教えてくれる。