2人のデザイナーが語る「街のあかり」
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コンセプトを考える

 

■まずは現場に行って考えよう

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御堂筋 2008年の実験風景
 
 左の写真は現場に行って考えようと撮った写真ですが、ごらんのとおり御堂筋のイチョウは沿道のビルと同じぐらいの高さがあることにまずは圧倒されました。

 右の写真は2008年に1街区70メートルほどで実験的にイルミネーションを施してみたものです。橋下知事が「ホネホネロック」と悪口を言ってしまったぐらい、成功とは言えずに終わってしまったものです。

 なぜ失敗したかと言うと、そもそもイチョウはイルミネーション向きの樹木ではなかったからなんですね。特に御堂筋のイチョウは樹齢70〜80年の巨木が多いですから、枝の先まで光が届かないんですよ。

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日本の有名なイルミネーション
 
 写真は仙台、六本木・けやき坂という日本の有名なイルミネーションをピックアップしたものですが、どこもケヤキの並木なんです。

 ですから、御堂筋のイチョウをケヤキと同じ手法でイルミネーションを施すということは、そもそも無理があったんです。建築もそうだと思うのですが、どの物件も同じ照明でやるということは考えられないことです。イチョウにはイチョウの、ケヤキにはケヤキのというふうに、それぞれの特徴にあった照明方法があるはずなんです。ですから、御堂筋にも御堂筋ならではの方法があるはずです。


■コンセプト

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コンセプト 三位一体のデザイン
 
 そこで、「御堂筋だからこそのデザイン」はどういうものかを考えました。この場所でしかできないこと、それをやろうと思いました。

 「御堂筋とはどういう場所か」ということから入っていくと、その特徴はイチョウ、ビル、道路にあると考えました。特に道路ですよね。実際ここは6車線の国道です。しかも国内の国道でこんな規模のイルミネーションをやっている所っておそらくないのです。

 そして、イチョウはイチョウならではのイルミネーション、ビルはビルならでは、道路は道路ならではと三位一体となったものはできないかと考えました。イチョウの向こうに、御堂筋のビルの景観が透けて見えるようなもの。道路は子どもの目線でも見えるもの。それが良いのではないか。要綱を最初に読んだときは、イチョウのイルミネーションは4.5メートル以上とあったのですが、それでは子どもの目線では見えないと思ってしまったんです。実はそれは私の読み間違いで、実際は2.5メートル以上だったんですけど。

 ともかく、最初から「子どもの目線」が気になっていていました。

 イチョウならではのデザインとしては「光の列柱」をテーマにあげました。つまり、幹だけにイルミネーションをするというのは多分みんな見たことないだろうと思ったんです。イチョウはアジアの樹木なので、おそらく世界で初めての試みです。

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三位一体のデザイン
 
 竣工後に撮った写真ですが、最初に「幹が天に向かって伸びていく」ような光の列柱を作ろうと決心したのです。コンペの作業途中で分かったのですが、351本に普通のイルミネーションをしようとすると2〜3本に1本しかできないという話になって、間引いてくださいと言われたのです。が、そんなのイヤだと思って、全部に付けるなら1本にいくつ必要かを計算しました。普通のイルミネーションをするなら1本に付き4〜6千球が必要です。でも幹だけなら1千球でいいんです。そういった事情も途中で見えてきて、幹だけの装飾を選択しました。しかも幹だけなら枝を傷つけることもありません。また、球数を削減していますから、施工日数も大幅に短縮することができるんです。


■御堂筋全体をどうするか

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ファサード演出
 
 次は、列柱と列柱のすき間から見える御堂筋のビルをどうするかです。御堂筋は特徴のあるビルがたくさんあるところですから、そうしたビルのファサード演出をしようと思いました
 御堂筋は、1人1人のオーナーが歴史の中で作り上げてきた大きなビジネス街。六本木ヒルズのように森ビルという1人のオーナーが作り上げた街ではなく、一つ一つのビルがすべて違うオーナーなんです。ですから、ビルもそれが作られた時代ごとに違うデザインがあったりする。まるで建築の博物館のような場所でもあるんですね。ですから、そんなファサードがイチョウのバックに見えてきたら御堂筋ならではの景観が作れるのではと考えたわけです。

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植栽にもイルミ
 
 道路には、植栽にもイルミネーションを入れました。緑地で南北をつなぎ、子どもの目線でも見えるようにと考えたんです。

 こうした三位一体の案が、私の最終的な結論としてのコンセプトでした。コンペに勝ちに行くにはあまりにも本気で御堂筋景観のことを考えてしまった、ダメモト案でしたが、なぜか評価されまして見事一等賞を獲得し、いよいよ実施ということになりました。

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