大津の町家・まちなか〜市民によるまちづくり活動
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古いものを活かしたまちづくり

 

■長野

 今日は町家を活かすとかNPOがどのように活動するとかという話だったのですが、我々の仕事は残念ながらNPOとかが対象ではなくて、商業の活性化とか、もう少し柔らかく言うと「賑わいを創る」という仕事が中心なものですから、そういう観点から参考までにちょっと話をしたいと思います。

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 長野の事例です。古いものを活かすことは全国でもやられています。長浜が一番分かりやすいんですが、今回中心市街地の活性化ということで長野が有名になったのは、二つの商業核を創って、その核の間を回遊させるという取り組みが評価されたからです。その一つの核がこのパティオ大門です。半分くらいは元々の建物を使って、残り半分は、見た目は古いように見えますが新築です。

 私は専門家ではないのでわからないんですけれども、中も上手く道路にして建築基準法をクリアして、これだけの建物が出来たそうです。道路に出来なかったら、これだけのものは整備出来なかったと聞いています。その辺の工夫もあって創ったということです。

 当初は優秀な成績でした。ここは観光半分・地元半分という構成の売り場なんですけれども、やはり観光が冷え切っているので、今ちょっと苦しくなっています。建物の2/3が経済産業省の補助を受けていて、イニシャルコストを低くしてランニングコストで上手く回せるような仕組みをつくるというのが目標なんですけれども、やはり売り上げが伸びないテナントが出て行ってしまうこともあり難しい部分が若干発生しているようです。


■宮城古川市

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 次は宮城県古川市にある醸室(かむろ)という商業集積です。今我々中小機構の中国支部の中心市街地のマネージャーをやっていただいている山崎洋一氏も関与した事業だと聞いています。

 これは江戸時代からの酒蔵をリフォームした食のテーマパークです。古さを生かして新しいテイストを加えて魅力的な商業集積を構成しています。こういう商業集積を整備する際に留意したいのは、ハード先行にならないようにするということです。どちらかと言えば、ソフト先行で計画を作って欲しいと思っています。ここで言いたいのは、ハードの綺麗なものをつくるというのと、我々が専門であるところのリーシングでどうやって商業の魅力を高めるかという所がバラバラになってはいけないんだと思います。

 ちょっと話が飛びますけれども、今日社会教育会館にお邪魔して、中にどういうものを入れるかという話があったのですが、やはり最初はレベルの高いものを入れて欲しいと思います。商業施設は段々飽きられてきて一般的には段々と商業レベルが落ちてくるのです。OPAもそうですけれども、最初は良いものが入るんですよ。でも段々落ちてきて、100円均一になって、公共機関になってという(笑)、要は建物としての魅力が落ちていくんですね。

 古いものは魅力は落ちないんですけれども、新しい物に最初からレベルの低いものを入れたらその後に良い業種は絶対来ないです。だって今までダサいモノが入ってたのに、そこに何で一流のモノが入るんですか?だからやはり最初に目指すのは一流、それが1.5流になるのは自然の流れで仕方ないんです。洋服を買うのだってそうですが、最初は定価で買っているけど、バーゲンになったら安く買う。同じ物が安くなるというわけですから、人間の行動とかを考えると、最初から妥協しないということかと思います。


■熊本

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 これは熊本の上乃裏通りです。これはサンワ工務店の山野社長がキーマンになっている地区です。上通りという大きなアーケードの商店街の裏側のゾーンに100店舗くらいのお店があります。山野さんの何が凄いかを言うと、本当に親身になってアドバイスをするということです。

 真ん中のこれは栄屋旅館という建物ですけれども、元々名前の通り旅館でした。ご主人が亡くなって奥さんだけでやっておられて、地べたは借地で上物はあるんですけれども旅館を廃業しちゃうと奥さんは収入が無くなるわけです。それでどうしよう、困ったと山野さんの所に行かれました。旅館もほとんど開店休業の状況ですから全然お金もありません。じゃあということでとりあえずたしか200万円ほどで広い旅館の半分を改修してテナントに貸し、家賃が入るようになって2、3年たったらもう片方も改修して、飲食とか物販が5〜6店入るようにしました。

 それで家賃が数十万円。不動産賃貸業で老後も安心という感じです。ですからその人の人生設計までしてあげようというのが山野さんのやり方です。上乃裏通りですから家賃も表の商店街よりも随分安いわけです。そういう少ないコストで安い家賃でやっていけるという仕組みをつくって、まちづくりをしているという事です。まちづくり頑張るぞというのはいいんだけど、やはり皆がハッピーになる儲かる仕組みを上手くつくっていかないと、なかなかうまくいきません。

 この熊本の上乃裏通りはそういう皆さんのそこそこの満足を得るようなバランスを持って、山野さんが良い取り組みをしているので、いつも取り上げさせて頂いています。これも町家といっても大津みたいな素晴らしい町家ではないですけれども、古い物を使っています。


■米子

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 米子が最近有名になってきました。これまでの、いや今の米子の商店街はもう誰も人が歩いてない、昼間でもちょっと怖いくらいの状態だったんです。これは米子のタウンマネージャーに聞いたのですが、家賃が下がりすぎて、だから建物を建て替えられない。行き着く所まで行ったところから、最近ちょっとぺんぺん草が生えてきたというのが米子の状況です。

 米子は商都なんです。歴史のあるまちで遺伝子はあったのです。そこに米子の若い人達が素晴らしい空間を作っています。左下の写真は銀行のビルです。裏から見るとちょっとダサいですが、表へ行くと商店街の中で雰囲気の良いカフェにしています。若い人が出店をしています。これも賃料が下がり出店のハードルが下がったから出来たということです。やはり高い家賃でふんばってる商店街は、こういうのをやりたくても出店する方の算盤が合いません。

 地方で一番元気のある商店街と言われている佐世保の商店街に空き店舗が少ない一つの理由に、一番の地権者さんが、空き店舗になるよりは少し家賃は安くても店が入った方が賑やかで良いだろうということで、家賃を少し下げたことがあります。そうすると周りの人も下げざるを得ません。ですから商業者のせいばかりにするのではなくて、家主さん、地権者さんも、もう少し地元の活性化について考えなくてはいけないと思います。

 米子は考えなくても勝手に賃料が下がっちゃったわけで、仕方がない例ですが。


■豊後高田

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 あとは最近皆さんご存じの、古いものが手をつけられなくて残ってしまったという意味で、豊後高田の取り組みが最近よく取り上げられています。ここも長浜ほどではありませんが、確か年間50万人くらいの観光客が来るそうです。

 確か商工会議所の方がリードしたらしいのですけれども、最初にパラペット(古い店頭を隠し、新しい店舗のようにリフォームしたもの)を外して昔の顔を出したのは、4店か5店しか無かったと思います。そこで諦めずにずーっと続けていった結果50店くらいがこういう古い顔を出してやっているという事です。

 だからといって50店舗全てが良い商品を売っているというわけではないんです。だけど何店かは、こういう事をきっかけに良い商品を売ったり作ったりするので、徐々にまちづくりの機運が高まっているということです。

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