三月書房販売速報[119]
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2014/12/02[16-03-119]  (c)SISIDO,Tatuo    *転送歓迎* 

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 119号
     
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[#01] 最近売れてるような気がする本(順不同)

  ◆「飢餓陣営41」佐藤幹夫・編集 飢餓陣営発行所
  ◆「吉本隆明全集 第4巻」晶文社
  ◆「吉本隆明“心”から読み解く思想」宇田亮一 彩流社 
  ◆「吉本隆明の経済学」中沢新一編著 筑摩書房
  ◆※再入荷「叔父の思想:吉本隆明論」太田修 修羅出版
  ◆「脈 82号 特集:谷川雁一永久工作者の言霊」脈発行所
  ◆「古事記の根源へ」村瀬学 言視舎
  ◆「木村敏と中井久夫」飢餓陣営編 言視舎
  ◆「現代秀歌」永田和宏 岩波書店
  ◆「(歌集)流木」高野公彦 角川学芸出版
  ◆「(歌集)きなげつの魚」渡辺松男 角川学芸出版
  ◆「(歌集)行け広野へと」服部真里子 本阿弥書店
  ◆「杉本秀太郎詩集 駝鳥の卵」編集工房ノア
  ◆「死んでしまう系のぼくらに」最果タヒ リトル・モア
  ◆「私が書いてきたこと」富岡多恵子 編集グループ〈SURE〉
  ◆「金素月詩集(対訳)」蔡洙美、飯島研賜・訳 チョウンタン(韓国)
  ◆「薄幸日和」グレゴリ青山 小学館
  ◆「ドミトリーともきんす」高野文子 中央公論新社
  ◆「つげ義春 夢と旅の世界」新潮社
   “この本は買っても買わなくても後悔するでしょう(つげ義春)”というキャッチ・コピーが最高なのに、
       第2刷には帯が附いてなくてがっかり。〈とんぼの本〉は基本的には帯なしがふつうのようだが、
   この本だけは重版でも帯が欲しかった。


[#02] これから売れそうな気がする本(順不同)

  ◆「オイリュトミー療法講義」R・シュタイナー 涼風書林(※入荷済)
  ◆「不知火海への手紙 〈後期〉未公刊散文集」谷川雁  アーツアンドクラフツ
  ◆「超原発論」吉本隆明 論創社
  ◆「吉本隆明全集 第5巻」晶文社
   「全集」は3回まで出ましたが、やはり徐々に売れ行きが落ちつつあり、1回の40冊弱から3回は
       25冊ほどになってます。12月に出る4回もいまのところ20冊を少し超えるあたりになりそうです。
       ここまでは3ヵ月に一回の刊行だったのが、5回からは2ヵ月に一回になる予定なので、ぼちぼ
       ち落ち着くとは思いますが、減ることはあっても増えることはなさそうなので、先行きがやや心配です。
  ◆「吉本隆明〈未収録〉講演集 全12巻」
   「講演集」は定価も安く毎月刊行予定とテンポもよいので、「全集」よりも全巻予約は多目です。
       しかし、内容的にはかなりマニアックな上に、「ほぼ日」の「フリーアーカイブ」とかなり重複しますか
   ら多くは売れそうにありません。いまのところ初回は30冊を少し超えそうというあたりです。

   
[#03] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その81)   

 ○「出版ニュース 2014年10月中旬号」掲載の「2013年度書店売上実績」
   にランクインしていた京都市に本社のある書店グループは下記の3店でした。

   ・038位 大垣書店   87.0億円 4.8%増
   ・062位 ふたば書房  34.3億円 6.1%減
   ・213位 恵文社     5.2億円 7.6%減

   いつものことながら大垣とふたばは支店の開店閉店が頻繁なため、この数字だけでは内情はわかりません。
      「出版ニュース 11月中旬号」に載っていた資料によると、2007年の大垣は50.6億円、ふたばは35.5億円と、
      大垣の伸びがすごいように見えますが、経費がかさむ大型店が増えている大垣よりも、雑貨部門が好調な
      ふたばのほうが経営状況はよいのではないかというのが、まったくあてにはならない巷のうわさです。恵文社
      は2008年の6.4億円をピークに毎年下降して昨年までで20%近い減になっています。ここは店舗数はずっと
      3店のままなので、おそらく一乗寺店以外の減収が大きいのではないでしょうか。いずれにしろ、この間の20
      %減というのは業界全体から見ればまだましで、全国順位は2007年の276位から大幅にアップしています。
   
 ○「大垣書店イオンモール京都桂川店」が10月にオープンしました。阪急電車河原町駅から6駅ほど大阪寄りで、
      京都市の西端です。見学に行く予定はほぼありませんが、この手のモールはどこも同じようなものでしょう。
       大垣書店の売場面積は775坪、約180席のカフェスペースも併設とのことです。
   イオンモールは西大路五条西と京都駅八条口にもあり、どちらにも大垣書店が出店しています。この3つの
       モールは、商圏がかなり重なるはずなので、それでなくともさほど繁盛しているようには見えない既存の2
       モールの売上はおそらく落ちることでしょう。
   
 ○「本屋はおもしろい !!」 (洋泉社MOOK)には“個性派新刊書店80”と“ディープインパクト古書店30”が掲載され
       ていますが、京都市内では三月書房と恵文社一乗寺しか載っていないようです。ほかに、ガケ書房が和歌
       山の廃校利用のブックカフェに新刊書を委託でおいてるという話も。全体としては地方都市の書店が、過去
       の類似品よりもかなり多く取り上げられています。座談会、インタビューほか読み物類も充実しているので
      1200円+税はわりとお買い得でしょう。
   
 ○「善書堂」(河原町今出川)が9月末頃に閉店されました。質屋兼古書店として有名でしたが、人文書の品揃え
      は市内でも有数で、とくに英文学関係は定評があったようでした。健在だったころのレポートはこちら。   

[#04] 近ごろちょっとまずいことになったらしい出版社など
 
 ○「ルックナウ(旧・グラフ社)」「プラネットジアース」「医学芸術社」「同朋舎メディアプラン」「佐久書房」などが
      前号以降に破綻したようですがほとんど縁のない出版社ばかりでした。出版業界の売上は落ちる一方で、
      まったく上向く気配がないにもかかわらず、このところ大きな破綻がないのは、とりあえずはけっこうなこと
       と言うべきでしょう。こんな状態がいつまで続けられるのかはまったくわかりませんが。
  

[#05] 小泉孝一「鈴木書店の成長と衰退」について

   昭和20年代の“成長”期については知らない話ばかりでしたが、森繁久彌主演の東宝映画の会社物よう
      な印象を感じました。この時代の中小企業はどこも同じような雰囲気だったのでしょう。
   “衰退”期については最後まで取引があったのでよく知ってはいますが、業界全体の構造的問題が大き
       すぎて、鈴木書店単独ではほとんどが解決不能でした。もしも最終段階で最善の改革ができたと仮定し
      ても、破綻時期を少々先送りできただけだったでしょう。
   うちの店は最後の最後まで、本当に親切にしていただき、倒産されたときはどうなることやらと思いまし
       たが、同時期に日販の流通が大幅に改善されたことと、インターネットの利用によって新たな仕入れと
      販売のルートが確保できたことによってなんとか生き延びています。もしもまだ鈴木書店が健在だったと
       しても、以前のようなありがた味はかなり薄れていたでしょう。首都圏のことは知りませんが、鈴木書店
      の地方取引は人文書の常備寄託がベースであり、それらの補充品に、新刊と客注が乗っかることによっ
     て、ほぼ毎日荷送りができる構造でした。したがって、現在のように常備品がまったく売れなくなってしま
      うと、安定した配送が不可能になっていたはずだからです。
   この本には鈴木書店が地方小出版流通センターに対抗?して始めた全国地方新聞社本の扱いにつ
      いては触れられていないようでしたが、地方新聞社の本は質量ともに貧弱だった上に、地方小のよう
      には版元の新陳代謝があるわけもなくて、さほど成功しているようには見えませんでした。それから、
      大手に比べるとかなり遅い時期になってから、電算(インターネット以前のコンピュータ利用)対策に乗り
   出しましたが、おそらく資金不足と人材不足のために、ほとんど効果が上がらないままでした。
   これはまったくのウロ覚えですが、90年代の「出版ニュース」に当時の日貿出版の社長だったかが、
      鈴木書店は非再版専門の取次店になるべきだとの提案をされていたような記憶があります。その時は
   なんのことやらまったくピンときませんでしたが、今思えば早すぎた卓見だったのかもしれません。たん
      に鈴木書店のお向かいに八木書店があったから思いつかれただけかも知れませんが。
   
