改良型コヒーラスイッチ 


(H9年度 ウチダ全国教職員発明考案コンクール入選作品(改良前の非可動型のもの)
 
(H10年度 第47回全国教職員発明展入選作品(改良型コヒーラスイッチ)
 初期の電信機技術を確立した「マルコーニの電波受信器」の仕組みを理解するのに役立ちます。「コヒーラ」とは「接触」という意味で、酸化金属表面の接触抵抗の変化によりスイッチングを行うことからこの名前があります。マルコーニは金属粉末等を使用しましたが、鉄球を用いると「金属を使ってる」ということがわかりやすくなります。
 パチンコ玉などの鉄球をフィルムケース等に詰め、両端にアルミ箔等をおいて端子とするコヒーラスイッチは以前からありましたが、これらの簡易型スイッチには以下のような弱点がありました。
 ・熟練した指導者でなく、ふつうの生徒でも100%失敗なく受信をすることは難しい。
 ・「ひとまわりの回路」がわかりにくく、スイッチングができても感動が少ない。
 ・鉄球を詰める筒が不透明で内部が見えにくい。
 ・耐久性に乏しく、いつも確実に受信できるとは限らない。
今回の開発品は、これらの弱点を完全にカバーするものです。
 
なお、京都市青少年科学センターではこの装置を50台製作し、H10.1〜H10.12の間、中学2年生の学習に用いました。その間100%の受信実験に成功しています。
 
H10全国理科教育センター物理部会(仙台)にて発表。科学の祭典ひょうご大会(姫路会場)出展。科学センター報告、科学センター30周年記念ハンドブックなど多数掲載および掲載予定。
 
 ◇装置の特徴・工夫点
 
1.「ひとまわり回路」が誰にでもわかるような配置にした。
2.パチンコ玉でなく、ベアリング球を用い、接触抵抗が変わりにくくした。(個数は試行錯誤の結果決定)
3.鉄球が見えるようにすべて透明アクリル仕様にした。
4.ステンレス電極を60度の傾きで取り付け、鉄球の自重で最適のスイッチングができるようにした。
5.鉄球の上部のアクリル板が可動で、指で押さえることにより、いつでも最適な受信状態を作り出せる。
6.鉄球は油脂が着いた状態で販売してあるので、適度な酸化表面を作るために洗剤で良く洗い、フライパンで数分炒った。
7.メンテナンスとしては1年に1回ほど、鉄球の研磨または取り替えが必要である。(電池交換は当然ですよ。)
 
 
◇実験方法
 
 「小型ヘルツの実験装置(電波発振器)」とセットで使用します。
 1.コヒーラスイッチの可動部を指で押して豆球が明るく光るのを確認します。
 2.指を離すと豆球が消えるかまたは極端に暗くなります。
 3.その状態で電波発振器の上にコヒーラスイッチを置きます。
 4.発振器のライター(圧電素子)をパチッとやって火花を起こし電波を飛ばします。
 5.その瞬間に豆球がパッと明るくなり、電波の到来を知らせます。
 6.うまく光らないときは可動部を指で軽く押さえ、ほんのわずか豆球が光る状態にしておき、
   そのままパチッとやります。この方法で必ず受信ができます。
 
◇なぜ電波を受けると豆球が光るの???
 
 一回りの回路を見渡してみると「何でこれで豆球が消えたり暗くなったりするのだろうか?」と不思議に思う人も多いと思います。なぜなら、回路はすべてつながっており、導線やステンレス板、鉄球などすべて良導体を用いているからです。しかしよく考えてみると空気中の鉄球の表面にはミクロな「酸化膜」ができています。これが通電の邪魔をしているときに限り、このスイッチは有効になります。
 ヘルツは大きな火花放電が離れた別の場所に新たな火花放電を引き起こすことを発見しました。電波の発見です。この装置も実はこれを利用しています。小型発振器から出た電波を鉄球が受信し、酸化膜を隔てた非常に小さなすき間にミクロの火花を作るのです。これが酸化膜を破り、通電を復活させるようです。
 
 これらの仕組みをうまく利用すると、電波によって簡単な信号を送ることが可能になります。マルコーニはヘルツが発見した「電波」をもっともうまく利用する方法を考えた、偉大な技術者ということができると思います。
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海老崎 功 ebisan@mbox.kyoto-inet.or.jp