これは、 『建築文化』でNEXT 21が20ページにわたって紹介された際、 竣工時に私が見学したことをまとめたレポートです。 もう6年前のことになりますが、 NEXT 21の内容をあまり知らされずにアーバンデザインの専門家が見るとどう見えるかを書いて欲しいという注文でした。 その時の感想をもとにコメントしてみます。
今の区分所有法の考え方だと、 所有できるのは壁の内側に過ぎません。 壁1枚で分けられた内側の被膜だけが自分のもので、 ドアの外側や窓の外側のバルコニーやベランダは共有部分です。 そうすると、 NEXT 21の住戸をリフォームする際、 可動出来る外壁は法的にどういう存在になるのか。 これは面白い問題だと思いました。 壁が動くということは公の領域も動くということであり、 共用空間も固定できないということです。 それが法律的にどう判断されるのか。 今の法律では解決できないと思います。
こういう住宅が増えていくにつれて法律の改正も進んでいくと思いますが、 壁の問題は第一に解決すべき問題になるのではないかと思いました。NEXT 21に見る3つの課題
大阪大学 鳴海邦碩
今日は2000年の最初のセミナーとして、 NEXT 21とそのリフォームについて報告いただきました。 後からいろんな方のコメントやご意見がうかがえると思いますが、 私のコメントとしては「NEXT 21を見る」と題した一文を参照していただければと思います(巻末資料:「NEXT 21を見る」『建築文化』1994年1月号)
公的空間が固定できない可動空間
NEXT 21を見て最初に感じたことは、 集合住宅における共有部分と専有部分の関係性です。 集合住宅は分譲型の持ち家と賃貸型がありますが、 NEXT 21が分譲マンションとして売られるものだったら人びとにどう捉えられるだろうかと考えました。
403住戸「ハーモニーの家」平面図 |
あのデッキに住人が植木鉢を置いたら、 他の人が通路を通れなくなってしまいます。 実際、 縁側で月見をしながら一杯やるために、 人が入れないよう囲んでしまいたくなる雰囲気がある空間です。 しかも、 裏側にも通路があって住人の通行には支障がありませんから、 あの空間は閉じてもいいように作ってあるのかなと思いました。 403住戸以外の住人があの空間をどう評価して使っているのかが気になります。 住人とそれ以外の人とではイメージが随分と違うのではないかと思いました。
今日の加茂さんの報告の中でも「建て替えやリフォームにはルールが必要だ」というお話がありましたが、 自由な住まい方を実践するためにはルールがないと無茶苦茶になる可能性があります。 特に、 403住戸はどこまでがプライベートで、 どこからがパブリックなのかよく分からない。 多分、 設計段階では序列を付けているのでしょうが、 最初に見たときそのところが気になった部分です。
西立面図 |
南に向かって開くコの字型の住棟配置は中庭の緑も見えるし、 住んでいる人にとってはとても良い環境です。 うまく市街地の中に建ったなと思う一方で、 通りからNEXT 21を見ると3階以上と梁間が違う下の階をつなぐ太いYの字型の柱が見えて、 街並みのスケールと合わないと感じました。
また、 インフィルである住戸部分とスケルトンである構造躯体がはっきりと分かれて見える建物ですが、 それを分からせるデザインは必要ないだろうと思います。 実験住宅なのだから構造部分と住戸部分が分かるようにするのがひとつの狙いなのかもしれませんが、 このスタイルの建物が街の中に増えていくと、 どうしても街並みとの異和感が強いと思われます。
NEXT 21の感想としては他にもいろいろありますが、 強いて挙げるとこの3点に絞られます。 分譲として考えた場合の持ち分と共有部分のあり方、 通路の自由さと公私の境界のルールをどう解決するか、 町なかに建つ場合、 見られる側としての配慮はあるかということです。 6年経ってそれなりに落ち着いた雰囲気にもなっていると思いましたが、 以上の問題点を感想として述べさせていただきます。