2人のデザイナーが語る「街のあかり」
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都市の景観として

 

■東京・アークヒルズ

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アークヒルズ
 
 京都の仕事の後手がけたのが、都市環境のライトです。サントリーホール、ANAホテルなどがあるアークヒルズでの仕事です。

 アークヒルズの開発は、20年間に渡る地元との様々な折衝を経て実現されたもので、民間開発としては日本でも前例のない屈指の開発事業です。私たちがアークヒルズに参加したときは開発からすでに12年ほど経過した頃で、「ライティングの見直しをしたい」と依頼を受けました。

 とりわけオフィスビルのライトアップを見直したいという話が出たとき、現場を歩いていろいろ考えました。高層建築は機能的に集積されていて、どれだけ人が入れられるかという姿があり、夜にはそれが一層強調されて露呈されている感じがあります。そのスケール感は都市的でとてもシンボリックなオブジェとしても捉えられるのですが、私としてはもし光を照らすのなら、その大きさを光で表現するよりはもっと違うことをしたいと思いました。

 そこで、150メートルの高さからスポットライトで地上の広場を照らしてみました。ちょうどサントリーホールの入り口あたりに光だまりを作ったという格好です。この150メートルの建物が目指しているのは「人間」だというストーリーで、コンセプトを作ってプレゼンテーションいたしました。ライトアップというより、その建築がどう感じられるか、どう見えるかということに重きを置いたプレゼンテーションをしたつもりです。

 この照明も実に美しいのですが、強風が吹くと上の方で機具が揺れてしまいます。150メートルの高さで機具が揺れると、下の振幅がすごいことになる。キセノンガス入りショートアーク放電ですから、下の方でもそれがめらめらと見えたりする。そういう難点もいくつかございます。


■大阪・観覧車

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HEP FIVE
 
 私はいつも大阪に来るたびに、梅田の観覧車が点灯されているのを見てほっとします。なぜかと言うと、この観覧車には、躯体だけでなく外装のビル壁面にハロゲンランプを使っているのです。当時も今も比較的寿命の短いハロゲンランプを使って建築の外装照明を施すのは「非常識」なことでした。何回かのクライアントへのプレゼンテーションの中でもそれが問題になりました。調光が入っているので比較的ランプ寿命は延びる傾向にあるのですが、計量的なグラフにすると「100ボルト、つまり定格電圧に比べて90ボルトの方が3倍の寿命がある」という現実があります。ランプは最初に入れた電圧のショックで切れたりという事故もあり、なぜ白熱灯なのかということを説得しないといけないのですが、それは白熱灯だけが持つ光色とエネルギーをどうしても取り入れたかったということが最大の要因になります。


■東京・暖色を頂に灯すビル

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愛宕グリーンヒルズ
 
 これは2001年に東京にある高層の頂部に、3000ケルビンの光をインダレクト(間接照明)によって取り付けたものです。今では丸の内あたりではこういう暖色の光が当たり前のようになって、日本の都市景観のアイデンティティのような感じですが、当時は前例のないライトアップでした。この7、8年で本当に増えたなあと思います。

 私たちがやりたかったのは、シャープで高いイメージの建物だからこそ、その刺激的なロケーションに心配りみたいなものを加えたかったのです。あるいは常にオンの状態で働いているオフィスビルが、夜には少しオフになるというイメージです。そのためには、この色温度を選択するのが非常に大切ですということを随分と時間をかけて説得しました。

 実はここでも建物のライトアップ案が最初にあって、我われも設計から全部の資料を用意してライトアップ案(下から上へ投光する案)を提案した上で「この案はやるべきじゃない」と言ったのです。そして、その上に暖色の照明案を載せてプレゼンしました。実現するのに手間もかかったこともありますが、これも非常に思い出深い仕事です。


■東京・ツインタワー横の青松寺

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青松寺
 
 実はそのツインタワーのオフィス、住宅タワーの中央には青松寺という曹洞宗の寺院があります。最初はビル全体のランドスケープに関わる照明の提案をしてほしいと言われ、本当は光のグラデーションを長く引っ張って来たかったのですが、下に行くにつれて光が薄れてしまうのは、ビルの足元にこういう歴史的な寺院があったからです。

 周辺の環境によっては「照らすべきじゃない」という解もあると思います。

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元麻布ヒルズ
 
 別の仕事でも、建築にライトアップをしないというプレゼンをしました。それでちゃんとデザイン料をいただけたという意味では珍しいプロジェクトかもしれません。

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Sony City
 
 先ほど、建築の姿が昼間だけのものではなくて夜にはそのイメージをガラッと変えるというお話をしました。それは我われ照明デザイナーだけでなく多くの人が知っていることですが、その割には夜間の姿がデリケートに扱われている事例は多くありません。もちろん、オフィスビルの場合だとリーシングスペース(賃貸スペース)ぎりぎりまで照明が均斉に行き渡る考え方が維持されていて、このビルの場合もライティングの考え方で何度もオーナーと険悪な雰囲気になりました。

 ここでは、ガラスの周辺の部分で照度を落としてさらに色温度を変えました。「そんな働きづらい環境を作ってどうしてくれるんだ」と大変な騒ぎになりました。ただ、やはりその建物が長く都市と関係を結ぶということ、また夜間にはその建物が昼間の働いている時間とは違うことをアピールするという観点からすると、今のままでは放っておけないということもあって、怒られながらもこういう光の使い方をしてみました。近くに行かれる機会があれば、ぜひ見ていただきたいと思います。

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