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  ☆出版人に聞く 15「鈴木書店の成長と衰退」
      小泉孝一(聞き手・小田光雄)
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   ◆1998/11/27 創刊準備号(通巻01号)発刊
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三月書房販売速報[120]
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2015/03/17[17-01-120]  (c)SISIDO,Tatuo    *転送歓迎* 

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[#01] 最近売れてるような気がする本(順不同)

  ◆「開かれた『構造』〜遠山啓と吉本隆明の間に」柴田弘美 アゴレー企画
  ◆「吉本隆明〈未収録〉講演集1・2・3・4巻」 筑摩書房
  ◆「『反原発』異論」吉本隆明 論創社
  ◆「無名なものの詩(うた)と革命〜孫世代からみた吉本隆明」菊谷倫彦 菊谷文庫
  ◆「吉本隆明全集 第5巻」晶文社
  ◆「農業論拾遺〜世界認識論」吉本隆明×太田修 修羅出版
  ◆「国家論大綱 第2巻」滝村隆一 勁草書房
  ◆「21世紀の資本」トマ・ピケティ みすず書房
  ◆「LEIDEN─雷電 7号(通巻8号)」 雷電舎
  ◆「不知火海への手紙」谷川雁 アーツアンドクラフツ
  ◆「脈 83号 特集・内田聖子の渋澤龍彦」 脈発行所
  ◆「オイリュトミー療法講義」R・シュタイナー 涼風書林
  ◆「みすず 2015年1/2月号 読書アンケート特集」 みすず書房
  ◆「文體を問う詩歌文藝誌 GANYMEDE 62号」武田肇・編 銅林社
  ◆「(歌集)黄鳥」阿木津英 砂子や書房
  ◆「(歌集)風とマルス」花山周子 青磁社
  ◆「スケオタデイズ」グレゴリ青山 メディアファクトリー  
  ◆「山窩奇談」「山窩は生きている」「サンカ外伝」三角寛 河出文庫
  
 あいかわらず売れているのは<吉本>本ばかり。とくに12月からは毎月筑摩書房の講演集が出ているので
  その分がコンスタントに増えています。そのうえ、今春はうちの店が独占販売中の「農業論拾遺」とか、うちと
 模索舎しか売っていないらしい「開かれた『構造』」もあったので、とにかく発送がたいへんでした。「農業論拾
  遺」は著者兼発行者から、市販分150冊すべてを送っていただきました。他店への卸しも委託されたのですが、
  今のところどこからも問い合わせがありません。すでに8割以上売れたので、もはや卸す分はほとんどありま
  せんが…。この本についてはブログ「三月記」に記事がありますのでご参照ください。
 
 「開かれた『構造』」は昨年出ていたのをまったく知らず、人に教えられて調べたら模索舎さんが販売されてい
  たので、発行者兼著者を紹介していただきました。おかげで60冊も売れて発行者にも喜ばれました。
 この本については「<吉本隆明>本 新刊のお知らせ」の2015/01/06の項をごらんください。

 「吉本隆明〈未収録〉講演集」は全巻予約が30名近くあり、まずまずです。10年近くかかりそうな「全集」と違っ
  て、1年で完結予定なのが高齢化しつつある<吉本>本読者にとってはよかったようです。「全集」は毎巻25
  冊ほど売れていますが、全巻予約は全部で9名しかなく、しかもお一人が1回配本とほぼ同時にご急逝、そ
  してもうお一人が今年2月にご急逝、そしてあとお一人は入院でもされたのか、まだ4回目を引き取りに来ら
  れていません。全巻ご予約者は予約時点ではあと10年は元気に読書できる自信がおありのはずだったので
  すが。昨年末、筑摩の「講演集」の編集部から「<吉本>本のネット販売について」という仮題にて、「月報」
  への執筆依頼をいただきました。そこで参考のために<吉本>本の通販のご常連に、ごく簡単なアンケート
  をお願いしてみました。その平均年齢は約65歳とほぼ予想通りでしたが、地べたのお客はもう少し高齢で60
  年安保世代の方々も少なくはないようです。これは、ネット通販ということになると、全共闘世代よりも上の
 方々には不得手な方が多いからでしょう。この「月報」原稿は来月発売の5巻のに掲載されるようです。全文
  はいずれ数年後に、サイトに貼る予定ですが、最後の段落のみ予告編として公開しておきます。

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  出版業界はここ二十年近く売上の減少が続いていて、まったく回復の気
 配がないばかりか、いつ全面崩壊してもおかしくない状況です。それに私
 自身も常連客の平均年齢と同じ六十五歳であり、<吉本>本の売れ行きも、
 うちの店も、この先あまり明るい見通しはありません。それでも、せめて
 晶文社の「吉本隆明全集」の完結までは、出版業界も、うちの店も、そし
 て<吉本>本読者の皆様のご健康と年金も無事であることを願っています。
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[#02] これから売れそうな気がする本(順不同)

  ◆「(歌集)銀色の馬の鬣」岡井隆 砂子屋書房※入荷済
  ◆「シュタイナーの言葉」飯塚立人・編/高橋巌・訳 春秋社※入荷済
  ◆「人智学とはなにか」プロコフィエフ/和田他訳 涼風書林※入荷済
  ◆「吉本隆明 最後の贈りもの」潮出版社  
  ◆『京都「トカイナカ」暮らし』グレゴリ青山 集英社インターナショナル
   この本には「kotoba」に掲載された、三月書房が大々的に出てくる「京都個性派書店案内」と、チラと出て
      くる「京都個性派古書店案内」も収録されています。そして表紙には三月書房のイラストも。この表紙画像
      はアマゾンで拡大して見てみてください。日販のサイトの画像は小さいし、集英社インターナショナルのサ
     イトには今日現在アップされていないしで、なんやかやと言われてはいますが、やはりアマゾンのサイトは
     便利です。
  
[#03]  日販への返品率

   2005年   書籍20.6% 雑誌34.5%
   2006年   書籍17.4% 雑誌28.0%
   2007年   書籍18.6% 雑誌26.8%
   2008年   書籍22.6% 雑誌29.1%
   2009年   書籍21.9% 雑誌28.0%
   2010年   書籍23.5% 雑誌28.4%
   2011年   書籍23.5% 雑誌27.2%
   2012年   書籍21.3% 雑誌31.0%   
   2013年   書籍21.8% 雑誌30.0%
   2014年   書籍21.3% 雑誌33.7%

 雑誌は少し増えてますが、雑誌のシェアは15%程度なので、影響はわずかです。書籍と雑誌に返品率ほぼ100%
 の常備を加えても、総返品率は25%位なので世間よりは少なくとも10%は低いでしょう。返品入帳は早くなる一方
 で、今年3月作成の荷受カレンダーによれば、日曜を除くと締日3日前の返品分まで締日に入帳可能となっていま
 す。ようするに水曜が月末締日だとすれば、月曜に返品した分まで入帳になるわけで、全国一律のようですから、
 物理的はこれが限界でしょう。

 
[#04] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その82)   

 ○あの「ガケ書房」が2月13日で閉店して、あの自動車が石積みから飛び出してるつかみ抜群の外観も消えました。
  少し南に移転して、店名を「ホホホ座」に変更し4月1日に再開店の予定だそうです。それにしても、なぜ全国的に
  売れた店名を捨てるのか、当事者以外は誰ひとり納得していないように思われます。というか、「ガケ書房」の場
  合、土地建物は賃貸だし、商品はほとんどが預かりもののはずだし、財産と言えるのはあの店名くらいしかない
  はずなのですが。
  移転先は「コトバヨネット」という雑貨とか古本とかを扱ってる店が2階に入っているビルの1階だそうで、「コトバヨ
  ネット」も「ホホホ座」に店名が変わるとのこと。ややこしくてよくわかりませんが「ホホホ座」というのは編集企画グ
  ループで、小売りの両店はそのアンテナショップという位置づけになるらしい。元ガケと元コトバヨの経営も統合す
  るのかどうかは聞いていませんが、丸善・ジュンク・文教堂のように、上にスポンサーがついているようでもないの
  で、どういうメリットがあるのか外部からはぜんぜんわかりません。少なくとも元ガケにとってはテナント料が少し
  安くはなるようですが。  
  [京都新聞2月12日の記事]

