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穏やかな水際の暮し−Thailand

タイ都市地方計画局

西斗志夫

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水際の住宅風景―電柱も水道管も運河の中(上) 自家用舟で買物に出かける母親と見送る子供(中) 昼時のクイッテイアオ(麺類)売りの舟と客待ちのタクシー舟(下)
 

喧騒の都市と穏やかな水際の暮らし

 交通渋滞の激しさで知られるバンコク。 しかし、 この喧騒のまちバンコクの運河沿いのそこここに、 昔がらの水際の暮しを見ることができる。 そこはしばしば大通りのすぐ裏側にありながら、 砂塵渦巻く表通りとは空間的にも異質で、 かつ時の流れそのものまでもゆっくりと流れているとしか思えないような、 異次元の暮しが営まれている。

 水際の住宅は水面上に建つタイプ、 堤の位置に建つタイプ、 さらに船上タイプがある。 我々が訪れた水面上住宅は、 もともと岸辺(陸上)にあったものが、 河川を往来する舟による波の侵食で次第に岸が洗われ、 水面上の住宅になっていったという。 このタイプの住宅では、 しばしば板敷きの居間に空けられた穴がそのままトイレであったりする。 人間の汚物はたちまち魚のえさとなり、 その魚を人間が食べるという、 日本人には少々ショッキングなほど、 極端に短い食物連鎖がここでの日常である。


水際の生活風景

 しかし、 私がここでぜひ紹介したいのは、 循環系からの視点ではなく、 この地域で営まれている穏やかな生活風景の方である。

 自家用の舟で買物に出かける母親、 アイスクリーム売りの舟を呼び止める子供達、 昼時、 一斉に漕ぎ出して来るクイッティアオ(麺類)の屋台舟、 そしてそれぞれが、 拍子木や簡素な楽器、 テープの音楽そして売り声等で売り歩く風景は、 のどかなだけでなく、 効率重視の都市生活の中で我々が失ったものが何なのかを教えてくれる。

 川面をわたる風は心地良くまさに熱帯の国にふさわしい住まい方、 暮しの作法であろう。

 これら水際の住宅も都市化や人々の価値観の変化により水面上から陸上へと次第にその姿を変えつつある。 しかし、 水との関わり合いの中で育まれてきたこの国の歴史からも、 その穏やかな生活風景が今後とも生き永らえていくことを心から願いたい。

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