京都は再生するか〜百年後の水と緑をデザインする
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 第2回ワークショップ記録でメールをご紹介した可部様より、 再度メールをいただきました。 ありがとうございます。

 今後とも、 当研究プロジェクトに対するご意見をお持ちしております。

 (あて先 nnnet@mbox.kyoto-inet.or.jp 中村まで)。


可部様からのメール

 私のHPをご覧戴き、
丁寧な反論を掲載して戴きましてありがとうございます。

 上野氏のご意見に納得できない点が2〜3ありますので、 上野氏に下記反論をお伝え下さい。

 できれば掲載をお願いいたします。 また、 日経紙の取材を受け先月29日の朝刊「エコノ探偵団」の記事となりました。 ご参照下さい。

 1。 ミクロ(地球規模)/マクロ(都市環境)について両方平行して行うべしとのご意見ごもっともですが、 2兎追う者は1兎も得ずのたとえ通り、 どっちも成果が出なかったということになる可能性もあるはずです。 私は、 氏の言われるマクロが優先される時代になったと言いたいのです。 今まで建築家(デザイナー)は一昔前、 ビルの室内気候だけを問題にしてきましたが、 建築物の外との調和(都市環境)が問題となりました。 今後は地球温暖化防止など国家規模、 地球規模の問題との調和へと意識を高めて行くことが求められているのだと思います。 またその時、 緑を増やす=環境維持と短絡的に思いこむのではなく、 専門外であってもヒートアイランド現象の原因は何か、 最も効果的な対策は何かを、 科学的に選んで欲しいという意味を込めて述べたつもりです。

 2。 熱の行方について、 私はこう考えております。 屋上緑化は、 屋上の植物から行われる水の蒸散潜熱で植物が冷え、 これが太陽熱を遮断するというメカニズムでビルを冷却するのですから、 枯れた木や緑色の造花を屋上に並べれても冷却効果は出ないのです。 つまり、 水の蒸発をさせてやれば(夏の)ヒートアイランド現象抑制の効果は出ることになります。 水を蒸発させるのであれば何も植物を使わなくても安い方法は他にいくらでもあります。 湿った培土の断熱性をあまり期待できないことは、 普通のビルには既に屋上に発泡系断熱材が100mm程度敷かれていることから明らかです。 現に日本建築センターの「屋上緑化の技術評定」の解説に精緻な(境界層まで考慮した)熱伝導計算が載っておりヒートアイランド現象抑制に適した方法ではないと結論されています。 是非ご一読下さい。

 3。 灌水の必要最小限の量の問題と、 貯水蓄水方法については、 次のように考えております。 東京の異常渇水は50日間雨水がほとんどなしという年が過去20年間に数回あります。 京都は知りませんが10年に一回の渇水でも屋上緑化の植物は全滅しやり換えとなります。 私は文献にある最低2mm/日と書きましたが、 実際はこの雨量では培土を冷やすことができず温度が上がり過ぎて根が枯れます。 よって、 その10倍〜50培の雨量は必要だと思っております。 現にデパートの屋上緑化にはじゃんじゃん水を与えて生き延びさせています。 各ビルに貯水蓄水設備がなければダムが必要になることはお分かりいただけると思います。 貯水・蓄水設備のコストはさほど大きくはならないであろうという上野氏の推測には疑問があります。 桶を置いておけば済む問題ではありません。 現に屋上緑化メーカーの貯水設備は冬季の凍害をも考慮した自動散水装置付き(水量を少なくするために必要)のもので、 これでも失敗例が多く施工された屋上緑化の5割は昨年の渇水で枯れたと言われています。 私は屋上緑化用の貯水設備費用を東京都の計画にあるように1200ha分合計するとダムを新しく作るより高くなることを知り愕然としました。 これが現状です。 上野氏は現状は現状として、 あきらめないで技術開発すれば良いと言われますが、 開発途上のもの(建築で言えば免震構造)を時期尚早であるにも拘わらず自治体が普及推進することに問題があると私は思います。 また、 なぜメリットの小さなテーマに技術開発が必要なのでしょうか、 ヒートアイランド現象抑制が主目的なら、 ビルの屋上に水を定期的に撒けば良いですし、 川面や堀を元の面積に戻す技術の開発に注力する方を優先させるべきではないでしょうか?鼎の貴重を問うと言う言葉がありますが、 上野氏の主眼はどこにあるのでしょうか?
 4。 植物の問題について、 私は、 誘引ではなく「自走する」蔓植物で花が咲くものがないと書いたのです。 自走すると言う意味はクイナリア、 アイビー、 イタビカズラのように張り付いて登って行くという意味です。

 5。 「コップ1杯の水を節約して、 植物と分かち合う」という価値観を身につけることも重要であろうと言われますが、 私は、 異常渇水時には、 屋上緑化に「コップ1杯の水を 植物と分かち合う意味はない」と考えます。 渇水の心配のない都市や、 炊事の排水を与えることができ枯れても問題のないベランダ菜園程度の緑化?は問題ないのですが、 大規模な屋上緑化を、 ヒートアイランド現象抑制に効くとか地球温暖化防止効果があるなどと科学的な根拠なしに、 未完成のものを自治体が推奨してはいけないと考えています。

 6。 昔、 茅葺きの大きな家屋のてっぺんにイチハツなどを植えていました。 屋根緑化です。 しかし、 これにはちゃんとした目的/意味があったのです。 モノの役に立たないビルの(植え込み型の)屋上緑化を勧める必要はなく、 安くて確実な平地の地盤面の緑化を増やし、 屋上を緑化したいなら多少技術開発が必要でも「誘引して屋上に導く緑化」を増やすことを優先すべきだと考えます。

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