電気くらげ 


※このページに関連して「逆電気くらげ」の内容を他で引用等するときは,必ずこのページを参考文献に上げて下さい。(手法のすべては物理教育学会誌に掲載されていますので,そちらでも構いません。)

「京都市青少年科学センター 面白実験ランド」をはじめ,各地の実験教室,科学の祭典,科学教育ボランティア研究大会,教員研修会等で多数紹介・実施。


 荷造り用のひも(タフロープ・スズランテープ等/ポリエチレン製 ※注 H19にタフロープのレコード巻/平巻はすべてポリプロピレン製からポリエチレン製に変わりました。)を細かく裂いたものをティッシュなどで擦って負に帯電させ,それをやはり負に帯電させた塩ビ管で浮かす「電気くらげ」の実験は,サイエンスプロデューサー・米村傳治郎先生の実践で有名になり,それ以降,全国各地で行われています。ここで紹介する手法は材料から安全その他の指導まで含めた内容で,他の実験本にはないオリジナリティを有するものも多いです。平成16年1月現在,すべての電気くらげ解説の中でも結構イケてるものだと自負しています。

 このページと「逆電気くらげ」「逃げる?くっつく?フラダンス風船」のページをマスターすれば,これだけでかなりの静電気実験ネタとなると思います。


◆全体的な注意 

※この「注意」の内容を単独で他でも引用等するときは,必ずこのページを参考文献に上げて下さい。特に「風船の吟味」に関する内容はごく簡単にまとめていますが,私の独自の研究に基づくものです。(調査協力 鈴木ラテックス 他)

1.冬の乾燥したシーズンのネタであることを理解しておく。

 湿度50%以上では難しい。60%を超えたらまず無理(H11年の1年間 火水金土曜のほぼ毎日の実践による経験則)。湿度が高いと器具もすぐに湿り気味になり,擦っても起電しにくいだけでなく,せっかく帯電させてもすぐに弱くなってしまう。雨天時や夏場に実施しなければならない時は,エアコンのある部屋で行い,デジタル湿度計などで湿度を確認する。湿度計には器差があるので,手持ちの湿度計でどの程度ならうまくいくか,何度も予備実験をやっておく必要がある。また,直前までうまくいっていても狭い理科室に大勢の生徒が入ると,一気に湿度が10%以上も上がることがあるので注意する。湿度計がないときの目安としては,細長風船を乾いたティッシュで擦ってみて,そのティッシュがくっつくかどうかで見極める。くっつくくらいの静電気が起こらないときはくらげは無理だとあきらめる。また,冬のネタだからといって,忘年会で行う時は料理が「鍋」かどうか確認しておく必要がある・・・。

2.演示ではなく,多人数で同時にやるときは塩ビ管を用いない

 くらげを追いかけて,硬い塩ビ管で周りの人を突いてしまう事故が起こりかねない。したがって多人数で行うときは必ずバルーンアート用の細長風船(ペンシルバルーン)を用いるようにする。子ども対象の時は特に注意する。

3.使用する細長風船は必ず吟味する。

 私が最近,独自の調査に基づき,他の方にアドバイスしているのがこれ。ダイソーその他から安い細長風船も出ているが,それらの多くは静電気実験には向かない。それに対してやや高価ではあるが「ペンシルバルーン(鈴木ラテックス製)」などは実験には最適である。これは同じような風船に見えても「使うゴムの種類」「厚みの違い」「加硫の程度の違い」「色づけのための顔料の違い」「すべりをよくするパウダーの違い」などがあるからである。例えば鈴木ラテックス製とダイソーのものを比べると,ゴムの手触りからパウダーの違いまですぐにわかる。目安としては膨らませて乾燥した柔らかいタオルで擦ってみる。実験に向かないモノはまず擦ろうとしてもタオルが滑らない。起こる静電気量も少なく,電気くらげのように強い静電気が必要な実験は難しい。実験に向くモノはよく滑り,パチパチという音がしてくる。

4.板状のタフロープは1本(1枚)に見えても実は2枚重ねなので,剥がして1枚ずつに(薄く)しておく。

 薄くしておくと実験の成功度が格段に上がる。


◆実験方法

タフロープは1枚に見えても実は2枚重ねです。簡単に2枚にはがれるときもありますが,そうでないときもあります。
うまくはがれないときはタフロープの表裏にそれぞれセロハンテープを貼り付けてからはがす,などの手法もありますが,それでもはがれにくいものもあります。そういうとき・・・私はあきらめます。2枚重ねのまま裂いていくこともありますが,やはり浮きにくいです。
1枚にうすくはがしたものを20〜30cmの長さに切ります。実験教室等では子どもたちにはこれを渡しています。(上)

