圧縮発火器の危険性と改良について 


■はじめに

圧縮発火器は断熱圧縮をダイナミックに演示できる優れた実験器具です。しかし,取り扱いに注意しないと大事故が起こる可能性があります。

現在の市販装置には安全を高める工夫がされていますが,その経緯と自作器具を作製して演示している人への注意喚起を記しました。

■経緯等

@事故発生

京都市青少年科学センター勤務時に,来館者対象のミニサイエンスショーで圧縮発火実験を市販器具(科学共栄社製:現ケニス)を使って繰り返し行っていました。

新品の器具を購入し3年間,数100回にわたり演示しました。2000年2月,いつもと同様に演示していると圧縮した瞬間にアクリル筒の先端が「パン!」という大きな音とともに破裂し,お客さんの方に破片が飛び散りました。幸いけが人はいませんでしたが,アクリル筒の近くで見せていたら大ケガの危険がある重大事故でした。

私は演示には十分慣れており,アクリル筒が圧縮の瞬間,斜めになり折れて破損したなどのミスではありません。

考えたらこの破損は十分予想されることです。毎回の断熱圧縮でアクリル筒先端は400℃前後にさらされる上,大きな圧力も掛かるのです。ある程度は大丈夫でも,何度も繰り返せば破裂の危険性は増していきます。

A製造元に事故報告

製造元(海外)に連絡したところ「そんな事例は全世界であなただけだ(your case only)」とまるでクレーマーのように扱われました。

私,ブチ切れました(笑)。科学共栄社を通して,写真も添付し事故の経緯や,当然,同様事故が将来的に予想される点,日本でも浸透してきた「PL法」についてもふれたメールを送ってもらったところ,数ヶ月後「掌返し」で「あなたのいう現象を当社でも確認した。強力なフィルムを貼付した改良品を作ったので受け取って欲しい」と連絡が来ました。

科学共栄社も独自に改良品を作り,製造元のものとあわせて2個が私の手元に届きました。

Bさらなる改良

製造元や代理店の工夫でも大丈夫かと思いましたが「事故のトラウマ」は相当なものでしたので,さらに1つ工夫を加えました。

このようにして現在も演示を続けています。

C自作器具を使用している人への注意

以上,参考に「使い続ければいつかは必ず破裂する」と心得て,安全策を講じて下さい。客だけでなく演示者自身の安全にも留意して下さい。

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海老崎 功 ebisan@mbox.kyoto-inet.or.jp