奥の細道挿入句の読み方8

 

涼しさやほの三日月の羽黒山

〈推測する読み方〉
涼しさがこの羽黒山の清らかな全体をつつんでいる。その清涼の世界をさらにいろどるかのように。三日月がほんのりと空にかかっている。
〈体感する読み方〉
出羽三山の残雪があたりを涼しくし、そのほのあかりの上に出た三日月。羽黒山のたたずまいが、おぼろに見えて涼しく、贅沢な夜だなあ。と悦に入った感じの芭蕉。読手は美しく爽やかで、心なごむ思いが伝わり、墨絵の世界に臨場している。


雲の峯幾つ崩れて月の山

〈推測する読み方〉
日中に山を幾重にもつつんでいた、白雲がいつの間にかくずれ去った時はもう夜になっていた。ほのぐらい月の下に月山がくっきりと浮かんでいる。
〈体感する読み方〉
雪の山「月山」に月が出た。今日は積乱雲が沢山出ていて、夏と冬が同居していた。そんな山に月が出て夜は月の山となった。芭蕉はめったに会えない風景に感慨を深くしている。読手はその気分が伝わり、月に照らされた雪山の見える谷に臨場している。


あつみ山や吹浦かけて夕すずみ

〈推測する読み方〉
長い旅をつづけて、はじめて見た日本海、一方にはあつみ山が見え、吹き送ってくる夕風は吹浦の方にずっと吹き抜けている。その涼風の中で夕涼み。あつみは暑い。吹浦は風吹と音が共通していて、洒落た夕涼みである。
〈体感する読み方〉
あれはあつみ山だなあ。それにしてもここ吹浦と言う処を吹く風の何と言う涼しく快よいことだろう。ここでの夕涼み、心安らかに遠くを眺めている芭蕉。読手は涼しい風が吹いてくる感じがして座った芭蕉の横に臨場している。


暑き日を海に入れたり最上川

〈推測する読み方〉
暑い一日を最上川の流れはたえまなく、海に流れ込んでいく。沈んでいく夕日を流し去るように。
〈体感する読み方〉
たゆとうと流れる河口。最上川はそのまま海にとけ込んで、何もかも呑み込んでしまうその流れのさまは、この暑い日盛りも太陽ごと海に入れてしまうように思われる。いや現実入っていってしまうのだ。芭蕉は河と海の出会いの不思議に水面を眺めている。読手は河と海の融合する際限の無いドラマを眺める芭蕉に同化し河口の岸に臨場している。

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