  
[#05] 近ごろちょっとまずいことになったらしい出版社など
 
 ○EDI(エディトリアルデザイン研究所)代表の松本八郎氏は、昨年9月に亡くなっておられました。うちの店では2000
  年頃から取引をはじめましたが、2013年末の火災にて同氏のお宅に保管されていた在庫が全焼してしまい、以後
  の補充は不可能となっていました。この件に関しての詳しいことはブログ「三月記(仮題)」2014年12月13日の記事
  をお読みください。  
  この版元の本を最後まで販売していたのは、古書店以外ではたぶんうちの店だけだったはずなので残念です。
  
 ○美術出版社が3月4日に民事再生法の適用を申請しました。ちかごろは「美術手帖」などの雑誌の入荷もなく、たま
  に単行本を仕入れるだけだったのでほとんど在庫はありません。ネット情報によれば、本業が不振で赤字が累積
  しただけのようなので、筋の悪い借金さえしていなければ、たぶん民事再生法で再出発できるでしょう。それにしても、
  20世紀末以来、美術系出版社は倒産や撤退が多いのはなぜなのでしょうか?カラー印刷のコストは大幅に下がっ
  ているらしいのに不思議です。

 ○リブリオ出版が2015年1月末にて出版業務を終了したという通知が、3月9日に日販からFAXされてきました。これ
  によると、紙しばいとカセット本の一部を除いて、すべての在庫商品の返品入帳が可能のようです。
  よーするに倒産ではなくて自主廃業らしい。以前にペヨトル工房がこの方式で廃業されたが、かなりの返品負担が
  あったと聞いたような記憶があります。それゆえ実質的には活動を中止していても、そのまま会社を存続させる方
  が損害が少ないので、放置しているゾンビ出版社も少なくないようです。近年、児童書系出版社の倒産や撤退も多
  いようですが、これはおおむね出生率の低下で説明がつくのでしょう。
     
 ○主に英語系学参を出版していた文建書房が倒産したらしいと知ったので検索してみましたが、ウィキペディアに
  「2014年9月に倒産」とあるのが見つかった程度です。たぶん「新文化」のサイトなどには載らなかったのでしょう。
  洛陽社の小西甚一本同様に、文建書房の超ロングセラー「和文英訳の修業」も筑摩文庫になるのでは。学参系
  の出版社の破綻も目立ちますが、これも出生率の低下が主因でしょう。


[#06]  etc.…

 ○不景気なのは本屋だけではないようで、八百屋も魚屋も個人商店は減少の一途のようです。京都の八百屋の組
  合加盟店はこの10年ほどで、半分以下になって現在80店程度らしい。むかしは商店街ではない裏通りにも、八百
  屋や魚屋がたくさんありましたが、いまでは商店街ですら、肉屋も魚屋も八百屋もないところがめずらしくありませ
  ん。ただし、組合に入っていないスーパーなどが大量販売しているので、青果物の売上そのものは、書籍と違って
  さほど落ちていないはずです。スーパーなどは卸売市場を通さずに仕入れることが多いので、青果卸商もたいそ
  う不景気なようですが。
  八百屋の組合とは別にくだもの屋の組合もありますが、京都の組合は去年だったかに解散したそうです。全国組
  織の日本果物商業協同組合連合会は図書券やビール券と同様のくだもの券(フルーツギフトカード)を発行してい
  ましたが、これは昨年3月で引き替えが終了しました。無期限有効ではあっても、告知期間を設定するとかのしか
  るべき手続きをすると、事業を終了することができるようです。うわさでは未使用残高を加盟店で山分けしたら1店
  あたり百万円にもなったとか。図書カードはくだもの券に比べるとはるかに規模も大きく、いちおう順調に運営され
  ているようなので、解散して山分けというおいしい話は、残念ながらいまのところ期待できないでしょう。
  
 ○クロネコメール便の廃止が突然発表になりました。たんに儲かっていないだけなら値上げすればよいだけの話な
  のですが、公式発表をみても、廃止の理由がいまいち理解できません。うちの店では、毎月100通位は通販に使っ
  ているので、4月からどうしたらよいのかぼちぼち決めたいのですが、いまだにヤマトから新サービス内容の案内
  がないので困惑しています。うちの店の場合は商店街組合の団体契約なので、個人契約とは違ってたぶん法人
  契約の新システムも利用できると期待しているのですが。それとは別に、今年から郵便局のクイックポストを少し
  利用していますが、これはクロネコの2センチ厚までと違って3センチ厚まで送れるのが便利で料金も164円均一
  と安めです。2〜3センチ厚の場合、従来は郵便局のレターパックライトを使ってましたが、これは360円でした。
  ただちょっと心配なのは、クイックポストを大勢が使いだしたら、郵便ポストが満杯になって入れられなくなるかも
  ということです。とくに土日は郵便局が休みだし、いちいち集荷を頼むのもめんどうです。高浜虚子が「ホトトギス」
  を創刊したときに、大八車に山積みにしたのを家の周辺のポストに入れて回って、すべて満杯にして叱られた話
  は有名ですが、似たようなことが発生するかもしれません。
  
 ○あいかわらず、いろんな紙誌でうちの店の宣伝していただいてます。
  うちの店には入荷していなかった、マガジンハウスの「(&).Premium」とかいう、覚えにくい名の雑誌には、3月号の
  本屋特集と4月号の京都案内記事とに連続で載りました。これもうちの店に入荷したことがない「致知」の2月号
  に、連載記事「書店員さんたちの創意工夫」の第11回目として載せていただきました。過去の10回がどんな書店
  の記事だったか、12回以降も続いているのかはまったく知りません。
  珍しいところでは台湾の生活・閲読誌「双河彎」の12月号に“小而大的知識殿堂”というタイトルで紹介していただ
  きました。ほかの雑誌の取材と同じようなことしか話してはいないのですが、漢文で読むとなにやらけっこうなこと
  が書いてあるような気がしてちょっと愉快です。“現在店主是第三代…宍戸先生説・因為店面不大”とか。台湾は
  大陸中国とは違って簡体字を使用していないため、字面を眺めていると半分位は理解できるみたいです。この雑
  誌の紙版はこの号で終了し、現在は電子本のみ販売されています。バックナンバーも購入できます。
  
  そのほかでは、アスタルテ書房に関する京都新聞の記事に少し名前を出していただきました。アスタルテ書房は
  ここ数年店主が闘病中で休業と再開を繰り返しておられますが、同店にはサイトもブログもないために、うちのブ
  ログにて告知のお手伝いをしてます。その関係で少し取材を受けました。この件にかんしてはブログをごらんくだ
  さい。
  

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 ☆出版人に聞く 16「三一新書の時代
      井家上隆幸(聞き手・小田光雄)
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[#01] 最近売れてるような気がする本(順不同)

  ◆「シュタイナーの言葉」飯塚立人・編/高橋巌・訳 春秋社
  ◆「人智学とはなにか」プロコフィエフ/和田他訳 涼風書林
  ◆「あもくん」諸星大二郎 KADOKAWA
  ◆「春宵十話」「春風夏雨」「夜雨の声」岡潔 角川ソフィア文庫
  ◆「京都『トカイナカ』暮らし」グレゴリ青山 集英社インターN
  ◆「(歌集)uta0001.txt」中澤系 双風舎
  ◆「神楽岡歌会 100回記念誌」岡井隆ほか 神楽岡歌会
  ◆「吉本隆明の逆襲」渡辺和靖 ぺりかん社
  ◆「吉本隆明 最後の贈りもの」潮出版社
  ◆「続・最後の場所 1号」編集/発行・菅原則生
  ◆「飢餓陣営42号」編集・佐藤幹夫 飢餓陣営発行所
  ◆「吉本隆明〈未収録〉講演集6・7・8巻」 筑摩書房
  ◆「吉本隆明全集 第8巻/第9巻」晶文社  
   「吉本全集」は第6回配本までは何とか25冊をほぼキープできていますが、入院中でまだ引き取
   りにこられない方もおられますし、これから全巻揃え始めるという方もめったに現れないでしょう
   から、先行きはかなり心細い情況です。「講演集」は毎月10日にきっちりと配本されているため、
   脱落者もなく毎巻35冊は確実に売れています。今後も遅延がなければほぼこのままの部数で完
   結まで持ちそうです。「最後の贈りもの」はやや苦しい編纂物でしたが、いちおう新刊なので50冊
   は超えています。
  ◆「鶴見俊輔 全詩集」編集グループ〈SURE〉
  ◆「脈84号:特集 中尾務の島尾敏雄・富士正晴」脈発行所
  ◆「独断的上林暁論」サワダオサム 壁書房
  ◆「天野忠さんの傘」山田稔 編集工房ノア
  ◆「ぽかん5号」山田稔ほか ぽかん編集室
   あいかわらず山田稔さんの本はよく売れます。先週出た「傘」は3日で25冊売り切り、連休最終
   日には在庫を切らせてしまいました。ブログでちょっと宣伝しただけですが、いまのところ大部分
   が通販です。年内に50冊超えは確実でしょう。   
   「ぽかん」は30冊以上売れてますが、これも山田氏が参加されていなかったら、おそらく半分くら
   いしか売れてないでしょう。
   というわけで、山田氏はいわゆる現代文学の棚では別格の人気です。なにしろ又吉氏 のです
   ら、芥川賞以前に1冊売れただけで、以後は1冊も売れてません。別に忌避しているわけではな
   く、それどころか又吉氏ご本人には、昨春の毎日新聞にて、よく行く書店として「三月書房」を大
   きく紹介していただいたこともあるくらいです。よーするにアマゾンほか全国どこの書店でも買え
   る本を、わざわざうちの店で買ってくれる人がおられないだけのことです。
   
