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復興地区カルテは、 地域ごとに異なる再建実態について、 復興の各段階での被災地の具体的な状況を把握し、 地区の実態を診察しながら、 必要な対応や計画を進めていくことを目的に進められている調査である。
震災後、 被災地では大学グループを中心に、 いくつかの地区で継続的な再建実態調査が進められてきた。 そのグループのゆるやかなネットワークとして、 震災復興・実態調査ネットワークができ、 情報交流と意見交換のための交流会が続けられてきた。 兵庫県によって設置された震災復興調査研究委員会では、 地区レベルの再建実態調査にもとづく復興地区カルテの考え方の必要性を認め、 復興の記録をつづる復興誌の発刊とともに、 10年間にわたって、 「街の復興カルテ」の継続的作成に取り組むことを決めた。 (平成9年度版が、 兵庫県・21世紀ひょうご創造協会より発刊されている)。
今回の震災では被害がきわめて広域にわたり、 復興の全体像をつかむためには、 確認申請件数や住宅着工統計など統計資料の数字によるしかない。 しかし、 地域ごとに再建の実態は異なり、 統計資料からは、 地域ごとに必要な具体的なまちづくりへの対応が見えてこない。 いくつかの地区を選び、 そこでの復興状況を詳細に調査することから、 リアリティのある復興状況をとらえることができると考えられた。
〈街の復興カルテ〉では、 被災地の7地区(長田/須磨、 三宮周辺、 灘、 東灘、 芦屋、 西宮、 淡路)と仮設住宅地区3地区を設定し、 調査している。 その目的は、 (1)復興状況を詳細に調査・分析し、 復興状況を把握し、 (2)分析結果から問題点を考察し、 (3)その問題点から、 復興の新たな課題を発見することである(きんもくせい第47号:大阪大学・鳴海)。 このような地区カルテはまた、 同時に復興の貴重な記録ともなる。
復興地区カルテでは、 再建実態について震災前の住宅地図と地形図(1/2500)をベースに敷地単位の被害と再建状況(更地、 仮設、 再建)の調査を行っている。 各地区ごとにまちの特性が異なるため、 調査テーマの設定は年度ごとに見直すことを前提に、 地区の担当者にゆだねられている。
復興カルテの意味は、 広域的な被災地の再建、 復興の状況を統計データとはちがって、 リアリティのある実態として地区レベルでとらえ、 それらをならべることで被災地の全体像を少しでもうかびあがらせ、 その分析を通し、 その時々の復興課題を先見的にとらえていくことにある。
震災後、 1年半以上を経過した、 平成9年3月のカルテでは、 再建の進捗の程度とともに、 点在して残る可能性のある空地、 再建停滞地区の課題、 長屋の消滅による低家賃住宅の供給がないこと、 プレハブ住宅による再建がもたらした景観・まちなみの大きな変化など、 次のまちづくりを考える課題が指摘されている。
20 復興地区カルテ
〈事例19)〉
芦屋市南宮町における復興状況の推移(1995年6月)
芦屋市南宮町における復興状況の推移(1996年2月)
芦屋市南宮町における復興状況の推移(1996年7月)
芦屋市南宮町における復興状況の推移(1997年7月)
芦屋市南宮町における復興状況の推移(1998年7月)
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