長寿命住宅として
スケルトン・インフィル住宅という形態
耐久性と可変性と
図14 スケルトン・インフィル住宅としてのNEXT21のコンセプト |
つまり建物自体はまだまだ持つのだけれど、 使いにくいから潰してしまおうというようなことが発生しないよう、 NEXT 21は可変性に重きを置いた設計になっています。 そうした事が住宅の良質なストックや街の骨格として社会的な財産をつくる事につながるだろうし、 60年に1回潰される建物が100年持つようになれば、 廃棄物の削減にも繋がるだろうと考えています。
図15 スケルトン・インフィルの模式図(躯体住戸分離方式) |
建物は、 躯体にも私的な住戸部分にも入らないものが非常に多いのです。 例えば共用部分のエレベーターも、 100年間の耐久性を持つようなスケルトンではないけれども、 かといって入居者が自由に変えられる私的な部分ではありません。 そういうエレベーターであるとか、 立体街路(共用廊下をここでは立体街路と呼んでいるのですが)の手摺り部分であるとか、 外壁の部分などを、 NEXT 21ではひとまとめにしてクラディングと呼んでいます。
図16 NEXT21の外観 |
外壁には、 A種外壁・B種外壁・C種外壁という三種類の外壁があり、 コの字型の外観をもっています。
エコロジカルガーデン(1階の庭)の方を向いた壁(C種外壁)は都市景観にはあまり影響しませんので、 各住戸が自由に設計してよいというルールです。
それに対してコの字型の外側の外壁(A種外壁・B種外壁)については都市景観に配慮したデザインであるべきという考え方から、 ステンレスパネルのデザインに統一されています。
このA種外壁・B種外壁の違いは、 ベランダのある所についている外からはずす壁がB種外壁、 ベランダがない所についている内側からはずす壁がA種外壁となっています。 AとBはベランダがあるかどうかの違いで組み付け方が違うということです。
図17 スケルトンのフレーム |
スパンの方も7.2、 3.6、 7.2、 7.2、 3.6mとなっており、 2階部分で柱が広がるデザインになっています。 これはNEXT 21の外観上の大きな特徴になっています。 構造的には5つのタワーが建っているような形になっています。
図18 工事中の写真(逆スラブと順スラブが使われている) |
逆スラブになっている所は、 主に配管ゾーンとして使われており、 だいたいは立体街路と重なっている形で、 インフラ空間として位置づけられています。 それに対して順スラブになっている所をテーブルゾーンと名付けているのですが、 だいたいは住宅がのっています。
梁は鉤型になっています。 テーブルゾーンの所(スラブの下)は、 その下の階の天井のふところになっていますので、 ダクト配管が多く施工されています。 給排気口はどうしても必要なので、 へこんだ部分にはダクトの給排気口が並ぶという感じになっています。
NEXT 21では立体街路(逆スラブの所)を道路空間として位置づけ、 そこに配管しています。 フロアに二つのパイプシャフトがありますが、 そのパイプシャフト以外は全部横引きです。 戸建住宅の家の前に配管がいっぱい埋められていて、 そこから自由に配管が取り出せるといった考え方に近いものを実現しています。
NEXT 21の住戸部分には3.6mの階高があります。 100年間使う構造躯体は絶対傷つけないために、 配管ゾーンからテーブルゾーンに配管が入るときは、スラブと住戸の床仕上げ面との間の24cmの隙間を目がけて配管が梁を乗り越えて入っていきます。 実際に配水管の勾配を24cmで完全に処理することはできず、 トイレをつける場合、 強制ポンプをつけなければならないゾーンが若干あります。
我々は設備屋なのですが、 設備が建物の長寿命化の一番のネックになるといろんな方から指摘されています。 建物を100年間使うと言うけれども、 一番短い期間で入れ替えたり点検したりしなければならないのは、 設備です。 そういう意味で、 かなりの頻度で設備をちゃんと見ていくために、 立体街路の配管のうえのパネルは全部取り外しが可能になっています。 このパネルさえ外してしまえば、 下の配管を全部見ることができるわけです。
建物の長寿命化の本当の意味は、 建物のいろんな部材の耐用年数を全部全うさせてあげる事ではないかと思います。 しかし、 それが難しい。 スケルトンは100年持つとしても、 それ以外に30年の耐久性を持つ物もあれば50年の物もあり70年の物もあるわけです。 それぞれの建築部材がそれぞれの寿命を全うするために、 どういうふうに組み合わせるのが良いか、 実際には非常に難しいと感じています。
NEXT 21では、 耐用年数が短い物を交換する時に、 それより耐用年数の長い物を絶対傷つけないために、 こういう方法を取りましたが、 全く足場のない所で配管工事を行わなければならない部分があったり、 配管が全部終わって1階の街路が完成しないと住戸の中に部材が運び込めないなど、 工事中は非常に苦労があったと聞いています。
最初はこのやり方が非常に良く思えたのですが、 例えば公団のKSI住宅などには各住戸に1個の配管シャフトが確保されている例もあり、 様々な耐用年数の部材を組み合わせていくための考え方は、 もっと色々あるのではないかと最近考えております。
図19 逆スラブ(立体街路など)と順スラブ(住戸部分など)
図20 テーブルゾーンとキャナルゾーン
図21 実際の図面が乗ったところ(3階)
図22 ルールブックの例(1) |
実は私は建設の時にはNEXT 21のプロジェクトには所属していませんでした。 第1フェーズの入居者とともに居住実験のために転勤してきて、 2回のリフォームを行いました。 ところが、 やろうとすると最初はやはり難しく、 調べないと分からないことがたくさんあり、 大変苦労しました。 建設当時のメンバーが、 全部異動してしまったもので、 わからなくなってしまったわけです。
たった5年間でこんな状態です。 100年間も経ったらどんなことになるだろう、 仮に、 60年後にリフォームするとなれば、 建てた人も設計した人も住んでいた人も誰もいないという状況です。 そこにシステムがきちんと残っていないと、 きっと大変なことになるだろうと痛感したわけです。
ですから第2フェーズの目標の一つはルールブックの完成です。 今は資料を束ねただけで参照しにくいので、 それを整理していくことを、 居住実験のかたわらでやっていきたいと考えています。
図23 ルールブックの例(2) |
図24 システムズビルディング |
図25 402住戸のリフォーム |
この住宅では、 テラスが二つに分かれており、 それぞれに植栽が多く洗濯物を干す場所としては狭いという入居者の不満をもとに、 テラスを大きくしましょうという話がまず一つありました。 二つ目として、 台所の横の窓が大きすぎて西日が入るために、 台所が暑くて物が腐るということで、 台所は北側にして西側の窓を小さくしましょうという話。 三つ目には、 立体街路に面した浴室が、 風が通らずに非常に暗いと不満になっていたので、 浴室を比較的いい場所にもってきて明るくし、 小窓を設けて風が通るように設計しました。
さらに、 当初は和室がなかったのですが、 入居者のほうからやはり和室が欲しいという希望がありましたので、 和室を一つ新設したというリフォームを行っています。
その時の外壁の移動ですが、 赤い部分は固定したまま動かさなかった壁です。 青い部分は何らかの形で外壁を移動させました。 濃い青色は移動しただけですが、 薄い所は若干の改造を加えて外壁を移動させています。
図26 402住戸のリフォームの際の外壁の移動
図27 真ん中の階の外壁を動かしている
図28 改修が終わった後の外壁
図29 住戸分割リフォーム |