       
[#02] これから売れそうな気がする本(順不同)

  ◆「(歌集)ゼクエンツ」河野美砂子 砂子屋書房※入荷済
  ◆「(歌集)むかれなかった林檎のために」中津昌子 砂子屋書房※入荷済
  ◆「(歌集)かなしき玩具譚」野口あや子 短歌研究社※入荷済
  ◆「(歌集)火光」真中朋久 短歌研究社※入荷済
  ◆「(歌集)暮れてゆくバッハ」岡井隆 書肆侃々房
  ◆「思想の機軸とわが軌跡」吉本隆明 文化科学高等研究院出版局
  ◆「吉本隆明×山本哲士 対話編 思想を読む 世界を読む」同上
  
  
[#03]  短歌本の売上げ(TOP10) 2014/06〜2015/05

  01 19冊 「(歌集)流木」高野公彦 角川学芸出版
  02 14冊 「(歌集)行け荒野へと」服部真里子 短歌研究社
  03 13冊 「(覆刻版歌集)踏繪」柳原白蓮 ながらみ書房
  04 10冊 「(歌集)きなげつの魚」渡辺松男 角川学芸出版
  04 10冊 「(再刊歌集)uta0001.txt」中澤系 双風舎
  06  9冊 「(歌集)ひだりききの機械」吉岡太朗 短歌研究社(a)
  07  7冊 「(歌集)声を聞きたい」江戸雪 七月堂
  07  7冊 「塔事典」永田和宏ほか監修 塔短歌会 
  07  7冊 「(歌集)泥と青葉」小島ゆかり 青磁社(b)
  10  6冊 「(歌集)銀色の馬の鬣」岡井隆 砂子屋書房
   ※(a)通算14冊、(b)通算19冊
   
   短歌本の売れ行きは徐々に落ちています。上記は冊数ですが、金額ベースだともっと落ちているで
   しょう。現在やたらに元気なのは書肆侃々房ですが、ここは新鋭の1700円のシリーズに続いて、中
   堅ベテランの2000円超のシリーズも始めました。以前はどこの版元でも主流だった、ハードカバー
   の3000円前後のははっきりと減少傾向にあります。実際のところ、歌集はもっと行間を詰めればま
   だまだ頁数を減らすことが可能ですから、これからは廉価な本が主流となるでしょう。それで売上部
   数が増えればよいのですが、読者の高齢化は避けがたいので、横ばいならよいほうでしょう。
  

[#04] <天に唾する>京都の書店のうわさ(その83)   

 ○数年前から治療法未発見の稀病で入退院を繰り返しておられた、アスタルテ書房の佐々木店主が
  6月15日にお亡くなりになりました。アスタルテさんにはブログもサイトもなかったので、うちの店のブ
  ログで営業情報などの告知のお手伝いをしていた関係で、ネットに訃報をアップしたのはうちのブロ
  グ
が最初でした。
  奥様はもともとお店にはほとんどかかわっておられなかったし、ご子息は東京在なので、そのまま閉
  店されそうな情況でしたが、古本組合の人たちなどのすすめにより、現在は閉店セールを実施され
  てます。行ったひとたちの話だとかなりよく売れているそうですが、いつまで続けられるのかは聞いて
  おりません。いずれにしても、あらたな仕入れは無理でしょうから、そう長くはないでしょう。ただし、店
  舗は賃貸ではなく、自前だそうですから時間的な制約はなさそうです。丸ごと引き継いでくれる人を
  捜されているといううわさも聞きましたが、詳しいことは知りません。  
  アスタルテはここ30年、京都を代表する書店として、ガイド本等には必ず紹介されていて、遠来客も
  多くついでにうちの店にも寄ってくださる人も少なくありませんでした。それでなくても壊滅的な状況に
  なりつつある河原町周辺の書店業界にとっても、うちの店にとっても大きな痛手です。
  
 ○新築中の京都BALは8月21日開業予定で、「丸善 京都本店」のサイトによれば地下1階と地下2階に
  て“地区最大級のカフェ併設大型書店”とのことです。売場面積千坪は以前のジュンク堂の末期より
  もかなり狭くなっているはずですが、テナント料は高くなっているでしょうから、いまどき維持できるの
  かどうか、カフェというのはそんなに儲かるものなのか、この手の大型書店の経営についてはまった
  く知らないのでどうなることやら見物です。「檸檬」の舞台になったのは三条通の旧店舗なのに、河
  原町通の旧店舗だと間違えそうな、紛らわしい宣伝をしているのがいささか気になりますが…。   
    
 ○今年に入ってから京都市内の新刊書店の閉店が続いています。直接確認はしていませんし、外か
  ら見たら閉店でも実は外商だけは続けておられる場合もありますから、店名を上げるのは控えてお
  きますが、左京区、東山区、上京区、中京区で計5店ほどあるようです。いろいろ聞いてみると、や
  はりテナントのところが多いようです。自前の店舗で家族従業員のみのところか、取次が強力にサ
  ポートしている多店舗展開のところ以外は、存続がますます難しくなりつつあるような感じです。
 
 
[#05] 近ごろちょっとまずいことになったらしい出版社など
 
 ○栗田出版販売の破産はさほど意外でもありませんでしたが、大阪屋ほかによる再生計画の奇抜
  さには驚きました。ほんとに、債権額の五割増しにもなろうかという返品負担を出版社は受け入れ
  るのでしょうか?うわさでは小学館、集英社、講談社が主導しているようですが、一番大口のKADO
  KAWAは上場企業なので、株主代表訴訟のリスクもあって、すんなりとは受け入れられないでしょう。
  (現在、KADOKAWAのサイトにはこの件に関するIR情報は開示されていないようです)。これが栗田
  だけのことなら、取引書店のこともあって我慢する出版社も少なくないかもしれませんが、これが今
  後の取次の倒産処理の標準になる可能性が大きいのが問題で、出版協(旧・流対協)など多くの出
  版社が反対しているのは、当然でしょう。
  それにしても、出版業界の会計処理はなぜこんなに複雑でわかりにくいのでしょうか。書店は返品
  条件付き買い切りなので、在庫は書店の物かと言えばどうもそうでもないようで、うちのように100
  %支払っていても、契約上では取次になんらかの所有権があるようです。それなら取次の在庫は
  といえば、こちらは栗田のように支払いが滞っていても、なぜか取次に所有権があるらしく、しかも、
  “片面的解約権(返品権)付売買契約”とかがあるため、出版社は返品逆送とか入帖拒否とかが
  できないのだそうです。この件は今回が初耳でしたが、ほんとにそんなことがありうるのか、現実
  的に可能なことなのかはいまのところわかりません。その一方で再販制のおかげで定価が付い
  ている出版物は、業界内ではパチンコ屋の換金用景品のようにぐるぐる回っています。そして、
  常備寄託は間違いなく出版社の所有物のはずなのですが、現物はとっくに返品済みか販売済み
  かで空っぽなのに、毎年毎年伝票切り替えだけで、一円も払わずに先送りしている分が業界全
  体ではかなりの額になると言われています。栗田にもその手の常備があるはずですが、これを
  そのまま大阪屋に回すことに出版社は同意するのでしょうか?常備の分だけでも商品を引き上
  げることは無理なのでしょうか?
  いま思えば、今世紀はじめの鈴木書店の場合は、栗田のような総合取次ではなく専門取次でし
  たし、民事再生ではなく破産処理でしたから、こんなにも複雑ではありませんでした。栗田の場
  合も取引書店の帳合変更さえ可能ならば、民事再生をあきらめて破産処理する方がうんと簡単
  でしょう。それから、書店が取次に預けている取引保証金はこういう場合どうなるのでしょう。せ
  めて支払いと相殺ならまだしもですが、一般債権扱いされるのならたまったものではないでしょ
  う。うちの場合鈴木には一円も預けていませんでしたのでこの件は経験がありません。
  なお、現在も進行中の栗田関連については、いまのところ月曜社のブログがもっとも便利かつ
  有用と思われますのでおすすめします。 
  
