奥の細道挿入句の読み方7

 

まゆはきを俤にして紅の花

〈推測する読み方〉
この地方の名産の紅粉の花。この花を見ていると女の人の使う眉掃きのようなあでやかさを感じる。そう言う面影をもった花である。
〈体感する読み方〉
紅の花と言うのを初めて見たが、女性の眉掃きに似た花だなあ。女の化粧する姿を思い浮かべている芭蕉、読手も花の形を想像して、少し艶っぽい気分を体感する。


〈二十八〉立石寺
閑さや岩にしみ入る蝉の声

〈推測する読み方〉
静かな山の中に蝉の鳴き声が流れる。まるで岩にしみ入るような蝉の声、その声のとだ
えたあとは、いっそうの静けさがあたりに広がる。
〈体感する読み方〉
岩山の美しい寺領。その雰囲気の閑かさに心洗われる思いがする。この清澄な心満ちた状態は、鳴いている蝉の声も岩に吸い込まれて行くようだ。読手は芭蕉といっしょに閑静な山寺の、すがすがしい気分を体感する。


〈二十九〉最上川
五月雨をあつめて早し最上川

〈推測する読み方〉
折りから降り続いた梅雨に最上川の水かさは増し、早い流れがいっそう激しく豪快な流れとなって舟は矢のように走り去っていく。
〈体感する読み方〉
川の両岸はたっぷりと雨を含んで、木も草も重そうな感じの最上川は、そんな水や流れのすべてが流れ込み、水かさを増してごうごうと流れていく。読手は雄大な河の力に恐れを抱きながら見ている芭蕉の心に同化し、川岸に臨場している。


〈三十〉出羽三山
ありがたや雪をかおらす南谷

〈推測する読み方〉
涼しさがこの羽黒山の清らかな全体をつつんでいる。その清涼の世界をさらにいろどるかのように。三日月がほんのりと空にかかっている。
〈体感する読み方〉
雪の気配の感じられる風がここ南谷迄吹きおりてくる。清々しくて有難いことだ。感謝の念が強く湧いてくる芭蕉である。読手は山から雪の冷気をはこんでくる風を体感し、南谷の宿に臨場している。

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