- (以下の実験は簡単で面白いので、科学系の新聞や雑誌などいくつかに寄稿を予定しています。すでに日本TV「伊東家の食卓」からの問い合わせに対しこの内容を伝えたのをはじめ、「科学技術ジャーナル1999.8月号」にも記載しています。なお「弾むシャボン玉」は昔からあるネタですので授業や実験教室で自由に使って下さい。ただし、このページに書いてある方法を本や冊子等に掲載するときに限り、必ず事前にご連絡下さい。さい。「京都市青少年科学センターHP」掲載。「親子で楽しむマジカル科学101(2000.8)」
「おもしろ実験・ものづくり事典(2002.2)」 「サイエンスEネットの親子でできる科学実験工作(2000.7)」
「RikaTan Rikaの探検4月創刊号(2007.3)」
(他3誌ほど)
掲載。
- 「軍手の上や洋服の上でポンポン弾ませることができるシャボン玉」です。誰でもできる簡単な作り方です。特に今回は他の方の研究と異なり「膨らませ方」にポイントをおいています。特殊な液を使い、マジックのように操るようなすごいことを目指してはいませんので、そういうのを期待している方には期待外れかも知れません。
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- 誰にでもすぐにできて、子どもたちがポンポンと弾ませて遊ぶことだけを考えています。
栗間太澄(Mr.マリック)さんもTVでやっていましたが、マジックショップなどでも「よく弾む秘密のシャボン液」が売っています。身近なところでは北野貴久先生(@神戸SR)や田中玄伯先生(@滋賀SR)の秘伝・自作シャボン液による実験ショーなど、すでに多くの方が実践され、取り組んでおられます。また、多くの理科の先生方も研究されており、「材料」や「配合」、さらには「水質」「水温」まで言及しているものもあります。
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- その中で私が疑問に思っていたのは、「同じ配合でも弾むときと弾まないときがある」「水が違うとダメだ」「最適の配合割合があって、それから外れると弾まない」ということで、「ほんまかいな?」と思っていました。そして、約1ヶ月の研究期間(短い!)を経て、ある程度の結論を得ました。配合割合や水についてはある程度の影響はあると思いますが、「弾む、弾まない」を決定づける最大のものは材料や配合ではないことがわかりました。
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- たどり着いた結論は、以下の通りです。
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- @弾むものは、シャボンの膜厚がかなり厚い。(干渉縞が見られない程度)
- Aどのようなシャボン液でも膜厚が厚くできれば、ある程度弾ませることは可能。
- B液だけでなく、吹き方や吹くための道具によっても膜厚の厚いものを作ることができる。
- C材料の配合によっては「厚く、かつ大きく」することが可能。
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- つまり、「大きさ」を目指さずに「軍手や衣服の上で弾む」ことだけであれば、かなり簡単にできるのです。
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- (写真左)
- シャボン玉特有のきれいな干渉縞が見えない「膜厚の厚いシャボン玉」。これがよく弾む。
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- (写真右)細いストローならこのように裂く。シャボン液をたっぷり浸けて、膜厚の厚いシャボン玉を作るため。最近はこれより優れた道具を使っています。
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では、実際に弾むシャボン玉を作る方法です。特にシャボン液にこだわらない方法をはじめに紹介します。
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- @弾ませるための軍手や衣服(シャボン液で汚れてもすぐに洗えるもの)、ハンカチ、タオルなどはなるべく新しいものか、洗濯した清潔なものを用意します。また、よく乾燥しているものを選びます。
- →汚れや水分、激しいしわなどは、シャボン膜の表面張力を極端に弱くし、すぐに破れてしまいます。また、しばらく弾ませて濡れてきたら、新しいものと変えましょう。なお、軍手は硬めの物と柔らかめの物の2種ありますが、柔らかめのものの方が格段に弾みます。衣服は素材によりよく弾む物がありますので、ぜひ探してみて下さい。白衣はある程度弾みますが、水を吸いやすいので何度も弾ませるのには不向きです。
