都市環境デザインを目指す若者集まれ
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コンサルタントの職能について

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図1 地域計画建築研究所ARPAK
改行マークまず、 私のいる(株)地域計画建築研究所=アルパック(ARPAK)から説明します。 京都で地域計画をする人とその集団という意味の社名なのですが、 そもそもは1970年に大阪万博が開かれたとき、 そのサイトプラン(敷地計画)を作った人たちが京都大学の周辺で開業したのが始まりです。 ですから本社は京都ですが、 私はその大阪支社に勤めています。

改行マーク上杉さんの話にもありましたが、 私も大学の建築科を出たら2年ほどいろんな職場を転々とするものだと聞かされました。 私の場合、 大学を出て2年ほど設計事務所にいたのですが、 その後アルパックに入社し、 3年目に大阪の支社へ来ました。 その後、 ずっとそこで仕事をして今に至っているわけです。

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図2 日本のコンサルタントのスタイル
改行マーク次にコンサルタントの職能について紹介します。 日本でコンサルタントやシンクタンクという職能が出来てから、 大体30〜40年ほど経ちます。 私はこの仕事を約20年やっていますから、 日本のコンサルタント歴の半分を経験したことになります。

改行マーク日本でのコンサルタントを分類すると、 図2のようにまず金融系のシンクタンク(○○総研)が挙げられます。 株式会社形式で、 経済予測をしたり電算処理システムの開発をしたりしています。

改行マーク2つ目にあげられるのが行政の企画や政策立案をする組織で、 国や地方公共団体の外郭団体など(財団法人、 社団法人)があります。 大きいところでは国土庁の系列のNIRA、 地方だと県の財団法人があります。 私たちの分野で例えれば地域の長期計画や振興計画を作るのが主たる仕事です。

改行マーク3つ目にあげられるのが公共事業の調査設計をしている会社です。 行政からアウトソーシングとして生まれたり、 スピンアウトした組織で、 公共事業の専門別に分かれ、 各分野の調査・設計をしている職能です。 これは職能としてもっとも確立していると言えるでしょう。

改行マーク4つ目にあげられるのが民間系シンクタンクで、 大学からスピンアウトした組織や、 建築事務所がその職能を広げたもの、 ゼネコン系などにオリジンを持つシンクタンクです。

改行マークアルパックは大学からスタートしましたし、 阪神間でまちづくりコンサルタントをしているコー・プランも元は大学を出た人たちが設計事務所を作り、 都市計画へと職能を広げていったところです。 建築系の人は、 大学や建築事務所を経てコンサルタントになった人たちが割合多いようです。

改行マークこれら民間コンサルタントの仕事は、 地方シンクタンクだと地域振興計画や市町村の長期計画を行い、 まちづくりコンサルタントだと商業振興や居住地環境改善などのソフトな分野が得意で、 都市計画コンサルタントだと市街地整備や土地利用計画をやっています。 このように民間系はソフトな部分から振興計画のプランニング、 そして開発事業計画までを幅広くやっています。

改行マークこれ以外にも、 区画整理などをするシビルエンジニアと言われる専門職能型のコンサルタントグループがあります。 こちらは大きな組織が多いのが特徴です。 というのも橋や高速道路などのような公共事業の場合、 何をするかがはっきりしていて経営的に読みやすいこと、 また事業の規模も大きく、 大きな組織のほうが対応しやすいことが多いからです。

改行マーク一方、 まちづくりコンサルタントは小さく細々とやるのが一般的です。 アルパックは百人ぐらいの所員がいるのですが、 これはシンクタンク部門や設計部門を含んでの数字です。 まちづくりを専門にやっているところとなると10人以下がほとんどです。

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図3 まちづくりと都市環境デザイン
改行マーク次にまちづくりと都市環境デザインについて簡単に説明します。

改行マーク私のやってきた仕事を振り返ると、 図3のようになるんじゃないかと思います。 まちづくりの3つの要素を図にしたものですが、 建築設計をしたり公園や橋を作る空間作り(物的計画、 設計など)がある一方で、 地域の長期計画や制度、 組織を作る仕組み作りがあります。 それ以外に私が最近重点を置いている要素として、 市民の活動や運動、 イベントなどの動きをつくることがあります。

改行マークこの3つの行為(空間作り、 仕組み作り、 動き作り)の中に、 都市環境デザインがあると思っています。 都市環境デザインという言葉からどうしても物的なものをイメージする傾向が強いのですが、 都市のデザインをソフト面から見ると仕組み作り、 動き作りも大切ですし、 それらが相互に関係し合ってきます。 この3つの要素が絡み合う中で、 私達は仕事をしています。

