実際に今回の提案では、 コートヤードの床面にグレーチングを用いて地面より200mm持ち上げることで、 光や風の遮断、 草花を踏み潰すといった土壌への影響を低減させている。 また、 鉄や木より寿命が長く、 リサイクル可能なガラスという素材を最大限に活用して計画している。
豊で優れた自然環境が残されている。 これ以上その福島の自然を破壊するのではなく、 都市の中に取り残された自然や森林の中に積極的に入り込んで、 生態系の中で生活するというのは既成概念を打ち破る環境共生住宅である。 海からの涼風がある太平洋側、 蒸し暑い盆地、 豪雪地帯である山間部と県内の気候にかなりの違いはあるものの自然におおわれることで、 それぞれの環境が人間にとってより暮らしやすいものへと変換されることが期待できる。 ガラスは断熱効果が高く、 結露を防止する複層中空ガラスを用いている。 可住面積が広く、 ゆとりのある暮らしができる福島においてこの住居での生活は可能であると考えられる。
MIKI-HOUSE
うつくしま未来博2001
「エコファミリィーハウス」応募案法政大学大学院
小野剛史、 菊池慎也、 多田匡孝、 山本浩孝
設計コンセプト
現在、 リサイクル素材を使った家、 環境浄化システムを備えた家、 自然エネルギーを活用した家等、 住宅における様々な試みがなされている。 これらのエコ住宅は汚染された環境の悪化を防いでおり、 建築でできる重要なエコではあるが強引に環境を回復しようとする面も持ち合わせている。 それが宅地造成である。 森林を伐採し更地にしてから住宅を建てるという概念は、 そこに存在していた生態系を破壊し、 新たに人間主体の生態系を作りだすことを意味している。 同時に、 慣れ親しんだ風景を変えてしまうといった悲しさをも生み出しているのである。 そこで私たちはできるだけ自然を壊さず、 風景を変えない住まい方を提案する。 つまり、 森の中で住宅も自然の一部となって共存していくことで、 人間主体ではない新たな生態系が生まれてくる。 エコファミリーハウスで自然の恩恵を受けながら生活することで、 人間の意識は改革され、 新しい生態系は循環していくことだろう。
1階平面図/2階平面図
模型
模型
コミュニケーションに対する提案は何か?
人が森の中に入り込み、 自然と共存していくことで、 そこは宅地造成によってできた人間主体の生態系での暮らし方とは明らかに違い、 自然に厳しく左右された暮らし方になるに違いない。 しかし、 人間には積極的に自然と接し、 生態系を理解し、 環境と共生する力があるはずだ。 この家では自然や家族の存在がどこにいても常に意識され、 それが家族のコミュニケーションを発生させる大きなきっかけになることであろう。 隙間から差し込んでくる木漏れ日や木々の囀りで風を感じられるというのも、 コミュニケーションが薄れつつある都市にはない貴重な豊かさである。 人と自然、 人と人とのコミュニケーションやコラボレーションなしでは、 人が自然の中に入り込んで自然を壊さないように暮らすことや、 そこに新しくできる生態系の循環はあり得ないだろう。
(人と自然、 人と人)
新しいライフスタイルの提案はなにか?
この家ではどの場所にいても自然との一体感がある。 視界に入る非常に広い範囲を自分のテリトリーとして認識することができる。 また、 個々の空間が小さいボリュームでつくられていて、 ガラスの壁で仕切られているために内と外の境界は曖昧になる。 そのため人間の生活は自然に外部へと溢れ出すことが期待できる。 コートヤードが時には居間、 時にはダイニングと様々な機能を果たすことで、 森の中に暮らすという感覚がいっそう強まる。 自然をとおして意識する家族の姿や自然からの刺激を受ける様々な感覚は新しいライフスタイルを誘発するであろう。 機能の限定された空間がコラージュされただけの様になってしまった現代の住宅では考えられない、 新しいライフスタイルが。
環境に対する配慮は?
現在の環境共生住宅は自然エネルギーなどを数値化し、 光熱費の低減などを用いて、 地球にやさしいと主張していが、 それは人間主体の生態系の中にたった視点であり、 その家で暮らす家族にとって狭義なエコロジーである。 しかし、 必要とされているのはグローバルな視点を持った地球環境を回復していこうとするものであり、 これ以上、 自然を破壊せずにその中に入り込んで暮らそうという考え方は、 世界中で通用するエコロジーである。 この人間の意識改革は初歩的であるが環境に対する最大の配慮である。
構造計画の考え方
基本的には木造の在来工法であるが、 森の中に溶け込んでしまったような透明な建築を演出するために、 できるだけ柱や梁などの構造材を細く、 薄くすし、 ガラスを多く使用している。 そのために構造的に問題が生じてくるのだが、 それをサポートするために、 ガラス部分は強化ガラスを用いている。 1700〜2000kg/m2の圧縮強度を持ち、 木造の集成材と同じ程度の引っ張りと圧縮に耐える強化ガラスを複層し、 壁体として用いることで120×120mmの柱の受ける圧縮力を拡散させている。 また、 柱や梁等にはカラマツの集成材を使用している。 福島県で採れ、 風土に根ざした建材をと考え、 カラマツを選んだが、 カラマツはヤニがあり、 ねじれたり割れたりするなどの理由から建材としては最低とされているが、 それを集成材にすることによって、 ムク材の1.5倍の強度を持ち、 優れた耐震性と耐久性を持った建材として使用している。
福島県の気候風土に対する配慮は?
福島では、 四季折々、 様々な表情を見せてくれる。
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