それのなるべく中央をしっかり結ばせます。(中)

太いところを裂いていくことを繰り返させます。あまり細かく裂かなくても良いですが,結び目の所までしっかり裂くことが大事です。その際,裂いた先がもつれないように注意します。これでくらげのできあがりです。クシを使って裂くこともありますが,子どもたちには手で丁寧に行わせると愛着が沸くのか,くらげを大事に扱うようです。(下) ただし手で裂く時は片方を5回程度以下にします。あまりに裂きすぎると手の湿気等により帯電しにくくなります。

くらげをそのままティッシュで擦っても浮くときもありますが,より確実に,高く浮かすためにアクリル板(アクリル下敷)を使用します。アクリル板がなければアクリル定規など,幅5cm長さ15cmほどあれば何でもOKです。他に身近なものではCDのケース(多くはアクリル製)やCD本体記録面(ポリカーボネート製・傷つくと大変なので不要品を使いましょう)などでもOKです。ただし塩ビの下敷や定規では帯電列の関係でうまくいきません。

アクリル板の上にくらげを置き,乾燥したティッシュかタオル,服などで擦りつけ,しっかり押しつけます。きれいでかつ乾燥していれば,素手で押しつけてもうまくいきます。

ピッタリ張り付いた状態から結び目を持って,いきなり剥がして投げ上げると「剥離」で生じた静電気も加わって,くらげは「足」の1本1本がかなり強く負に帯電します。このため足どうしが反発してふんわりと広がります。(このときアクリル板が正に帯電。アクリル以外でも正に帯電しやすい板や机などなら何でもOKなので探してみてください。例えば机では表面を樹脂加工したものなどは結構いけるものがあります。逆に一部のパソコン机や実験机のように静電防止加工しているものはNGです。)

◆帯電列  負になりやすい・・・ポリプロピレン/ポリエチレン・・・アクリル・・・正になりやすい

おっと,投げ上げる前に細長風船を膨らませて,それをティッシュまたはタオル,服などで擦って負に帯電させておかなければなりませんでした。これで投げ上げたくらげを受け止めると反発して浮かびます。

◆帯電列  負になりやすい・・・ラテックス・・・ティッシュなど・・・正になりやすい

細長風船が滑りが悪く,タオル等でうまく擦れないときは上の「全体的な注意3」をご覧下さい。

細長風船はそのままの長さで使わなくても半分の長さで十分です。はじめにしっかり結んでからはさみで2つに切り分け,その後,膨らませます。膨らませるには押す引く両方向どちらのポンピングでも空気が入る,専用空気入れ(何と100均でも売っている)など利用すると便利です。素人が口で膨らませるのはほとんど無理です。

風船は1本ではなく,2本使って「二刀流」にしたり,左のように輪にした細長風船の中央に漂わせると安定して浮かびます。いろいろ工夫すると,5分以上でも楽に漂わせることができます。

原理を単純化して書くと図のような感じです。同種の静電気は反発します。
なお,帯電が正であるか負であるかはネオン管で確認できます。理科教材用のネオン管は左図のA,Bのタイプがありますが,必ずAを用います。(Bでは確認しづらい) 一時期Aタイプは市場から消えていましたが,2000年頃から復活し,中村理科工業(株)やケニス(株)で買うことができます。(1本350円くらいか?)

※Aタイプはその後,再び市場から消えました。持っている方は大事に使いましよう。

@のところを指でつまんで持ち,Aを調べたいものの帯電部分に近づけ,その部分をなぞるようにネオン管を動かします。Bの部分が光ればそのものは負に帯電しています。もしCの部分が光ればそのものは正に帯電しています。(ネオン管は負側が光る) 

たとえば今回の実験で風船をAに近づけると,Bが強く発光し,風船は負に帯電していることがわかります。

◆安全上の注意

 危険があるようには見えないかもしれないが,くらげを追いかけるのに夢中で他人や物,机,ガラスなどにぶつかる事故などが起こり得る。また,実験中に体にも結構静電気がたまることがあり,それが思わぬ時に放電し,ビックリして2次的な事故を呼ぶときがあるので注意する。

◆実験成功のポイント

・実験時は手をきれいにしておく。
・細長風船はなるべく膨らませてすぐのものを使う。ずっと使っているとパウダーが取れたり汚れたりして擦りにくくなったり静電気が起こりにくくなったりする。
・ガスストーブなど水蒸気がたくさん出る物をガンガン焚いたりしない。できればデジタル湿度計で常に湿度を見ておく。
・くらげには寿命がある。先端がもつれてうまく広がらなくなったら作り直す。
・なるべく汗をかかないようにするため一生懸命にやらない・・・
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海老崎 功 ebisan@mbox.kyoto-inet.or.jp