花博は「自然と人間との共生」がテーマでしたから、サインもできるだけ会場の自然を隠さずに見せていくシースルーのサインを作りたかったのです。とは言え、一日数万人の入場者をさばく情報装置でないといけませんので、サインとしてのキャパシティとシースルーを共存させるためにパンチングメタルを使用したデザインを採用しました。
(1)「実験」〜次世代に向けての試み(Temporary-Hard)
■透ける、座る〜国際花と緑の博覧会サイン計画
まずは「実験」というキーワードのプロジェクトについて、紹介いたします。これはTemporary-Hardという性格を持っていて、「次世代に向けての試み」という形で、博覧会や社会実験のような場面で使う道具立てと位置づけています。透けるサイン
政府苑と会場全体の誘導サイン
これは私が環境プロダクトを初めて担当した1990年の「国際花と緑の博覧会サイン計画」のプロジェクトです。もう20年以上前の仕事になりますが、会場全体のサイン計画を担当しました。この時は、色々な考え方をクライアントに様々な言葉で説明していった覚えがありますが、20年経って結局自分が何をやりたかったかを一言で言うと「透けるサイン」というものをやってみたかったんだということが分かります。座るサイン
花博記念公園鶴見緑地のサイン計画
これは花博の跡地に出来た花博記念公園鶴見緑地のサイン計画ですが、この時も自然景観をできるだけ見せるということを心がけました。そこで、ロウプロフィールで視線が通るようなサインを考え、こういう水平的なプロポーションのサインを計画しました。結果的に、基壇の部分に座れるベンチのアイデアが出てきて、「座るサイン」というものが出来ました。
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誘導サインです。この時はあまりコストもかけられなかったという理由もあるのですが、わりと簡便なサインです。これも全部置き式のサインです。こういう誘導サインも通常は基礎を掘るのですが、この時は穴を掘ってそこに支柱に鉄板のフィンをボルトアップしたものを砂利で埋め戻し、土圧で立てるという方式です。博覧会の期間は半年なので、終わった後になるべく基礎等の展示廃棄物が出ないように計画いたしました。
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現状の歩道は幅3.5mありますが、それを社会実験で現状の約2倍に拡幅してみようという実験です。広い歩道空間を作って、実際に市民に体験してもらうのが目的です。
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この時は、工事現場のような赤いコーンを置いた実験風景だけは作りたくなかったので、紙管を利用してそれを仮設のボラード代わりにして道幅を広げる提案をしました。
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これはその時の設営風景です。
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丸い紙筒と四角い筒を使って、いろんな形状が簡単に組めるシステムを考えました。
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実験中の風景です。
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歩道の一部はウッドデッキにしています。これは京都工芸繊維大学の学生さんがプロジェクトに参加して作り上げた仮設のウッドデッキです。ここは憩い空間として人気のスポットになりました。
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このプロジェクトでは社会実験用の特製Tシャツも作りまして、当日は学生さんたちや地元商店街の方とおそろいを着て実験を盛り上げるという工夫もいたしました。
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当日の実験風景です。
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社会実験の主旨や四条通りの将来的なイメージを市民にもできるだけインフォメーションする必要もありますので、演出バナーも兼ねたこういう解説サインを四条通りのアーケードから垂らしました。
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四条通りから入る細街路の通り記名のサインも設置いたしました。
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実験に先立っては、1週間前から実験の予告をいたしました。実験風景を50分の1のミニチュアモデルに作って、高島屋のロビーに置いて展示いたしました。
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社会実験では市民のみなさんへのアンケートも実施されました。現状の四条通りと歩道を拡幅した将来の四条通りのイメージパースを比べてどちらが良いかを問うものです。これには88%の方が歩道を拡幅した方がいいという結果を得ることが出来ました。
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我われは、インフォメーション用のポスターやチラシ、バス停、時刻表カードのデザインのお手伝いをいたしました。よるバス告知のためのキャラクターもデザインしています。 左の写真のイラストは「じゅうじゅう」というアオバズクのキャラクターです。
■しらせる〜かわらまち・よるバスVI計画
かわらまち・よるバスV.I.計画
次に「しらせる」というキーワードでの実験を紹介します。これは、一昨年の暮れから京都市内の河原町通りの三条−四条間に4つほどバス停が出来まして、夜10時から10分間隔で10本限定の京都駅直行のバスが運行を開始しました。現在は市バスとの連携により5分間隔になっています。これは京都大学と地元商店街が中心になって考えたものです。バスそのものは京都の市バスを使うのですが、民間が公共のバスに委託して走らせるという全国でも初めての取り組みのバス運行です。それが「かわらまち・よるバス」です。
運行開始したときは1ヶ月ほど呼びこみをされたのですが、その時に胸にぶら下げる発光アイテムのカードもデザインし使って頂きました。こういった小物もまちづくりのためのひとつの道具立てと言えるのではないでしょうか。
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