 ○パッチワーク通信社が6月上旬に事業を停止したそうですが、うちはたまに客注はあったかも
  しれませんが、ほぼ扱いがありませんでした。

 ○国土社が7月3日に民事再生法の申請をしました。栗田の連鎖倒産第一号といわれています。
  うちの店では1970年代は「1たす1は2にならない (三浦つとむ)」や「火曜日には火の用心 (板倉
  聖宣)」をたくさん売った記憶がありますがちかごろは、ほとんど何も扱った記憶がありません。
  
 ○ひとり出版社としてけっこうがんばっていた京都の冬弓舎が、舎主の事故死によりほんとに困っ
  たことになってしまいました。相続人は未成年の娘さん一人だけですが、このままでは既刊本の
  在庫管理も難しいでしょう。現在、出版関係のご友人方が動いておられますが、いまのところ先
  行きは未定です。当面、地方小出版センターに在庫のある分はそのまま流通可能のはずです
  が。この件に関してはブログ「三月記」 の記事をお読みください。
  

[#06]  etc.…

 ○クロネコメール便は3月末で廃止になりましたが、うちの店は商店街組合の団体契約なので、
  いまのところメール便が利用できていています。速達メール便はなくなりましたが、1センチ厚
  と2センチ厚の区別がなくなり、以前よりも便利で安くなってます。出版社などの大口客も、以
  前同様メール便を使ってるようですから、ひょっとしたら、細かくて面倒な個人客を振り落とし
  ただけなのかもしれません。いずれにしろ、10月末には、現在の仮延長は終了し、新たな契
  約が結ばれるそうです。現状が維持されるとよいのですが。
   
 ○あいかわらず、いろんな紙誌でうちの店の宣伝していただいてます。
  なんと言っても最高なのはグレゴリ青山さんの「京都『トカイナカ』暮らし」で、三月書房が実名
  で出ている「京都個性派書店案内」ほか、数カ所に小生または小生らしき人物が登場します。
  よーするに、この本にも出てきますが、元パルナ書房、ガケ書房(現ホホホ座)、萩書房、恵文
  社の店主や店長とグレゴリさんでやってる飲み会での話題がいろいろネタになっているわけ
  です。売り行きはグレゴリ本史上最高最速で、「スケオタ」の3倍以上は売れてます。また、店
  番していると読んだと声をかけてくれる方もかってない多さです。

  京都のフリーマガジン「ハンケイ500m」は市内のバス停留所を毎号一つ選んで特集していま
  す。この25号は“京都市役所前”という河原町二条のバス停の特集で、うちの店もインタビュー
  記事を載せていただきました。この雑誌は編集者やライターのレベルがかなり高いようで、
  うちの町内のお寿司屋さんのインタビューなどはたいへん読み応えがありました。これらの
  記事はネット上で無料公開もされてます。
  
---◎受贈御礼 勝手に宣伝◎---------------------------------------
  ☆出版人に聞く 17「『『週刊読書人』と戦後知識人
      植田康夫(聞き手・小田光雄)
       定価1600円+税 論創社
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この「販売速報(仮題)」はe-mailの性質上,簡単に改訂することができ
ますが、その度に全読者に送信するのは、お互いに煩わしいので、最終版
をおよそ1ヶ月後にHPに掲載します。

   ◆1998/11/27 創刊準備号(通巻01号)発刊
   ◆「バックナンバー(01〜120号)」はHPにて公開中です。
     
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     (c)SISIDO,Tatuo     三月書房

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三月書房販売速報[122]
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2015/12/08[17-03-122]  (c)SISIDO,Tatuo    *転送歓迎* 

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 122号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#00] 栗田の破綻に続き、日販の本業の赤字転落が話題になっています。   
   再販制と委託制を今後も継続したければ、版元が正味を下げる必要
   があるという方向に議論は進みつつあるようですが、その議論の前
   提になるべき正味の現状について全体を把握しているのは取次だけ
   であり、いまだかってその詳細が公表されたことがありません。
   鈴木書店倒産の翌春に当時の流対協の会長が某誌にて、書店は版元
   ・取次間の正味を知らないし、版元も取次が書店にいくらで売って
   いるかよく知らない、という意味のことを語っておられます。こう
   いう基礎的なデータなしに正味問題を書店や出版社が語っても、本
   質的な議論が成り立たつわけがありません。
   そこそこの規模の書店は取次とは一本正味がふつうなので、個別の
   出版社ごとの正味はまったくわかりませんし、興味すらないでしょ
   う。一本正味をやめて出版社別の個別正味に戻せば、書店側も正味
   体系のいびつさにいまさらながら気が付いて、取次との共闘も可能
   になるはずなのですが、書店は取次との一本正味を下げる交渉にの
   み腐心し、そのためには帳合変更もありという状況が続いています。
   この件に関して、小生が「出版ニュース」の2002/08/中旬号に寄稿
   した記事があり、久しぶりに読み返したところ、われながら上出来
   で、いまだにほぼそのままで通用するであろうことに気づきました。
   こちらに貼ってありますので読んでみてください。  
   なぜこの記事がいまでもそのまま通用するのかといえば、この13年
   間、正味問題がほとんど改善されていないからでしょう。上記記事
   にも書きましたが、うちは極小書店なので日販とは一本正味ではな
   く個別正味です。そこで当時の出版社別の正味を、関係者限定のメ
   ルマガで公表したことがあるのですが、最近調べてみたところ、こ
   の正味は現在もほぼ変わっていないことがわかりました。いずれま
   とめて、転送禁止の限定版として所属とお名前のわかっている業界
   関係者のみに送信予定です。関心がおありの方はお申し込みくださ
   い。匿名の方と業界外の方には送信できませんのでご容赦ください。
   ちなみにこの問題の解決策としては、出版社が正味を思い切って下
   げるかわりに、常備や長期の伝票切り替えを今後一切認めないこと
   にすれば、業界内に潜在すると言われる、開店商品に関する莫大な
   不良債権の先送りが減少するのではと思うのですが、まあ難しいで
   しょうね。


[#01] 最近売れてるような気がする本(順不同)

  ◆「死者の書1」折口信夫原作/近藤よう子 KADOKAWA
  ◆「(歌集)思川の岸辺」小池光 KADOKAWA
  ◆「評伝・河野裕子 たっぷりと真水を抱きて」永田淳 白水社
  ◆「(歌集)蓮喰ひ人の日記」黒瀬珂瀾 短歌研究社
  ◆「(歌集)暮れてゆくバッハ」岡井隆 書肆侃々房
  ◆「エーテルと生命力」E・マルティ/丹羽敏雄訳 涼風書林
  ◆「魂の救済」リーヴァフッド/丹羽敏雄・訳 涼風書林
  ◆「セラピーとはなにか」佐藤幹夫編 言視舎
  ◆「脈 85号 特集・谷川健一と沖縄」比嘉加津夫・編 脈発行所
  ◆「脈 86号 特集・車谷長吉の文学世界」比嘉加津夫・編 脈発行所
  ◆「感想文集(天野さんの傘)」ぽかん編集室
  ◆「APIED Vol.25 武田百合子特集」アピエ
  ◆「弓立社という出版思想」宮下和夫(聞き手・小田光雄) 論創社
  ◆「吉本隆明〈未収録〉講演集9〜12巻」 筑摩書房 
  ◆「思想の機軸とわが軌跡」吉本隆明 文化科学高等研究院出版局
  ◆「吉本隆明×山本哲士 対話編 思想を読む 世界を読む」同上
   文化科学高等研究院出版局の取次はJRCのみなのですが、このJ
   RCの使い勝手の悪さにはほとほとうんざりしてしまいます。誤解
   のないように言っておきますと、JRCが直接配本している首都圏
   の書店にとっては、昔の鈴木書店とほぼ同様に便利なのでしょう。
   問題なのはわれわれ地方書店への仲卸機能の方で、これは話になり
   ません。なぜか日販との間に日教販も挟まるので、正味は高いし、
   注文品がどこで止まっているのかも把握できません。その上、昔の
   鈴木書店の悪癖が残存しているのか、書店別の配本記録がないらし
   く、未着を問い合わせても、出したはずです、以外の返事はありま
   せん。その問い合わせも、FAXやメールでは返信がなく電話しか応え
   がありません。上記の吉本本は同日発売だったのに、片方は結局1
   週間も入荷が遅れました。不可解なこと限りありませんが、2冊注
   文している人も多くて説明するのに苦労しました。地方小出版セン
   ターだったらこんなに不便なことはまったくないのですが。
   
