ブラックウォール 


(「京都市青少年科学センター報告H11」掲載  ある教科書にこの製作方法が掲載される予定)

 偏光板を利用した「すり抜けることができる黒壁」です。仕組みは簡単で、筒の上部と下部で使用する偏光板の向きを90度変えてやります。そうすれば2枚の偏光板が重なって見えるところ(つまり筒の中央部)は黒く見えますので、本来は無いのに「いかにも黒壁があるように見える」わけです。

 偏光板の単純利用と言えばそれまでで、誰がオリジナルか私は知りません。(ご存じの方はぜひご連絡下さい。)私がこの装置を知ったのはTV番組「投稿・特ホウ王国2」で千葉の先生が紹介していたのが最初です。ただしそれ以前からあったらしいですが・・・仙台市科学館には子供が通れるほどの大きさのものもありました。 

 今回、私が開発したのは、これを幼稚園児でも簡単・確実に作れる方法です。難しい工作が全くなく、安価で指導者の準備もほとんど必要ありません。連絡があっただけでも、すでに九州から東北まで全国で数名の方が私の方法での工作を実施して下さっています。(他の方も連絡していただけると嬉しいです・・・)

 
(写真左)
「ブラックウォール(中)」
アクリル板利用
・寸法
50mm×50mm×200mm
 
 
(写真右)
「ブラックウォール(大)」
アクリル板利用
・寸法150mm×150mm×400mm

 どちらも筒の中央部に「黒壁」が見えます。(もちろん本当はありません。単にあるように見えるだけです。)

写真のテニスボールは大きさ比較のためで、特に意味はありません。

 写真右のもので約5000円分の偏光板を使用しています。

 上の写真のような角柱や箱形、ガラス管やアクリルパイプに偏光板を封入した円柱形はよく見かけます。演示用に作られた先生も多いのではないでしょうか。これを演示された方にはおわかりと思いますが、この装置は大変生徒に受けます。高校生だけでなく幼稚園児・小中学生にも受けます。私は「科学実験教室」をボランティアで数多くやっていますが、参加者全員にこれを作らせて、おみやげにできないものかと考えたわけです。

 そこで幼稚園児でも作れて材料費もあまりかからない「超簡単ブラックウォール」の開発に取りかかりました。まず、「H10青少年のための科学の祭典全国大会」の会場で、1枚200円の偏光板を20枚まとめ買いし、試行錯誤を重ねました。(この偏光板は140円で手に入ることが判明。たいへん悔しい思いをしました。(`ヘ")

 さらに「平成10年度後期京都市青少年科学センター学習(中等物理)」の内容が偏光板を用いたものになり、私の試行錯誤(研究とまで言える代物ではないです)は「本業」と結びついてしまったのです。

 そこでたどり着いた結論は、以下の通りです。

 
 @アクリル材等の利用は経費、工作の手間から無理。
 A厚紙等の利用はすでにあり、工作も精度が要求され、準備も大変。さらに窓が2面しかとれない。
   (4面取ると紙の性質上弱い)
 Bセロテープのように内側に貼り付けると偏光板の働きに影響を与えるものは使用できない。
 C角柱の工作より円柱の方が工作は楽である。

 このような試行錯誤の中、本の表紙などを保護する透明粘着シートの「ブッカー」は偏光に影響を与えない素材であることを発見しました。仕上がりのきれいさ、強度、耐久性、偏光板の貼り直しがきく、安価、部品点数が極少、などの利点も多く、簡単工作には最適だと結論しました。

 では、作り方を紹介します。ここにあげる方法は、H10.10.11に「寝屋川市三井4丁目子供会科学実験教室」において、幼稚園児から小学生まで、説明込みで10分以内で全員無理なく作れることを確かめています。なお、前述の通り、京都市青少年科学センター(平成10年度後期実験室学習・中等物理)において、この方法での製作を実施しています。

(写真左)の角柱もできますが、

(写真右)の円柱の方がずっと簡単にできます。この程度の大きさでも子どもの小指は通ります。

◇材料

ピッタリ重ねると暗くなる組み合わせの縦長の偏光板1組とそれよりやや長いブッカーを1枚用意します。たったこれだけです。すべてこちらで準備します。

 ブラックウォールの原理を利用したものは色々考えられます。

 私がTVで見た千葉の先生は、水槽をそのままブラックウォールにして、金魚を泳がせていました。金魚は壁をすり抜け、行ったり来たりしていました。(大変面白かった!)

 私は「見えにくい糸」を発泡スチロール球に付けて、ちょうど壁の寸前で止まるように長さを調整してから筒に放り込み、いかにも黒壁で止まったように見せます。

 その後糸を切ると、当然、壁をすり抜けて落下しますので、子どもはビックリします。

    
 

◇作り方

2枚の偏光板を図のようにぴったりブッカーに貼ります。上部は少し余分を持たせます。

これを偏光板が内側になるように巻いていきます。偏光板の端はやや重ねます。そして余分のブッカーで止めます。

  
 

あっという間に完成です。筒の両端からはみ出たブッカーははさみで切りそろえます。はさみがないときは、はじめからブッカーの幅と偏光板2枚の幅を等しくカットしておきます。

私が実際に科学センターと実験教室で採用している寸法は次の通りです。

・偏光板15mm×60mm (重なると暗くなるもの2枚)

・ブッカー30mm×75mm (はさみがあれば幅はやや広くてもあとで切りそろえれば良い)

・巻いたときの偏光板の重なり 約7mm

 最近の自作演示器具。円筒中の黒壁をボールが行ったり来たりします。

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海老崎 功 ebisan@mbox.kyoto-inet.or.jp