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- Aシャボン液は、普通の液体台所用洗剤+水でOKです。ストローで吹いて普通にシャボン玉ができれば良いのです。目安としては、界面活性剤が40%のものなら約5倍希釈、20%のものなら3倍希釈程度です。
- →とりあえず大きさにこだわらないで「弾ませる」ことだけを優先しています。
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- B吹くためのストローは太い方が良いですが、細いストローなら先を4カ所以上切って、ラッパ状に開きます。
- →膜厚が厚いものを作るためには、たくさんのシャボン液をつける必要があるためです。
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- C普通に横向きに吹いてシャボン玉を作ってはダメです。しっかりシャボン液をつけた直後に、下向きにゆっくり膨らませます。
- →ストローに付いたシャボン液が重力によりじわじわ落ちてくるので、それに合わせて吹くと、シャボン玉は重く、膜厚の厚いものができます。
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- D下向きに吹いたシャボン玉は膜厚が厚く、重たいのであまり大きくならず、すぐに落ちてきます。これを軍手などで受け止めます。大きくならず、しかも膜厚が厚いので、漂うようにはなりません。しかしよく弾みます。
- →目安としてはシャボン玉特有のきれいな干渉縞が見えたらダメです。そうなる前の干渉縞が見えないうちにストローから離れるようにします。直径6cm程度のものがよく弾み、扱いやすいです。
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- これで弾まないときは、洗剤と水の割合を調整するか、軍手を新品に変えてみて下さい。私の実験では、かなり洗剤と水の割合を変えても20回〜100回以上弾ませることができました。しかも軍手ではじいてきれいなガラス窓にぶつけて「テニスの壁打ち」のようなことも何度もできました。
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次に、大きくて、何度も弾ませることができるシャボン玉を作る方法です。これは「究極の弾むシャボン玉」ですが、今までは市販品や文献を見てもわかるとおり「秘密のシャボン液があれば誰でもできる」と思われがちでした。その液というのは結局「厚みを保った状態で膨らませることができるもの」つまり、粘性および保水性に頼ったものでした。そしてそういう液でシャボン玉を作れば、普通に横向けに吹いても、かなり膜厚の厚いものができるのです。したがってそれにプラスして、上に書いたような工夫を加えると、割と適当に作ったシャボン液でも、かなり大きく、強力な弾むシャボン玉ができるのです。厳密に配合をしなくても簡単にできる「よく弾むシャボン玉の液」の作り方は、以下のような方法です。
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- @表面張力を弱める界面活性剤(液体洗剤)は少な目の比率にします。
- →私がよく使うのは、界面活性剤40%のもので、この比率を「1」とします。
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- AグリセリンやPVA(洗濯糊)などの粘性や保水性を高めるものは多めに入れます。PVAは簡単に言えば水に溶けるプラスチックで,膜も丈夫になります。
- →手軽に手に入るCOOPの洗濯糊だけで構いません。比率は「3〜7」程度、かなりアバウトです。
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- B水はかなりアバウトで構いませんが、上の@Aの合計に対して4〜7倍程度がお奨めです。
- →普通の水道水で構いません。比率は@Aの合計と同量の水(2倍希釈)から10倍希釈程度以上までOKです。シャボン玉を大きくするためには、泡を立てないように混ぜたり、PVAが溶けやすいようにお湯を用いる方法がとられますが、今回の目的は大きさだけではありません。ストローに付いたシャボン液でできる大きさで膜厚が厚いものですからその大きさは限られます。そんなに大きいものはできませんから、混ぜ方にそんなにこだわることはありません。丁寧にむら無く混合したらそれでOKです。
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- Cストローは太めのものをラッパ状に裂いて用います。さらに究極の方法は、もう1本細めのストローを用意し、それにシャボン液を入れて逆の端を指でふさいで液が落ちないようにします。そして、ラッパの方で下向きに吹くのに合わせて細いストローの指を緩めて、ラッパのストローにじわじわ液が流れるようにします。これによりシャボン液が膨らむのに合わせて補給され、大きくかつ膜厚の厚いシャボン玉ができます。最近は自作の2重ストローを使って、シャボン液をたくさん貯められるようにしていますが、まだまだ工夫の余地があります。