       
[#02] これから売れそうな気がする本(順不同)

  ◆「『思想の科学』私史」鶴見俊輔 編集工房<SURE>
  ◆「無言歌 詩と批評」築山登美夫 論創社※入荷済
  ◆「(歌集)桜の木にのぼる人」大口玲子 短歌研究社※入荷済
  ◆「(歌集)午後の蝶(短歌日記2014)」横山未来子※入荷済 
  ◆「近代短歌の範型」大辻隆弘 六花書林※入荷済  
  ◆「短歌時評集;読みと他者」吉川宏志 いりの舎※入荷済
  ◆「(歌集)昼の夢の終わり」江戸雪 書肆侃々房※入荷済
  ◆「(歌集)吹雪の水族館」米川千嘉子 KADOKAWA※入荷済
  ◆「飢餓陣営43号:特集・村上一郎他」飢餓陣営発行所
    

[#03]  <天に唾する>京都の書店のうわさ(その84)   

 ○「出版ニュース 2015年10月中旬号」掲載の「書店販売金額の推移」に
   ランクインしていた京都市に本社のある書店グループは下記の4店
   でした。2014年の販売金額順。

   ・030位 大垣書店   91.3億円 7.5%増
   ・061位 ふたば書房  34.6億円 0.9%増
   ・204位 恵文社     5.6億円 6.4%増
   ・372位 ハネサン    2.0億円 ……

   大垣とふたばは例によって支店数の増減がわからないので、実情は不
   明です。コンビニのように既存店売り上げの推移がわかるとよいので
   すが。恵文社は2008年の6.41億円から2013年の5.24億円まで下降を続
   けていましたが、2014年は久しぶりに増加してます。一乗寺店ではな
   く長岡京の支店が好調だったのではとのうわさも聞きましたが、詳細
   は不明です。ハネサンという初耳の書店が突然登場したのでネットで
   検索したところ、紅葉書店という店名で2店舗あり、主として成人向
   けのコミックやDVDなどを販売しているようです。四条西院店は以前は
   景虎書店という店名でしたから、おそらく信長書店のような店だった
   のでしょう。現在の店は同社のサイトを見る限りではゲオ的な感じに
   思えますが、入店したことがないので実際のところとはわかりません。
   いずれにしても、ふつうの新刊書店ではなさそうです。  
 
 ○京大のそばで洋書を扱っていた「ガリア書房」が7月末に閉店してました。
  同店のサイトには「当店は、2015年7月末をもちまして閉店させて頂きま
  した」という告知が掲示されていましたが、現在はそのサイトも削除され
  たようです。
  
 ○恵文社一乗寺店の元店長だった堀部氏の「誠光社」が11月25日に開業し
  場所は河原町通りの一筋東で丸太町通りから数十米北に入ったあたり。
  よーするに裏通りですが、近辺はここ数十年来の低迷をやや脱しつつあ
  り、エスニック料理店とか雑貨屋とか、新しいタイプの店が増えつつあ
  ります。2回見学に行き、一度は夜中まで飲み会をしてもらったので、い
  ろいろ取引関係の詳しい話も聞けましたが、いずれご本人が公表される
  はずなので控えておきます。
  さしあたっては、京都新聞のサイトに2015年11月15日付で「街の本屋、
  直仕入れで復権を 京都・恵文社元店長が独立」という記事が無料公開
  されていますのでお読み下さい。「新たな店ではできる限り取次店を通
  さず、出版社からじかに本を仕入れることで双方の利幅を増やす。すで
  に筑摩書房や河出書房新社、晶文社などの協力を得た。」というあたり
  が、栗田倒産後の出版業界において、大きな関心を呼ぶことでしょう。
  うちの店からは700米ほどなので徒歩10分程度です。旧ガケ書房〜萩書
  房B〜恵文社一乗寺のようなコースに、三月書房〜誠光社もなってくれ
  るとよいのですが。このルートには「ギャルリー宮脇」「Hifi Cafe」
  「ヨゾラ舎」「大龍堂書店」などもあります。「藝林荘」「文苑堂書店」 
  「彙文堂」「文藻堂」「文華堂」などの古書肆もありますが、これらは
  専門性が高すぎるので敷居が高いかも。ついでながら三月書房から南に
  は「芸艸堂」「尚学堂」「100000t」などもあります。
  とにかくなかなかよい本屋なので今後が楽しみですが、感想はもう少し
  時間を置いてから、ブログ「三月記」に掲載の予定です。ホホホ座も行っ
  てみたいのですが遠いのでなかなか気が向きません。山下君は来なくて
  いいと言ってるし、ガケ書房も入らずじまいでした。
  
  
[#04] 近ごろちょっとまずいことになったらしい出版社など
 
 ○「ケーイー(旧近代映画社)」が10月初めに倒産。「スクリーン」は
   1960年代にはうちの店でも売れていましたが、その後はぜんぜん扱っ
   てません。ちかごろは映画とは関係のないパズル本などを量産して
   いたようですがうまく行かなかったのでしょう。この社の本は近年
   八木書店のバーゲン本に大量放出され続けていましたから、経営不
   振らしいことは以前から気づいていました。バーゲン本に放出する
   のはよいのですが、ある程度年月が経過した本を節度をもって放出
   しないと、この出版社はヤバいのかなと邪推してしまいますのでご
   注意ください。
   

[#05] etc.…

 ○家族が数ヶ月前から、NTTドコモのスマホ向け電子雑誌読み放題サー
  ビス「dマガジン」を利用しだしたので時々借りて読んでます。現在、
  160誌以上が読めて月額400円+税はたいへん安い。週刊誌も多いし隔
  週刊なども入れると月300誌近くが読める上に、バックナンバーもか
  なりの冊数が公開されてます。各誌の内容は、紙版ときっちりとは見
  比べてはいませんが、自社広告以外の広告がカットされているほか、
  記事やグラビアの一部(もちろん袋とじも)は非公開のようです。そ
  れでもおそらく記事の90%程度は読めるようです。うちの店は雑誌は
  元々少ない上に、ちかごろは週刊誌まで入荷しなくなりつつあるので、
  これで読めて助かります。432円は安すぎるように思いますが、ドコ
  モの商売としてはスマホの通信費で儲けようとしているのでしょう。
  うちではスマホよりも画面が大きなタブレットで、Wi-fi接続なので
  余分な通信費は一切かかりません。公衆Wi-fiがもっと普及すれば、
  ドコモの収入は増えないように思いますが、そのあたりはどうなので
  しょう。出版社の取り分は不明ですが、仮に契約者1名あたり1円の収
  入なら月に250万円以上になります。まだしばらくは会員数も増えそう
  なので、雑誌の経営を下支えしてくれるようになるかもしれません。
  新聞は潰れてもいいけれど、週刊誌がつぶれるとつまらない世の中に
  なりそうですから。
  
 ○クロネコメール便は大口向けのDM便が、11月以降も継続して利用でき
  ることになったので、2センチ厚までの低額商品は引き続きこれで発
  送できます。3センチ厚未満はクリックポストが安くて早くて便利です。
  クロネコの新商品のネコポスはレターパックライトよりも薄くて高く
  て使えません。3cm超の場合はレターパックプラスか宅急便となります。
  宅急便コンパクトは今のところ意味不明としか思えません、
  
