コピアート関連実験 


 (讀賣新聞全国紙「ワンダーランド(2001.6.23)」に執筆,某指導資料に執筆)

 これまでの「ジアゾ感光紙」に代わる,富士フイルム製「コピアート」を使った実験です。コピアートの感光特性なども調査研究し,この紙を使った実験手法などを考えてみました。そしてやや径が大きな(レンズ直径20mm以上)単レンズカメラには最適なものであること,ピンホールカメラへの使用は難しいことなどをまとめました。コピアート紙の存在については,後藤富治先生(自由の森学園)に教えていただきました。m(__)m 

※ちなみに後藤先生は沖杉誠一先生(埼玉県)に教えていただいた,ということです。私が調査したところ,コピアートペーパーの単レンズカメラへの使用は,沖杉先生が最も早いと思います。全国的なもので最も早い文献は上のワンダーランドになりますが,同年夏季の「科学の祭典全国大会冊子(沖杉先生執筆)」は原稿締め切りが4月でしたので,そちらの方が執筆時期は早いです。私の知る限り,この全国大会冊子が「単レンズカメラへのコピアート使用」に関して最も早く書かれた文献だと思います。

※コピアートではなく,既に製造中止となったリコーの「ブルネオペーパーF」での写真撮影などを小野操子さん(長岡京市「科学とあそびの会」)が「現代と保育46:1998年11月号」)に「オリジナル『タカミ式カメラ』で撮影会」というタイトルでふれておられます。開発は高見真千子さんで,この乾式ジアゾ紙の登場にいち早く着目し,リコーに製品内容を問い合わせておられます。その後,湿式ジアゾ紙からこちらに変更して撮影会を行っています。これが乾式ジアゾ利用の最初の文献ではないかと思われます。その後,中桐優さんが「楽しい授業99年8月号(仮説社)」にて紹介し,全国的に広まっていったものと思われます。

 このコピアートはジアゾ感光紙と違って,現像液が不必要です。その代わりに熱で現像・定着します。実験後に加熱すれば終わりですから乾燥の手間が要りません。実験時の必要事項などをすぐに鉛筆等でコピアート紙にメモ書きすることもできます。

 加熱にはアイロンが推奨されていますが,私は実験教室などでは「ラミネートマシン」を使用しています。露光したコピアートを次々にこれに通すとできあがりです。アイロンよりもラミネートマシンの方が安全かつムラもなく,絶対にお奨めです。なお,ドライヤーの加熱ではうまくいきません。単純に「高温」が必要と言うだけでなく,それなりの「熱量」が現像のためには必要のようです。やけどには十分注意しましょう。


1.実験方法など

(1)現像・定着手法  コピアートの取扱説明書には簡単な現像・定着の方法としてアイロンを用いるとあるが,火傷の危険があるので代わりにラミネーターを用いる方法を提案・推奨する。同様にドライヤーなどの加熱も試してみたが,熱容量の関係でほとんど現像できないこともわかった。

(2)コピアートを用いたコピー実験

@OHPシートに油性黒ペンで好みの絵や文字を書き,それをコピアートに重ねて感光させる。感光時間を長く取る場合は像がずれないようにセロハンテープなどで固定する。

A感光時間は光量等にもよるが,室内実験の場合,蛍光灯(直管40W2連型,距離2m)の場合とふつうのOHP投影装置上(シートを置くガラスの上)での感光時間と現像後の像の様子を図1,図2に示す。

B感光時間は各自,時計で管理させ,感光したものから次々にラミネーターに通す。できあがった作品に感光時間や光の種類などを記入させることもできる。

図1 蛍光灯での感光 図2 OHP投影装置を用いた感光

(3)単レンズカメラ実験

@単レンズカメラを製作する。牛乳パックなどを用いた例が有名であり,中学校の理科教科書1)等にも紹介されている。この他にもたくさんの製作方法があるが,すでに多くの教科書や実験紹介本などに掲載されているので詳細は割愛する。

Aスクリーンにきれいに像が写る位置などを記録しておき,コピアートをスクリーンに貼り付け,再び,先ほど記録した位置にセットする。

B明るい室外の風景を撮影する場合は20分程度の感光で青焼き写真が撮影できる。室内の物を撮影する場合は蛍光灯や白熱電球の照明では1時間以上の露光でも全く感光しない。500Wのハロゲンランプでの照明でもうまくいかなかった。これはコピアートがそれらの照明より短波長側の光で感光するためのようである。この実験に関しては太陽光に勝る照明はないと言える。

C感光したものをラミネーターに通す。できた写真に感光時間や天気などを記入させておくこともできる。 なお,同条件で湿式ジアゾ感光紙で撮影し,現像液を用いて現像,乾燥定着させたものと,コピアートで撮影したものを比較のために図3,図4に記す。どちらも定着1週間後の画像である。湿式ジアゾ感光紙では像のにじみが起こり,色落ちなども目立つのがわかる。

図3 湿式ジアゾ感光紙で撮影した写真 図4 コピアートで撮影した写真

2.備考

 この研究成果の全部または一部について,

・讀賣新聞全国紙「ワンダーランド(2001.6.23)」に掲載された。

・雑誌「プレジデント(プレジデント社2001.9.3)」に掲載された。

・フジテレビ「晴れたらイイねッ!(2001.10.27)」で全国放映され,番組の公式ホームページにも掲載された。

 また,コピアートや単レンズカメラ実験が広まるにつれ,材料が身近にないという情報が私宛に多数寄せられるようになった。そこで,ある理科教材会社と相談した結果,セットや材料が平成14年度からカタログに載り,全国どこでも材料が安定して入手できるようになった。

・文献1) 戸田盛和他,中学校理科1分野上,大日本図書,2001


以下,私がやっている実験手法は以下の通りです。

1.ジアゾコピー(青焼き)について説明・・・今の子どもたちはほとんど知りませんね・・・・(^^;

2.OHPシートに油性黒マジックペンで自由に絵を描かせ,ジアゾ感光紙に載せてセロハンテープで止める。

3.それを強いライトか太陽直射に数分間当て,OHPシートをはずし,ジアゾ現像液に浸す。

4.乾燥させる。ジアゾコピーの原理について解説。

5.同様な実験をコピアートで行い,ラミネートマシンに通して現像する。コピアートの原理について説明。

6.単レンズカメラを作らせて,どんどん撮影させる。(新聞記事参照)

 ※ピンホールカメラは光量不足のため,よほど条件がよいときでも長時間感光が必要です。(ほぼ絶望的です。印画紙をお薦めします)

 

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