- →あまり大きくなくて良ければ、この液では普通に横向きに吹いても構いません。しかし干渉縞が見えるまで大き
- く膨らませてはダメです。
- Dこれは、粘性があり、しかも大きくて浮力があるのでゆっくりと弾ませることができます。それだけでなく、手刀で2つに分裂させたり、白衣の袖を転がすこともできます。
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(写真左) 先割れ2重ストロー。外側のストローの長さは約4cmです。
今回独自に工夫してみました。普通の先割れストローの3倍以上のシャボン液を貯めることができます。これを下向きに、シャボン液が落下するスピードに合わせて膨らませると、分厚い膜のシャボン玉ができます。台所用合成洗剤と水だけのシャボン液でも簡単にかなりの回数、弾ませることができます。
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市販のシャボン液に付属の吹き具。先端はたっぷりシャボン液が付く工夫がしてあります。
シャボン液の誤飲を防ぐための穴が開けてあります。この安全対策は必ず施しましょう。
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先割れ2重ストローにもはさみやパンチで穴を開けます。 これらは工夫の一例です。「2重」ではなく「3重」や「4重」にしてみたり,もっと大きな穴を開けて誤飲対策をさらに重視する例も見られるようになりました。
保湿成分として入手しやすいヒアルロン酸を添加する工夫も「吉田のりまきさん@東京」が2007年に発表されました。安全性も高く,乾燥時などは私も「水,洗剤,ヒアルロン酸(少し)」で実施することが多くなりました。効果は・・・goodです!
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以上、これだけまとめるのに、ちょうど1ヶ月掛かりました。そのほとんどが他の文献やHPにある作り方の検証・追試でした。それらの文献に対する評価はちょっと厳しいですが「液の作り方だけにしか触れていないものは不親切。研究成果としているものは研究不足!」ということです。シャボン玉を膨らませる時の気温や湿度に関する注意は書いてあるのに(ただし、だからどうしろとは書いていない不完全なものがほとんど)、膨らませる器具の方に注意を払わず、しかも弾ませるための膜厚や表面張力に触れていないものがほとんどでした。やはり、弾むシャボン玉について記述するときには「シャボン液」「吹く道具」「膨らませ方・膜厚」「シャボン玉を受ける軍手や衣服」のすべてについて触れていないと失格だと感じました。と、偉そうに言っている私も何か抜けているかも知れませんので、もっと詳しい方がいらっしゃいましたら、ぜひご教授をお願いします。m(_
_)m
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- また、みなさんも「オリジナルシャボン液」や「こうやったらよく弾む究極の方法」にチャレンジしてみて下さい。そして、良い方法が見つかりましたらぜひ教えて下さい。
- なお、この内容をまとめてから、北野貴久先生(@神戸)から情報を頂きました。(H11.5.14)
- それによるとプロのマジシャンに依頼され、もう20年以上もの間、いろいろ操れるシャボン玉を研究されている方がいるそうです。液の作り方はもちろん秘密でマジックショップで3000円もするそうです。膨らませ方はやはり下向きにして自然にはずれるまで吹かずに、振りほどいてシャボン玉をストローからはずす(つまり大きくしないこと)と言っておられるようです。この部分は私がまとめたこととほとんど一致しています。私の場合、粘性を高めることよりも、もっと簡単に表面張力をあまり弱くしないことに重点をおきましたので、シャボン玉は大きくなる前にはずれてしまいます。また、液については20年も研究されていますので、この市販品が現在の「究極の弾むシャボン液」と言えるかも知れません。しかし、私が目指したのは初めに書いたとおり、「誰でもいつでもすぐにできる方法」ですので、液にはあまりこだわっていません。(こだわると20年かかる??)
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- 実は私もこの方同様、いろいろなものにとことんこだわろうと考えた時があったのですが、19世紀後半にC.V.ボイズ(英国)が行った研究と実験を文献で知り、「これには今後、どんな研究者も勝てない・・・」と感じたので、「もっと身近な方法を・・・」という内容に変わってきたのです。
海老崎 功 ebisan@mbox.kyoto-inet.or.jp