 ○あいかわらず、いろんな紙誌でうちの店の宣伝していただいてます。
  「毎日新聞」の10月21日号に載った「ブックウオッチング 街の本屋
  さん 三月書房(京都市中京区)」はたいへんけっこうな記事でした。
  やはりいまだに新聞の影響は少なくないようで、お客よりも近所の人
  とか、遠方の知人などからの反響が少なくありませんでした。この記
  事は毎日新聞のサイトで今のところは制限無しで読めるようですが、
  いずれは有料記事に格納されるでしょう。
  
  アスペクト文庫「わたしのブックストア:あたらしい『小さな本屋』
  のかたち」には、ガケや恵文社のついでにちらと出てきます。朝日文
  庫「京ものがたり:作家・スター25人が愛した京都ゆかりの地」は新聞
  連載に加筆修正したもので、うちの店のは昨年4月8日の夕刊に掲載さ
  れた分が元になっています。「本屋へ行こう!!」(洋泉社MOOK)は昨
  年出た「本屋はおもしろい!!」の続編で前号で紹介されなかった書店
  が主に取り上げられているようです。うちは前回大きく載せて貰いま
  したが、今回は「私の棚づくり論」というところに少し載ってます。
  日本文芸社の「名所は行きつくした、遊びつくした人へ BURA京都」
  に出てくる京都の書店は善行堂と三月書房のみ。選択理由は聞いてま
  せん。ほかにもいろいろあったはずですが思い出せません。
  

[#06] おまけ

 ○週刊読書人のアンケート「2015年の収穫」
  今回初めて依頼を受けたのでさっそく書いてみたら、要項を間違えて
  400字でなく800字書いてしまったので、労力を無駄にしないために貼っ
  ておきます。現物は12月11日号に400字の短縮版で掲載されました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
  山田稔『天野さんの傘』編集工房ノア。
  この本のよいところは、愉しく読めることはもちろんのことながら、
  取り上げられた著者や本を次々に読みたくなり、読書の幅が広がるこ
  とです。大橋吉之輔著『アンダスンと三人の日本人―昭和初年の「ア
  メリカ文学」』などという本は、この機会がなければ一生読まなかっ
  たでしょう。この大橋著には草野心平や萩原恭次郎なども出てきて面
  白いので、どこかが文庫化してくれるとよいのですが。ついでながら、
  松尾尊兌著『中野重治訪問記』の文庫化もよろしく。 

  町田康・訳『宇治拾遺物語 』(「日本文学全集08」所収)河出書房新社。
  「週刊新潮」の書評欄で佐久間文子氏が“めくるめく読書経験をした”
  と書かれていたので読んでみたら、ほんとに凄かった。その佐久間氏
  は東京新聞に掲載された伊藤比呂美氏のエッセイで知られたとのこと。
  ちかごろ新聞や雑誌の売上が低下しつつあり、書評の効果が薄れつつ
  あると言われていますが、まだまだ有用であることがよくわかりまし
  た。この『宇治拾遺物語』には全体の二割未満の三十篇ほどしか選ば
  れていませんが、ぜひもっと多く訳していただき、近藤ようこ氏あた
  りの挿絵を入れた単行本にしていただきたい。

  『最後の御前会議 戦後欧米見聞録 - 近衛文麿手記集成』中公文庫。
  今年読み返してもっとも印象深かったのは、戦乱と自然災害と飢饉に
  襲われ続けた鴨長明の時代と、戦争末期における自身の体験を織り交
  ぜた堀田善衛の「方丈記私記」でした。存亡の危機に立たされた“支
  配階級というものの中枢は、面白いほどに等質なものであるというこ
  との、一つの症例”として、近衛文麿の上奏文が引用されています。
  曰く“所謂右翼は国体の衣をつけたる共産主義なり”、“敗戦だけな
  らば、国体上はさまで憂うる要なしと存候”。この上奏文の全文が文
  庫本で手軽に読めるようになったのはありがたい。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
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  ☆出版人に聞く 18「弓立社という出版思想
        宮下和夫(聞き手・小田光雄)
          定価1600円+税 論創社
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この「販売速報(仮題)」はe-mailの性質上,簡単に改訂することができ
ますが、その度に全読者に送信するのは、お互いに煩わしいので、最終版
をおよそ1ヶ月後にHPに掲載します。

   ◆1998/11/27 創刊準備号(通巻01号)発刊
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三月書房販売速報[123]
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2016/04/12[18-01-123]  (c)SISIDO,Tatuo    *転送歓迎* 

     e-mail版 三月書房 販売速報(仮題) 123号
     
      ※いちおう出版業界向けに制作してます※
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[#00] 栗田に続いて大洋社も破綻し、いよいよ出版業界は全崩壊まで、残
   すところ首の皮1.3枚位というあたりでしょう。現在の出版業界は
   われわれが学生のころ誰かの下宿でやっていた麻雀みたいになって
   います。よーするに本や雑誌は麻雀の点棒やポーカーのチップのよ
   うなもので、ゲームの中でしか通用しません。勝敗は1局ごとには
   清算せず、帳面にメモ書きしてあるだけ。いずれは現金で清算する
   ことになっているのですが、負けが込んでいる書店と取次は清算し
   ようとせずに、毎日毎日負け続けています。出版社はこのままだと
   勝金はおろか、なんだかんだと立て替えさせられている、飲食費と
   かも返して貰えそうにない…というような。

   前号にて「再版制」と「委託制」を続けたければ正味を下げないと
   書店も取次も持ちそうにないから、その議論の前提となる出版社別
   正味リストを公開とする予告しましたが、2016/02/16付にて転送禁
   止の出版業界限定配布号外として送信しました。結論から言えば、
   2002/03/09に送信したデータとごく一部を除いてほとんど変化はな
   いようでした。
   書籍の出版社別正味は医学書等特別なところを除くとおおよそ77か
   ら82まで5ポイントの幅がありますが、とりあえず80以上のところは、
   低正味の出版社に負担をかけているわけですから、数ポイント下げ
   るべきでしょう。定価別正味の版元もごく少しあり、昭和47年10月
   の覚書の77〜81の4段階で変わりはないようですが、これも下方修正
   してほしいものです。実際のところ、いまさら少々正味が下がった
   ところで、根本的な解決にはなりそうにありませんが…。
   

[#01] 最近売れてるような気がする本(順不同)

  ◆「『思想の科学』私史」鶴見俊輔 編集工房<SURE>
  ◆「高橋巖著作集 第2巻〜第5巻」編纂・発行/岡澤幸雄  
  ◆「アルテリ 創刊号」石牟礼道子、渡辺京二他 アルテリ編集室
  ◆「みすず 2016年1/2月号 読書アンケート特集」 みすず書房
  ◆「(歌集)吹雪の水族館」米川千嘉子 KADOKAWA
  ◆「(歌集)砂丘律」千種創一 青磁社
  ◆「森岡貞香の秀歌」花山多佳子 砂子屋書房  
  ◆「桜前線開架宣言 現代短歌日本代表」山田航・編著 左右社 
  ◆「近代短歌の範型」大辻隆弘 六花書林       
  ◆「短歌時評集;読みと他者」吉川宏志 いりの舎
  ◆「追憶の風景」福島泰樹 晶文社
  ◆「続・最後の場所 2号」編集・発行/菅原則生
  ◆「LEIDEN──雷電9号」瀬尾育生ほか 雷電舎
  ◆「VAVばぶ 25号」脇地炯ほか 編集/発行・陶山幾朗
  ◆「流砂10号」 「流砂」編集委員会(発売・批評社)
  ◆「飢餓陣営43号:特集・村上一郎他」飢餓陣営発行所
  ◆「脈 87号 特集・谷川雁幻の論考・エッセイ拾遺」 脈発行所
  ◆「自己史の試み 安曇野/京都/名古屋」平林一 白地社
  ◆「全南島論」吉本隆明 作品社
  ◆「川崎彰彦傑作撰」川崎彰彦傑作撰刊行委員会


[#02] これから売れそうな気がする本(順不同)

  ◆「脈 88号 特集・村上一郎」 脈発行所
  ◆「(歌集)雨る(ふる)」渡辺松男 書肆侃侃房※入荷済
  ◆「(歌集)水に沈む羊」山田航 港の人※入荷済
  ◆「渡辺京二」三浦小太郎 言視舎※入荷済    
  ◆「アジア的ということ」吉本隆明 筑摩書房※入荷済
  ◆「イメージとしての唯一者」大月健 白地社※入荷済
  ◆「鶴見俊輔」村瀬学 言視舎


