NEXT 21の居住実験
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環境共生住宅として

テーマの変遷
第1フェーズから第2フェーズへ

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図1 NEXT21第1フェーズのコンセプト図
改行マーク図1がNEXT 21の第1フェーズの時のパンフレットに記載されていたコンセプトです。 当時から環境問題は大きな問題と捉えられており、 NEXT 21では環境の保全がテーマになっていました。 当時は環境保全や省エネルギーとゆとりある生活が相反するものとして捉えられており、 図1はそれをどうバランスをとっていくかという考え方を表しています。

改行マーク逆に言うと、 バブル経済の余韻をまだまだ引きずっている時期で、 NEXT 21も空間的にも贅沢で、 天井が高く、 つくりこんだ住宅が多いわけです。 環境の保全をテーマとしながら、 エネルギー多消費的なライフスタイルに疑いを持つことはあまりなく、 快適な生活は行うけれども、 環境の保全との相反を技術でどう乗り越えるかがテーマでありました。

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図2 第2フェーズコンセプト図
改行マーク今回第2フェーズを迎えて、 この1年間は改修工事でバタバタしておりましたが、 前回のテーマとの違いは、 ライフスタイルそのものも変えていかねばならないという発想の転換が出てきたことです。 ガス会社だからといって「どんどんガスを使って下さい」と言っていたのでは、 会社そのものがもう生き残れないということもありますし、 社会の一員としてやはり省エネルギーの生活を提案していきたいということで、 図2のように「人の暮らしへの配慮」に「地球環境への配慮」を重ね合わせたテーマを掲げています。

改行マークここには人の暮らしが地球環境と調和していくこと、 人の暮らしの快適性を求めることが、 地球環境への配慮にも繋がるような環境と調和した質の高い暮らしを求めていきましょうという思いが込められています。 どこまで出来たかは、 今日いろいろご意見をいただければと思っております。


自然との共生を考える
生態系の復元を目指して

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図3 竣工当時
改行マーク図3はNEXT 21の竣工当時の写真です。 環境との共生を考えるにあたって、 一番最初に出てくるのはやはり自然との共生です。 NEXT 21の1500m2の敷地に1000m2くらいの緑地を設けています。 これだけの緑地は1階だけでは確保できませんので、 屋上や2階から6階なども含めて緑地を設けています。

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図4 竣工から3年後
改行マーク図4は竣工から3年たった時のNEXT 21です。 2階以上は全部60cmくらいの深さで人工土壌が入っているのですが、 竣工した時には小さかった木が、 特に問題もなく大きく育っています。

改行マーク緑地の設計には野鳥の会の協力を得ております。 野鳥はグリーンスポットを見つけて降りてくるので、 屋上には結構目立つ木を置いています。 屋上に野鳥がやってきても、 すぐには下の緑地には降りてきてくれません。 順々にとまりながら降りてこられるようにすると、 下まで降りてくれるそうで、 そのために3階や4階、 5階などの中間階にも緑地を設けています。

改行マークその甲斐あって、 下の緑地に来て巣を作ってくれるまでになったのですが、 野鳥が屋上に来るようになったタイミングとの間に、 数ヶ月くらいタイムラグがあったように記憶しています。 最終的には毎年巣を作って、 ひなが巣立ちを行うということもありました。

改行マークこの緑地で考えたことは、 都市部での自然環境の回復だったのですが、 出来れば生態系もある程度復元したいという希望がありました。 そこで、 植えた木が枯れたらまた木を植えるといった繰り返しを行うとか、 単に野鳥が来るということだけではなく、 巣立ちが行われて次の世代の野鳥が育っていくとか、 風や鳥で運ばれてきた種が発芽するといった、 世代交代がきちんと行われるような空間を目指しました。

改行マークそういう意味では、 22種類の野鳥が飛んできて、 巣立ちもあり、 21種類の植えていない木が生えてくるなど、 ある程度成功したのではないかと感じています。

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図5 ゴールデンウィークの頃 図6 花が咲いている 図7 屋上の風景
 

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図8 6階の藤棚の所に出来た雉鳩の巣 図9 巣立ったばかりのひな
図10 アオサギ
図11 オオルリ
 

改行マーク今は冬枯れの時期でやや寂しい感じがしますが、 ゴールデンウィークの頃になると青々として、 NEXT 21は図5のような感じになります。


温度環境を考える

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図12 熱画像撮影構図
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図13 熱画像図(1月26日15:26、 気温34.2℃)
改行マークこうした緑地が温度環境にどういう影響をもたらしたのか調べてみました。 図12は可視光線でNEXT 21を撮ったものです。 これと同じ構図で熱画像による撮影を行ったのが図13です。

改行マークこのなかで一番高い温度は、 白い色で出ている部分で、 その次が赤い色、 そして緑色、 青色で、 黒い所が一番温度の低い部分です。 NEXT 21の外壁はステンレスパネルなので高い温度になっていますし、 周辺の瓦屋根も高い温度になっていますが、 緑地の部分は相当低い温度に保たれています。 外壁も緑地が覆っている部分については、 低い温度になっています。

改行マークこれが夜中になりますと、 NEXT 21のスケルトン(躯体)部分を含めコンクリートのビルは一晩中赤いままで温度が下がりません。 それに対してステンレスパネルや瓦といった熱容量の小さいものは、 夜中に気温が下がってくると同時に冷えてくれます。 ですからコンクリートの蓄熱が、 夏場は非常に大きいことがよく分かる写真です。


緑地と自治管理ということ

改行マークこういった緑地ですが、 必ずしも良いことばかりではありませんでした。 入居者にしてみれば「夢のような住宅にあなたも住んでみませんか」という社内誌を見て応募したら、 緑地があるわけで、 野鳥が好きな人ばかりではありませんし、 虫は嫌いな人が多いのです。 藪蚊の大きいのが出てきたり、 ヤスデが大量発生したりして、 虫に関しては本当にいろんな事がありました。

改行マークこういう緑地は、 単につくって住んでもらうと100%クレームがあがってくるのではないかと実感しています。 落ち葉一つとっても、 入居者が落ち葉の管理責任を問うような姿勢だと維持できないのではないかと思います。 落ち葉が増えても、 虫が増えても、 他の誰でもない自分が住んでいる住環境における問題として、 自分が解決すべき問題だと思ってもらわないと、 維持は難しいと感じています。

改行マーク実は今回第2フェーズの居住実験の募集をし、 やはり社員がこの4月から住むのですが、 入居条件に緑地の管理を挙げました。 大阪ガスは緑地に関して管理費用は一切出さない、 費用負担も含めて入居者が管理を行うという条件で募集をしています。 その時にどういうふうな入居者の行動があるのか、 予想がつかないのですが、 一応今回の入居者はそれを納得して、 入居前プログラムでもどういうふうにするかの話し合いを進めながら、 入居に臨んでいただくことになっています。

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