■はじめに
ホロスペックス関連の歴史を教えて欲しいという問い合わせが少数ですが毎年ありますので,以下に詳しくまとめておきます。
開発の経過やオリジナリティ等を大切にして頂けたら嬉しいです。
■開発史等
1997年(平成9年)冬頃,アメリカ帰りの知人から「ディズニーランドのアトラクションで面白い物を見つけた」と,メガネタイプのホロスペックスを見せてもらいました。「これはすぐに日本にも入ってきて,爆発的に広まる!」と直感し,その時を待ちました。
1998年(平成10年)に日本発売が開始され同年3月に入手。原理や構造を顕微鏡やレーザー光を使って調べ,工作手法等を工夫し,4月に工作手法や展開方法をまとめました。さらに名刺に貼り込む方法も考え,5月の実験教室で日本初の「ミニホロスペックス工作,実験」を行い,関係者に私の「ホロスペックス入り名刺」を配布しました。
その手法は以下の通りです。
@メガネのシート部分を6mm角に切断(両眼で48枚採取可)
Aシール(丸型や角型)の中央に一穴パンチで6mmの穴を開ける
※「綴じ穴シール(ダイソー)」の販売開始は2003年(平成15年)であり,それ以降の工作には「綴じ穴シール」を使用しています
B台紙や名刺に6mmの穴を開け,シールに貼ったミニホロスペックスを貼る(完成)
C点光源として豆球やクリスマスツリー電飾を見ること,および,新しい使用方法として「X線スコープ(レントゲン玩具)」の代用となることも発表
D同年7月の「青少年のための科学の祭典・全国大会(東京・科学技術館)」で全国の関係者に「ホロスペックス入り名刺」を配りまくったため,その後,爆発的に全国にこの手法(ミニホロスペックス工作,ホロスペックス入り名刺)が広まりました。
■元シート入手の経過
5月の実験教室の後,「メガネを切断する手間」と「シート以外がゴミになる」ことが気になり,ホロスペックスの日本代理店である「スペースグラフィックス社(以下S社)」と直接交渉し,加工前のシートを売ってくれるよう頼みました。
(結果→) 即,断られる・・
(理由→) 米国本社とのライセンス契約で日本ではメガネその他の加工品しか販売許可が出ていない
私,あきらめません。粘り強く交渉したら,営業担当の方から連絡が入り,
「何に使うか」「どの程度必要か」
を聞かれました。そして「おもに子ども向けの実験教室」「個人の名刺作成」だけと伝えました。
その結果,以下の条件を守ることで売ってくれるということになりました。
【条件】結構厳しい・・
@入手経路は(しばらく)明かさない・・1999年(H11年)末に元シートが一部地域販売,2001年(H13年)に全国販売となりもう時効ですw
※転売厳禁,以下の「B」を守れる友人等に少数を無料で譲るのはOKを取り付けました
※「S社には内緒で」ということでしたが,それが「日本代理店」のことか「米国本社」のことかは不明ですが,おそらく後者かと思われます。
A10万円以上一括購入すること。(50mm角1枚40円,つまり2500枚購入)
B実験教室関係や個人の名刺以外では使わない。当然,成果物(名刺も含め)は販売厳禁
C返品不可
一番憂慮したのがCです。
「本社も含め耐用年数テストをしていない。大量買いしてもらっても,シートの模様が揮発して消えることが考えられる。その際も返品等はしない」という条件でした。
その際,用いた印刷手法から考えて「高温保管は避けること」を教えてもらいました。
購入後,しばらくの間,家の冷蔵庫の一段すべてにホロスペックスの元シートが詰まっていました。
1998年7月の「科学の祭典全国大会」で大量配布できたのはこの元シート購入が大きいです。
■元シート入手,その後
なお,この元シート,さらに(S社の営業担当の方に)5万円分追加注文するくらい,まさに飛ぶように消費していきました。懸念された印刷面揮発も保管が良かったのか(20年後でも)ほとんどありません。
ちなみにS社では,この元シートの需要がありそうだと気づき,私との交渉の1年半後(1999年末,平成11年)に一部地域(の東急ハンズ)で,3年後(2001年,平成13年)に全国的に市販を開始しました。東急ハンズでの当時の価格は1枚85円程度。私の購入価格の2倍以上です。それでもメガネタイプを買うよりは格安で工作もしやすいです。
■工作手法や展開方法について
@ミニホロスペックス工作や,X線スコープの代用アイデアについて,私自身もメディアや冊子に発表していますが,他の方が(私に連絡して)いくつかの本で紹介して下さっています。
※私に無断でメディアや本に発表した人もいるようです・・(「発表」される際はオリジナリティやプライオリティの尊重は大事ですよ)
Aホロスペックス入り名刺について,S社の担当と話した際に「実はS社でも製品化の段階でメガネ以外にもいくつか考えた」「名刺も候補に挙がったが2枚の名刺用紙の間にシートを貼り込む手法についてクリアできない問題が多く断念した」「こんな小さなシートを外からシールで貼り込む発想はなかった」「日本での名刺作成は間違いなく(海老崎が)最初です」とお墨付きをいただきました。しかし,ホロスペックス入り名刺の製品化構想があったとは・・
この工作や名刺作成にあたり,S社様(特に営業担当の○さん)には本当にお世話になりました。
以上です。