景観まちづくりの今
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空間の形をデザインするとは?

 

 確かに、今までも空間の形をデザインすることが、されてなかったわけではありません。一体的な開発地区であれば、デザインガイドラインを作ったり、マスターアーキテクトを置いたりなど、いろいろなアーバンデザインの試みがされてきました。ある決まったエリア、しかもそこがまっさらの土地であれば、そういった試みは可能でした。

 また、歴史的な市街地で伝統的な建て方が継承できるような土地柄、何かを共有できるような様式があるところでも、それは可能でした。建築物に限らず、建物の配置の仕方が育まれて残っているところでは、それを維持していくためのデザインがされてきました。ランドマークをどう配置するかについても、一定の「地」の形を共有する中でシンボル的な建物を造るという、アーバンデザインがされてきたと思うのです。

 しかしながら、私たちが普通に生活している一般的な町の中では、そうした空間の形を規制する仕組みはとても弱かった。それが今の状況だと思います。都市計画の地域地区でできるかと言うと、なかなかできません。地区計画でも難しい。法定の計画に書かれている内容だけではなかなか厳しい現状で、それをどう運用していくのか、どう使っていくのかという使い方の工夫とセットでなければ難しいところだと思います。では、景観法でできるのかというと、景観法だけでは難しい。

 結局、こういった都市計画の法定のいろんな仕組みの中には都市空間の概念がないのです。建築や道、広場、樹木という個々の概念はあるかもしれないけれど、空間概念はありません。建築基準法は決して敷地を出ないと宣言しているわけですから、お隣のことは気にしないということになります。敷地が二重になっていても、なかなかチェックできないというのはそうした状況があるからなんです。

 私も大阪市の審査会に出ていますが、総合設計で船場の分譲の超高層マンションについては同意していません。安全という立場から都市に対する長期的リスクを説明してほしいと言っています。

 総合設計だけが建築基準法の中で「市街地環境に寄与すること」という一文が入っています。これは、基準法の中では扱いにくい一文とされていて、自治体によって判断が異なっています。基準法である限りは敷地を出ないと言っている場合もあれば、市街地環境を意識している場合もあります。大阪市は敷地に限定して判断するといしているので、私は怒られています。めげずに船場の環境のために問い続けたいと思っていますが。

 今の話のように、現在の仕組みでは空間を組み立てていくことが難しくなっています。結局は、空間の形の表現、つまり、形態意匠という項目を手がかりに、隣との関係や通り景観との関係を協議していくしかありません。

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