東京国際空港第2ターミナル羽田到着コンコース |
すでに完成している第2ターミナルで我われが提案したライティングは、それまでのセキュリティや管理の色合いが濃いものからすると、とんでもない照明手法ばかりでした。それを3〜4年というプレゼンテーションとプランニングをかけて、モックアップ実験も随分とやって、「視認性(明るさ感)とホスピタリティ」を全面に打ち出したコンセプトを提案しました。もちろんそこには空港自体が施設としての業態を変えつつあるという背景もありました。要するにターミナルビルから商業ビルへという多様性を帯びながら、こういうコンセプトを受け入れられるという時代性もあったのです。
そうは言っても、受け入れにくい要素はたくさんございました。色温度や空間に対する視認性(明るさ感)をプランの中で示しながら、もともとある1ビルと同じ坪単位の照明コスト、ワット数だったりするのでは、何も出せないと思いました。そこで800メートルぐらいのコンコースの蛍光灯の数を全く同じにして、中央に配置されたルーバー付きの器具を左右に振り分けるという試みをしました。これも「平均照度が出ない」「中央が暗くなる」などいろいろ言われましたが、結果的には歩行するときの快適性も確保できて、照明だけで斬新なイメージに出来たのではないかと思っています。
グランウェリス瀬田 |
実は、住空間の中の照明は我われにとっては手がけにくい分野です。特に一戸建ての照明の仕事はごく少数の例しか手がけていません。こうしたコンサルティングワークのような仕事は、ホームページでそっと受けてはいますが、たいていは集合住宅や大規模な高層マンションのパブリックエリアが主です。専有スペースはビジネスとして受けるのも難しいので、住空間の照明と言っても中途半端だなと思われるかもしれません。
まず、住まいの明かりについては安全な快適性を大事にしたいと思っています。それと家族がそこにいるということを踏まえて、光によってどれだけ情緒的な空間が作れるかを頑張りたいと常に考えています。
住空間を手がける上では、建築家とのコラボレーションを始め、その先にユーザーという人がいることを前提にいろんなことを詰めていく仕事だなということは体感的に経験しました。先ほど見て頂いた都市景観の中で見る光は照明がオブジェクト的に見えているのですが、住宅の中では人間がどう動くか、どう感じるかが常に最優先の課題でして、そこからプランニングしていく仕事はやはり我われにとってはかけがえのないチャンスだと思っています。
芝浦アイランド |
一貫して私が言ってきたことは、この町全体の照明、それは駐輪場や人がほとんど入らない設備的なバックスペースであろうがすべてを3000K(ケルビン※)にしてくれということです。まるで選挙中の政治家みたいに会う人会う人に「3000」「3000」と連呼して、最後はうんざりされましたが。それで実現はしたものの、なんと言うことか、ランプ交換でバラバラになってしまいました。この写真は綺麗に見えますが、現状は誉められたものではありません。つまり管理体制に入ってからデザインの意図が受け継がれていないということです。
街はひとつの光を考える上では単純に利害関係をプレゼンテーションの全面に立てるべきではなく、何かを強調するということは何かを我慢することもたくさんあるんです。それをどうスピリッツとして持つかは、デザイナーはロジカルにも精神的にも強くならないといけないと思います。あれだけ「3000」と叫んだのに、メンテナンスでそれが行き届いてなかったというのは自分でも痛恨のミステイクという感じなのですが、なかなか難しいところです。もし、みなさんに今度こういう仕事のチャンスがあれば、メンテナンス(管理維持)体制まで主旨一貫するようにご注意ください。こういう部署は、デザインの役割という点でとても重要だと考えるようになりました。