 [#03] 去年ほんとうによく売れた本

   一番売れたのは、2月に修羅出版から出た吉本隆明「農業論拾遺〜
   世界認識論」
で、これは初回入荷分150冊を完売しました。制作部数
   200部の自主流通本で、頒価1000円(税込)と安かったし、しかも取扱
   店はうちだけだったので、これは不思議な部数ではありません。こ
   の本は最終追加が20冊入荷し、現在残部10冊未満です。
   
   次によく売れたのが編集工房ノアから7月に出た、山田稔「天野さん
   の傘
」で、年内に82冊も売れました。税込2160円の本が半年でこん
   なに売れるということは、〈吉本〉本でもめったにありません。こ
   の本は今年に入ってからも売れ続けていて、すでに通算100冊を越え
   ています。山田稔氏の本はどれもよく売れますが、通算では2000年
   に出た「北園町九十三番地」の数百冊が最高です。
   
   3番目はたぶんグレゴリ青山「京都『トカイナカ』暮らし」。はっき
   りした数字は調べてませんが60冊は越えているはす。
     

 [#04]  日販への返品率

   2010年   書籍23.5% 雑誌28.4%
   2011年   書籍23.5% 雑誌27.2%
   2012年   書籍21.3% 雑誌31.0%   
   2013年   書籍21.8% 雑誌30.0%
   2014年   書籍21.3% 雑誌33.7%
   2015年   書籍20.0% 雑誌34.3%
   
 書籍は少し減り、雑誌は少し増えてますが、雑誌の仕入れは書籍の2割
 以下なので、全体としては微減でしょう。もう少し下げる余地もあるは
 ずなのですが、ムックとコミックはシステム上定期改正が不可能なのだ
 そうで、これが可能になれば雑誌は10%以上減るでしょう。書籍の場合
 パターン配本は断っているのに、それでもよくわからない配本が少し来
 ます。例えば、以前にはぜんぜんなかった新潮社の単行本の配本が少し
 来るようになりましたが、川島なお美とかつんく♂とか、うちではまっ
 たく需要がありません。売上カードの分析の結果だと思うのですが、お
 そらくこれらの本は芸能本とかタレント本ではなくて文芸書に分類され
 ているのでしょう。
 

[#05]  <天に唾する>京都の書店のうわさ(その85)   

 ○みすず書房の書店別売上げランキング(2014/12〜2015/11)
  今回も京都関係の書店のみ、売上げ冊数の前々回(2012/12〜2013/11)
  との比を計算してみました。※前回(2013/12〜2014/11)分は未入手。
  ( )内は全国順位。(D )は大学生協順位
   1(D2) 京大生協ルネ           +20%
   2(20) ジュンク堂京都店         - 7%
   3(D5) 同志社生協今出川         - 8%
   4(D7) 立命館生協ブックセンターふらっと +13%
   5(84) 大垣書店イオンモール京都店    +28%
   6(86) アバンティBC           + 3%
   7(87) 大垣書店烏丸三条         -17%
   8(92) MARUZEN京都本店          ……
   9(99) ジュンク堂京都朝日会館店     - 5%

  『21世紀の資本』の14万部というのがあったので、みすず書房は景気
  がよかったはずですが、京都のリストだけではいまいちよくわかりま
  せん。全国の状況については小田光雄氏の「出版状況クロニクル95」   
  に詳しいのでそちらをごらんください。
  
  京都で注目は8月21日オープンの「MARUZEN京都本店」ですが、その開
  店に伴って閉店した仮店「ジュンク堂京都朝日会館店」の分を加える
  と、全国34位あたりになります。ここが順調なのかどうかは、通年営
  業となる次回を見てみないとなんとも言えないでしょう。前々回まで
  下位に顔を出していた「恵文社一乗寺」が消えていますが、あまりあ
  の店向きの新刊がなかったのかもしれません。
  
 ○円町にあった「ブックスランボー」が12月末に閉店されました。
  1980年代の開業で、“詩人のランボーが好きで、そのまま店名にしま
  した”とはいうものの、とくに文学書が多いというわけではなく、地
  元でなかなか評判のよい〈街の書店〉だったようです。  

 ○2016年1月10日、岡崎の旧京都会館内に「京都岡崎 蔦屋書店」がオー
  プンしました。まだ見学に行ってませんが、勧業館での春の古本祭り
  のついでに行ってみる予定です。 
   
 ○2016年1月21日、京都市営地下鉄烏丸御池駅構内に「Kotochika御池店」
  がオープンしました。京都新聞によれば、大垣書店28店舗目で広さ100
  平米だそうです。この駅は烏丸線と御池線の乗換駅なので時々利用す
  るのですが、わざわざ探す気にもならないのでまだ見学してません。
  案内板によれば烏丸線ホームの階にあるらしいのですが。
    
 ○「月刊京都 2016/5」は“特集・気になる京の本屋さんへ行こう”で
  す。この手の特集はほんとに飽き飽きするほど見かけますが、あいかわ
  らず需要があるのでしょう。うちの店もちゃんと載せていただいてるの
  でありがたいことではありますが。
  京の本屋さんへ行こう
   

[#06] 近ごろちょっとまずいことになったらしい出版社など

  グーグルで“出版社倒産”と検索すると、三月書房のサイトの「
最近消
  えた出版社の本
」のページが3番目あたりに出てきます。業界紙でもな
  いし、たいした手間もかけてないのにこんなに上位なのは、この手のリ
  ストのもっとまともなのが他に無いからなのでしょう。もともとは、出
  版社の破綻による返品不能品を、少しでも販売できたらということで始
  めたページなので、うちの店とあまり縁がなかった出版社のことはほと
  んど無視していました。しかし、栗田の破綻以来大活躍の「ウラゲツ☆
  ブログ」の2016年03月01日
に紹介されてから、また一段とアクセスが増
  えたような感じなので、ちょっとだけがんばって増補しておきました。  
  
  前号以降に破綻したのは双風舎、つむぎ出版、本の友社、五月書房、
  福昌堂、酣燈社、育文社。この中でうちに影響のあったのは「中澤系
  歌集」の新版を出したばかりの双風舎でしたが、ここはJRC扱いだった
  ために、この歌集の仕入れの際に、うんざりさせられた印象が強く残っ
  ています。JRCについては前号をご参照ください。五月書房といえば、
  「西洋の没落」ばかり言われますが、高木護編纂の「辻潤全集」全8巻
  別巻1はよい仕事でした。いま思えば、1980年代初頭ごろまでは、出
  版業界もまだまだ余裕があったということでしょう。
  

[#07] etc.…

 ○TUTAYAの図書館問題についてはブックオフの類から仕入れたらしき選
  書のズサンさについての批判は大量に見ました。たしかにいかにもブッ
  クオフの108円棚に並んでいそうな大昔のガイド本などを選書してい
  たのはあまりにもお粗末です。しかし、ブックオフの類から購入した
  らしきことを問題にしているのは見あたらないようです。よーするに
  選書さえまともなら、ブックオフの類から仕入れてもかまわないとい
  うことでしょう。もちろん、ブックオフも古書店だし、古書店から購
  入して悪いわけはないので、表だって批判はできないでしょう。
  しかし、従来は、学校図書館も公立図書館も、絶版本ではない限りは
  新本を購入するところがほとんどだったのではないでしょうか。限ら
  れた予算を有効に生かすなら、旧刊本はブックオフも含む古書店業界
  から購入した方がはるかに安くつくことは間違いありません。TRCが蔦
  屋と組んだということは、新本を売るのはほどほどにして、システム
  管理業務で儲けようということなのでしょうか。もっとも108円の本を
  いったい何円で納入したのかも気にはなりますが。
   
 ○一方、古書業界でも、れっきとした古書店が、数十万円もするような
  稀覯本を古本組合の市に出品せずに、ヤフオフに出品したりすること
  もあるようです。(内堀弘「耽奇日録215」図書新聞)。稀覯本はその
  方が高く売れるのだそうで、いずれ組合の市には雑本の山しか出品され
  なくなってしまうかも。
  
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この「販売速報(仮題)」はe-mailの性質上,簡単に改訂することができ
ますが、その度に全読者に送信するのは、お互いに煩わしいので、最終版
をおよそ1ヶ月後にHPに掲載します。

   ◆1998/11/27 創刊準備号(通巻01号)発刊
   ◆「バックナンバー(01〜120号)」はHPにて公開中です。
     
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