ペットボトルロケット簡易発射装置 


 ペットボトルロケット簡易発射装置・・・論文形式の文献はこちら(pdf 77kb)
 
ペットボトルを使用した水ロケットの簡易発射台です。市販の発射台は高価であるので、授業等ではゴム栓を利用した自作の発射装置が多く見られます。しかし、それらはロケットにゴム栓を強くねじ込まないと飛距離が出にくいので、力が弱い女子などには不向きでした。本発射装置はそれらの欠点をカバーした物です。
 
 ペットボトルを利用した水ロケットの実験は、小・中・高等学校の区別なく、様々な場面で行われるようになりました。理科の授業から離れて、単に飛距離を競うものもあれば、作用・反作用の実験として詳しく実験してみたり、果ては空気抵抗から飛行に関する理論まで展開する授業などの例も報告されています。
 これらの授業で指導者を悩ますのは、広大な発射場所の確保と発射台の製作であることが多いようです。場所はともかく、ペットボトルロケット本体の方が割と身近な部品で簡単に製作可能であるのに対して、発射台は仕方なく市販品を購入したと言う声をよく聞きました。
 そこでゴム栓を利用した簡易発射台を製作しました。ゴム栓利用の発射台は以前からありましたが、どれもロケットにゴム栓を強く差し込むほど圧力に耐えるので距離が出やすいという特徴があります。言い換えれば、差し込む力が弱ければ距離が出ないということで、力が弱い女子などにはどうしてもハンディがあり不評でした。
 本発射装置は、差し込む力の強弱による飛距離の差が出にくいように、「体重を掛けて押し込む」ことができるように工夫した物です。また、発射装置への取り付け時の水漏れも一切なくなるという思わぬ効果もありました。
 
「平成9年度 青少年のための科学の祭典和歌山大会冊子」記載
「京都市青少年科学センター30周年記念ハンドブック」 記載予定(H11年発行予定)  
 装置全景
 
 足踏みポンプ部(写真左)とロケット装着部(写真右)に分かれます。まずロケットに水を入れ、上から写真右のロケット装着部のゴム栓を軽く押し込みます。その後ロケットと発射装置をひっくり返せば水が一切こぼれることなく、次(右)の写真のような状態になります。
 
 ちなみにこの撮影で使っているロケットは手づくりの「ミニドリルタイプ」です。羽根の取り付けなど独自の工夫をしています。詳しくはペットボトルロケットのページで紹介します。
 この状態でロケットを両手で持ち、しっかり体重を掛けてロケットをゴム栓に押し込みます。
 ロケット装着部を鉄製スタンドの角度つき棒に差し込んで準備完了です。
◇準備
 
1.空気入れ
 普通の自転車用の空気入れで構いません。高圧タンク付きのものはさらにポンピングしやすいです。試作品は足踏み式・高圧タンク付きの空気入れに、空気入れがポンピング中に転倒しないように転倒防止用の底板を取りつけました。さらに滑り止めのゴムマットも貼り付けています。
 これにより、力が弱い児童・生徒でも楽にポンピングができるようになりました。なお、市販の発射装置では使用厳禁である電動空気入れも、ゴム栓タイプの発射装置には使用可能ですが、空気の圧縮にかなり力が必要なことを学ばせるのも大切だと思いますのであまりお奨めはできません。
 
2.ゴム栓
 水ロケット用の炭酸系ペットボトル(非炭酸系は破裂の危険が多く使用不可)の口は、外径は同じであるが内径は2種類ありますので、用意するゴム栓も2種類必要です。ロケット毎にゴム栓を付け替えても良いですが、空気入れが2本用意できるならば、初めから2タイプ用意する方が手間が掛からず便利です。どちらもボール用の空気針を差し込むみますが、ゴム栓の上部を約1cmほど切り取って、空気針の先がゴム栓の先に出やすいようにしておきます。
 
3.ロケット押し込み用補助具
 廃棄されるリレー用のプラスチック製カラーバトンなどを利用します。長さは適当です。筒の途中に空気入れの管が通るだけの穴を、ドリルやヤスリ、ハンダこての熱を利用するなどして開けます。そこから空気入れの管を入れ、筒の先端に出し、空気針を取り付け、ゴム栓に差し込みます。その後、ゴム栓は筒の先端に取りつけます。
筒の底はそのままでも良いですが、転倒や滑り防止のために底板を取りつけても良いです。
 
4.発射スタンド
 理科実験用の鉄製スタンドで構いません。ロケット押し込み用補助具の筒の下部を差し込めるような棒を、発射角(約60度が良く飛ぶ)をつけてスタンドに取りつけておきます。
 
◇実験
 適量の水を入れたペットボトルロケットに補助具ごとゴム栓を上から軽く差し込みます。その後、ロケットと補助具を逆さまにして地面に置きます。はじめから発射台にゴム栓が固定されている場合、取り付けの時にボトルの口から水が漏れますが、この装置ではそれが一切ありません。地面に置いたらロケット本体をしっかり持って、体重を掛けて、下向きにロケット本体をゴム栓に押し込みます。押し込みが完了したら、補助具の下端を角度付き棒に差し込んで、空気入れでポンピングします。市販の専用発射台と違って、発射のタイミングがわからないので、ポンピング中に発射台前方には絶対に立ち入らないようにして下さい。
 
◇学習での利用
 主に学校現場の先生方に利用していただきたいという観点から、平成8年度「青少年のための科学の祭典・京都大会」において展示をしました。また、平成9年度「青少年のための科学の祭典・和歌山大会(全国大会)」では展示の他、祭典の冊子にも記載し、ブースで製作方法説明などを行ないました。学校での利用の際は、各先生方のさらなる工夫が加わることを期待したいと思います。
 
◇備考
 ゴム栓利用の発射台は、簡単ですぐに作製できますが、一度でもそれを使ったことがある人なら、差し込みをいかにして強くするかが大切であるかがわかると思います。「ロケットの差し込み・発射方法に不公平をなくす」というコンセプトで作られ、付加価値として「取り付け時の水漏れなし」などが加わった本発射装置は海老崎功のオリジナルです。
 
(写真上)
 ポンプ部の裏には滑り止めのゴムマット
が貼り付けてあります。
 ロケット装着部の裏は、鉄製スタンドの
角度つき棒に差し込めるように、穴が開い
ています。
 
(写真右)
 パイプの途中から空気ポンプの管を出す
ことによって、体重を掛けて押し込めるよ
うになりました。ゴム栓の上から、ボール
用の空気入れの先が顔を出しています。
 
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海老崎 功 ebisan@mbox.kyoto-inet.or.jp