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図4 まちづくり計画の段階
改行マークでは通常、 コンサルタントはどのようにまちづくり計画を作るのかを、 流れで追ってみたのが、 図4です。

改行マークまず単純に地区の問題点を発見し、 調査する。 対象は、 道路や密集地区などいろいろありますが、 何が問題かを調べます。

改行マークリソースの発見と書いているのは、 地区で使える資源を見つけることです。 それはまちの歴史や魅力、 利便性であったりするのですが、 中でも地区でやる気のある人を見つけることが大事なことです。

改行マークその次の目標像の設定とは、 地区のビジョンをイメージし、 理想像を作ることです。

改行マーク4つ目には、 それを実現するための計画課題の設定です。

改行マーク我々は、 こういう風に問題点と課題を使い分けています。 目標を達成するためのものが課題です。

改行マークその後、 実際の計画を立て実施にいたるのですが、 実施にいたる上での大事な通過点が合意形成です。 最近ではどんな地域計画でも、 合意形成抜きで実施にいたることはできません。 ワークショップだけやってくれという依頼も多いのですが、 合意形成までスムーズに持っていくためにはリソースの発見段階から住民参加で行うのが一般的になりました。

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図5 住民参加でどんなことを掘り起こすのか
改行マーク住民参加でどんなことを掘り起こすのかを示したのが図5です。 商店街の活性化をしたいという依頼だったら、 まず問題点として賑わいがない、 人口減少、 活力がないなどを指摘し、 リソースとしてそこの歴史性や利便性などの潜在能力を掘り起こします。 目標像は、 商業地なら協同事業や共同建て替え、 環境問題ならば保全活動といったことを設定します。 その後、 目標を達成するための課題・計画を設定し、 スケジュールや資料を作ったりして、 情報公開・説明会・学習会を行ってから実施に移るというのが一般的な流れです。

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図6 要素技術と総合化技術としての都市環境デザイン
改行マークこうした、 我々が普段やっている仕事を、 もう少し体系的に説明しようと思います。 図6をご覧下さい。

改行マーク都市環境をデザインするには土木・建築・社会学・緑化・生態などそれぞれ専門性の高い技術がありますが、 それらを要素技術として総合化する技術が必要とされます。 その背景には社会的背景やシステムがあり、 それら全部がそろっていないと目標像に到達することができないというのが、 我々コンサルタントが置かれている現状です。 私は、 それぞれの要素技術と総合化技術を両方やってきたと言えます。

改行マーク20数年前、 私がコンサルタント業界に入ってきたときは「コンサルタントは誰でも出来る」と言われていました。 要素技術が見えなくて結果的には総合化技術だけが評価されるものですから、 誰がやっても良いのではないかということです。 しかし、 最近では「コンサルタントは誰にでも出来るものではない」と言い換えられるようになりました。 要素技術を把握しつつそれを総合化させる技術がますます必要とされてきているわけで、 そういう意味ではコンサルタントを続けられる人は限定されると、 ある先生に指摘されたことがあります。

改行マークいずれにしても、 要素技術と総合化技術を常に頭に入れておかないと、 実際のまちづくりの現場は動かないと言えるでしょう。

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図7 合意形成の方法(説明会、 懇談会、 ワークショップなど)

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図8 ワークショップの風景
改行マーク今日的な話をすると、 我々の仕事の中でますます重要度を高めているのが、 合意形成です。 図7、 8にあるように、 説明会、 懇談会、 ワークショップなどを行って、 まちづくりへの理解を深めてもらうように務めます。

改行マーク昔のまちづくりで重点を置かれていたのは計画作りだったのですが、 最近では住民が納得した計画作りが重要視されています。 しかし、 参加してもらえば良い計画が生まれるというわけではなくて、 住民が参加して計画に対する理解が深まることが、 後々重要になってくるのです。

改行マークまたコンサルタントが住民の中に入って、 みんなの意見の代弁者になることも要求されます。 集まってくる人々は地域の住人や権利者ですから、 それぞれの意見があります。 ですから、 ここでのコンサルタントはそうした声を反映して、 整理する能力が必要になります。 その整理した意見を住民に分かりやすく説明していくことになります。

改行マークですから、 コンサルタントの職能として、 客観的に整理し、 かつうまく表現できるコミュニケーション能力が問われることになります。

改行マーク以上がコンサルタントについての大体の紹介です。

改行マークでは次に、 具体的に何をしたかを知ってもらうため、 私達が今までしてきたまちづくりプロジェクトを紹介します。

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