大津の町家・まちなか〜市民によるまちづくり活動
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町家・まちなかの保全・再生・活性化

 

■大津の町家を考える会での取り組み

 「大津の町家を考える会」は1997年7月5日に設立された市民活動団体です。大津の中心市街地(まちなか)の町家や町並みの保全・再生や、まちなかの活性化に取り組むことを目的に立ち上げられた団体です。設立当初は、会社員、OL、主婦、公務員、自由業、大学教員、都市プランナー、大工、学生など多彩な市民が80名ほど参加致しました。もともとはまちなかに住んでいたお二人の方が、町家がどんどん減っていくことに危機感を覚えて、こういう会を立ち上げたのです。たまたま私も会に参加して今日に至っているというわけです。

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大津百町物語 中央学区町家マップ
 
 発足当時は、新聞も好意的に取り上げてくれました。主な活動内容は、シンポジウムやフォーラム、町家見学会などの開催、『大津百町物語』(写真左)という本の編集・発行、町家マップ「大津百町おもしろ発見地図」の発行などです。『大津百物語』や町家マップは当時の青山会長がとても頑張って発行にこぎ着けられました。僕は当初「本の発行までは無理だ」と言っていたんですが、すごい馬力で本を作って、その後3刷まで行ったヒット商品になりました。とても読みやすい良い本です。

 ただ、そうした活動の中で青山会長がよく口にしていたのは「私たちは考えてばかりいる会です。こうしている間にも町家はどんどん潰れている…」という悩みで、こういう活動でいいのかという疑問が会員からも出てくるようになりました。町家保全のために我われも汗を流そうという雰囲気が出てきて、何か拠点になるような場が欲しいと探していたところ、メンバーがこの丸屋町商店街の空き家を見つけてきて借り上げることが出来たという経緯です。

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読売新聞2000年12月24日 京都新聞2001年4月11日
 
 ここは10年間空き家になっていましたので、中はかなり荒れていたのですが、大家さんが手を入れていいと言ってくれたので、いろいろと改修いたしました。その当時の新聞記事が上の写真です。当時の青山会長、仕掛け人で今は大津市市議会議員になっておられる方、今よりちょっと若い私も写真に納まっていてとても懐かしいです。大がかりな改修工事でしたが、メンバーの大工さんの指導で取り組み、ふすまや床の張り替えも、会員みんなが手づくりで参加しました。

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朝日新聞2001年5月12日 オープニングセレモニー2001年6月9日
 
 そうした活動を経て、2001年6月には「まちづくり大津百町館」を開設することができました。写真右はその時のオープニングセレモニーの様子ですが、頑張っておられた青山会長がつい最近亡くなられて、我われにとっては大黒柱がいなくなったような残念な出来事でした。


■まちづくり百町館の活動

 我われはこの百町館を、町家体験の場、出会いと交流の場、町家・まちなか文化の発信、市民活動の拠点として使っていこうと考えていました。そこで、当初から「百町館十一の夜話会」というイベントを始めました。その1回目は、「百町館まちなか寄席」と題して桂宗助さんらを招いての落語会です。

 話はちょっとずれるかもしれませんが、こうした活動と地元との関係をお話ししておくと、最初まちづくり活動をするためにこの商店街に拠点を定めたとき、地元の商店街の人たちにとってはまるで理解のできない人種が突然落下傘で降りてきたという感じだったらしいですね。商店街の会長に「いったいあなた方は何をしたいのか。何をしようとしているのかを地元のみんなの前で話してほしい」と言われたんです。それで、地元と一緒に語り合える場として設けたのが、この夜話会なんです。

 大津市は歴史も古いし伝統的なお祭りもあって、かなり内部の結束が堅い土地柄でして、外部から来た者にそう簡単に気を許すような気質ではありません。ですから我われは相当うさんくさく見られていたようです。

 そんな訳で、夜話会では1回目が落語、その後は「まちなかの魅力を語る」「町家の魅力を語る」と題した意見交換会、演奏会、暑気払いと題した怪談の会、男の料理を楽しむ会などなど、いまから考えると相当ここで遊んだなという気持ちです。楽しかった思い出ばかりです。

 第6回目の夜話会では、柴山さんの旦那さんに来てもらってご自宅を改修した話をしてもらいました。第10回では関西学院大学の片寄先生に来て頂いて「町家・まちなか・再生への道」と題した勉強会を開催致しました。最後の第11回では、立命館大学と龍谷大学の落ち研を招いて「落ち研対抗落語合戦」を行いました。その後も落語会は年に1〜2回行いましたし、それ以外にもフォルクローレコンサート、大津祭りのお囃子会などを催しました。

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 こうした活動とは別に、年に1回「町家・まちなか・博覧会」(写真左)というイベントを開催しました。また大津には「大津祭り」という伝統的なお祭りがあるのですが、その時は必ずオープンしてここでぜんざいなどを売ったりして活動資金を稼ぐこともやっています。

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 「町家・まちなか・萬(よろず)塾」(写真左)と題したセミナーも開催しました。これは、青山会長の企画で始まった文化講座のような内容です。

 また、大津には伝統的な「大津踊り」という芸能があるのですが、大津の芸者さんにここに来てもらって踊ってもらったことがあります(写真中)。

 その後、そうした楽しいイベントだけでなく、町家を残すための講座があってもいいのではないかという声が出てきて、町家を勉強するための町家再生セミナーを開催致しました。町家に住み、町家をこよなく愛する我われのメンバーのひとりが企画し、大工さんと左官屋さんに話をしてもらいました。また、『大津百町瓦版』と題したミニコミも発行しています(写真右)。

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 それ以外に活動資金を稼ぐために、『大津の町家カレンダー』(写真左)を発行したりしています。拍子木看板というのも考案しました(写真中)。拍子木看板を下げてもらう店の目標を百軒にし、ゆくゆくは「拍子木看板巡り」ということも考えていましたが、これは頓挫しています。また、貸し館としていろんなライブや教室に場所を提供したこともあります(写真左)。

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町家・まちなか・美術館 大津の中心部どうする(京都新聞040628)
 
 「町家・まちなか・美術館」も企画致しました。これは、小学生に町家の絵を描いてもらって、それを中心部のお店に展示してもらうという内容です(写真左)。

 市民フォーラムをここで2回開催しました。「大津の中心部どうする」というテーマで、市長を交えて討論をしました(写真右)。

 世界水フォーラムが大津で開催された時には、外国からの参加者が来館され、ここで食事会を催したこともあります。

 いろんな方がこの百町館を訪れてくれたのですが、オープンの時の我われも予想していなかったことですが、小学生の社会科見学での訪問がありました。おくどさん、井戸、障子なんてものは小学生にとってはとても目新しいことのようで、大変楽しそうに体験してくれてました。

 以上が、大津百町館の取り組みです。

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