細長風船を用いた爆鳴気爆発 


(科学の祭典「爆発ステージ!」や各地の実験教室などで多数演示)

(サイエンス展示・実験ショーアイディアコンテスト 日本科学技術振興財団会長賞の受賞理由である「安全性を特に高めた手法」として評価されたものの一つ)

 水素と酸素を2:1の体積比で混合し,点火する爆鳴気爆発実験はダイナミックで演示効果も高く,また爆発事故の怖さを示すためにも重要な実験です。過去には丈夫なビニルパックに詰めて水滴の発生を見たり,ビニルチューブに詰めて手に持たせて点火し,爆発の威力を体感させるなど,さまざまな手法が広がっています。今回紹介する手法は,「爆音」のみに注目したものです。薄いビニルに詰めて点火して火のついたビニルが飛び散る,分量を取りすぎて爆音が大きすぎた,などの事故・危険事例を調べ,それらを極力排除する手法です。

●この実験を考案したポイント

 細長風船は直径がほぼ一定しているので,膨らんだ長さにより体積がわかりやすい。この実験を丸風船でやってはならないと提唱している理由がこれで,例えば直径6cmの丸風船と比べて,たった2cm大きく膨らませた直径8cmの風船では,体積が倍以上に増えてしまっていることに気づいているだろうか。細長風船では体積はほとんど長さに比例し,量が把握しやすい。しかも特別な気体採取袋などなしに,水素:酸素を目分量で2:1に取りやすいなど,多くの利点がある。

 なお,これまでのところ,危険場面はありませんでしたが,実施されるときは十分な予備実験を行って手法について熟練した上で,さらに下記の注意事項を確実にお守り下さい。他で紹介されるときはオリジナル明記の他,安全上の注意も必ず一緒にお伝え下さい。また,この手法は安全には格段の配慮をしていますが,万一,事故が起こっても,理由の如何を問わず,当方は一切責任を負いませんので,やってみようという方は各自の自己責任において実施して下さい。

◇準備

・細長風船(長さを1/2にカットした物で十分)・・・破裂しても火が着いたり飛び散ることがない。また,目分量ではあるが,風船の膨らむ長さを目安として気体の分量(水素:酸素=2:1)を取りやすい。

・ミニ水素ボンベ ・ミニ酸素ボンベ(実験教材用の4.5リットルタイプ程度の物)

・逆流防止弁&ゴム栓付パイプ

・フラッシュ糸(マジック用などの一瞬で燃え尽きて燃えかすが残らない硝酸化系の糸)・・・火が着いたまま飛び散ることがありません。

・セロハンテープ

100円ショップで売っている,ミニ風船用の「ミニ空気入れ」の先を取り外します。この内部にはゴムの逆流防止弁がついているので,ボンベから細長風船に気体を注入するのには最適です。ボンベの口に合うように小さめの穴を開けたゴム栓(写真はシリコン栓)を取り付けています。

(普通教室の場合・・・長さ15cm程でも十分な大音響です。)

1.まず酸素を長さにして5cm程度取ります。取りすぎたら少し抜いておきます。ボンベを外すとき気体が漏れないように風船の口を軽くひねると良いです。

2.次に水素を10cm取ります。取りすぎたら混合比が変わりますが,しっかり抜いておきます。取りすぎは禁物!

図のように風船を結び,セロハンテープで机や黒板,スタンドなどにしっかり固定します。絶対に手で持ったりしてはいけません。

フラッシュ糸を約1m程度(予備実験で確認して下さい)風船にセロハンテープで貼り付けます。あとは点火するだけですが,以下の注意をしっかり読んで下さい。

◇着火までの注意

1.絶対に室外および風が激しく吹き込む室内では行わない。・・・点火した瞬間にフラッシュ糸が風で舞い上がり,風船に触れて演示者が逃げる前に爆発した例があります。

2.着火の前に,風船から最低でも5m以上離れさせる。演示者は自分が十分逃げられるスペースと時間(フラッシュ糸の燃え方を事前にチェック)を確保しておく。演示者は耳はふさいでよいが,目は絶対に風船からそらしてはならない。爆発直後までずっと安全に注意すること。

3.着火の前に,「大きな爆音がする」ということを繰り返しアナウンスする。これを怠ると,知らずに通りかかった人が,手荷物を落としたり,音に驚いて事故を起こす可能性がある。着火して爆発するまでもアナウンスを繰り返す。

4.体育館でも20cmも爆鳴気を取れば十分に響くので,絶対に分量を取りすぎないこと。・・・何度も予備実験をして確認して下さい。

5.ビデオによる解析で,(瞬間的に炎になる)爆発は0.1秒以下で終わり,火災の危険を感じたことはないが,念のために濡れ雑巾や水入りバケツを置いておくこと。・・・念には念を入れて。安全に絶対はありません!

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海老崎 功 ebisan@mbox.kyoto-inet.or.jp