都市空間の回復―思考の軌跡と展望--
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結論は「協議なくして変化なし」

 

今の心境

 2、3カ月前にJUDIセミナーの依頼があったとき、最初「私はもう賞味期限切れの人間だから」とお断りしたんです。しかし、関西を去るに当たって「これまでのザンゲをしていけ〜」という声もあちこちからありまして、じゃあ一度私の話を聞いてもらおうかと、今回の講師を務めることになりました。

 「都市空間の回復―思考の軌跡と展望」という生意気なタイトルではございますが、今日は、私がこれまで都市景観や風景について何を考えてきたのかをお話ししたいと思っています。過去のJUDIセミナーでは時間が足りなくて話せなかったこともお話できたらと思います。

 まず「今何を考えているか」を簡単に言いますと、景観まちづくりにおいて今重要なのは「協議なくして変化なし」の原則を確立し、普遍化することの一言に尽きます。何だそんなことか、と言われそうですが、まずはこれを説明していきます。


この心境に至るまでの4段階

 実はこの「協議なくして変化なし」という心境に至るまでには、以下の4段階の出来事がありました。

     
    (1)NIRAの委託研究「美的価値に関する事例調査」への参加
    (2)広島市の都市美委員会における活動
    (3)ハンナ・アレントの思想との出会い
    (4)京都の新景観政策を巡るJUDI関西での議論
 
 (1)のNIRA(総合研究開発機構)への参加は、この分野に私が関わることになったきっかけの仕事です。NIRAからの委託研究という形で参加しました。これが最初のきっかけで、1970年代後半ぐらいでした。

 (2)の広島での都市美委員会は、都市美行政を補佐するような活動です。これが1980年代のことです。

 (3)1990年代に入ってから関西大学に来たのですが、そこは比較的時間を自由に使える環境でした。書庫、図書館にも随分入り浸っていました。そして、ハンナ・アレントの思想に出会うことになったのです。この人の本を読んだことが、私の考え方を飛躍させるきっかけであったように思います。

 (4)最後は、ちょうど一年前になりますが、京都の新景観政策を巡ってJUDI関西で議論がありました。その時の体験が、私の考え方をはっきりさせたと思っています。

 今日はこの四つの話を詳しく話したいと思っていますが、その前に「前史」として海外で体験したことを聞いていただきます。

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