7. 作法が育む都市風景
都市の現況模型1 |
ヨーロッパの都市では市庁舎に行くとその街の現況模型が置いてあって市民に分かりやすく見せるというやり方を昔からしているようです。
都市美協議の様子 |
屋上設備の目隠し |
都市美協議というのは確認申請の前段階で、 義務ではないものの建築主と市の担当者が顔を付き合わせて、 建物の形・色・材質を協議していくシステムです。 広島市ではこれが20年以上前から行われています。
外壁の形状や色、 材質以外にも屋上設備の目隠しをする、 駐車場・駐輪場・ゴミ置き場を工夫する、 屋外階段を露出させない工夫、 緑化、 壁面後退など広範囲に及んでいます。 また建物のことだけでなく、 洗濯物が外に見えないようにする、 広告・看板も控えめな表現にする(例えば化粧品メーカーのメナードのシンボルカラーは赤ですが、 ここではシルバーにした)、 工事現場の仮囲いを楽しくするなどが話し合われています。
これらの都市美協議は、 広島全域の5階建て以上の建物を対象に行われています。 角地の建物については、 3階建て以上です。
平和大通りの鳥瞰 |
そのほか川の街ですから、 リバーフロントにも都市美協議システムを取り入れ、 空間が有効に利用できるようにしています。
また原爆ドームも世界遺産に指定されましたので、 世界遺産のバッファゾーンとして周辺の地区を形成し、 いろいろと景観上の配慮をお願いしています。
こうした都市美協議を20年もやっていますから、 協議件数はすでに7千件を越えました。 一種の都市の作法として、 建築家や市民にかなり浸透しているようです。
この3つのグラフは今から10年前に我々の研究室で調査した結果です。 協議する前からすでに配慮していて合意に達しやすい項目と、 なかなか合意に至らない項目に分かれています。 合意に達しない項目は、 大抵が敷地に余裕が必要なケースです。 緑化や駐輪場、 壁面後退など敷地に余裕が必要となる項目は、 建築主もおいそれとは「いいですよ」とは言ってくれません。 それに対して、 色や屋外階段など敷地面積に関係のない項目になると合意してくれる点がたくさん出てきます。
このように見てくると、 作法が育む都市風景とは主に行政が取り組んでいる都市風景づくりだと言えると思います。
配慮率と指導率
配慮率と合意率
敷地規模と配慮率
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