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都市に住む

外の気配とつながる空地のしくみ(京都)

大阪大学

小浦久子

高密度居住の「うち」と「そと」

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緩やかに連続する内側の空地
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打ち水された隣地に続くロジ奥の木戸
 京都の都心を歩く。 随分と高層マンションが建ってきている。 まち通りは、 だいたい5〜6mなので、 道路斜線をクリアして高層化しようとすると、 必然的にセットバックし、 空地が道路際にできる。 こうした建物は、 町並みを変えるだけでなく、 街区環境の質を変化させる。

 長い時間をかけて形成されてきた町家の暮らしにおいては、 街区の内側に空地(庭)を持つ。 この空地は、 それぞれの家の採光と通風を確保する役割を担うとともに、 それらが穏やかに連続することで、 街区の環境構造を決めてきた。

 奥行きの深い敷地は、 分割され、 裏に長屋が建てられ、 ますます高密化する。 しかし、 内側に空地のある街区の基本構造が維持されていると、 ロジが空地となり、 毎朝、 打ち水され、 緑があふれるとともに、 ロジ奥の木戸で隣地の空地とつながり、 高密度居住の安全性も確保されている。

 内側の空地によって光や風が生活に取り込まれ、 庭の緑や生き物が季節の移ろいを伝えてくれる。 住まいの内と外は連続し、 外の気配が内に入ってくる。 これに対し、 外側の空地は、 みちと連続することで舗装され、 街区から土がなくなっていくと同時に、 まちの開放性が高まっても、 住まいを閉塞させる方向に働く。


「共」に生きる共生

 今、 京都のまちなかで、 街区環境の「かた」が崩れつつある。 空地のしくみには、 まちと敷地、 隣地との関係、 住まいの内と外など、 多様な関係性が反映される。 新しい街区環境の「かた」を創り出すのか、 それとも「かた」を維持しつつ、 新しい都市居住のかたち(建物の作り方)を創造するのかが問われている。

 このとき外の気配が共生の手がかりになる。 共生とは「共」に生きることである。 気配を感じることのできるしなやかな感性によって、 「共」を知る。 多様な人が集まり住む都市で、 個々の技術やデザインが「環境共生だ」といっても、 「共に」を実現できなくては何の意味があるのだろうか。 京のまちなかの空地のしくみは、 それを教えてくれる。

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