「三月書房販売情報(仮題) 抄録版倉庫02」

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 現物は、ワープロ打ちの縮小コピーで、B4判の紙を半分にたたんだ、B5判4頁のものでした。
 ワープロ打ち以外の記事や写真や図表を、のりとはさみで張り合わせて版下を製作していたため、
 今回はコンバートできなくて省略した記事もあります。

●目次 

第0巻(1992年〜1993年) 01 02 03 04 05 06 07 08 09

三月書房販売情報(仮題)002号[第0巻第2号]                           

1993/02/10 [00-02-02] (c)SISIDO,Tatuo

 [三月書房 販売情報 (仮題) 準備00号] より


 
[はじめに]

 前号に引き続き、とりあえずの準備号ということでよろしく。
 1月5日の今年の初営業日から、売上カードをすべて残して研究してみることを、始めてみましたが、
 1月末にリーボック(中国製)の箱一杯溜まったのを見ると、大書店の1日分位の量かとはいえ、
 めんどうくさそうです。先日さる筋に頼んで、参考のために京都の「アヴァンティBC」さんの
 “売上スリップ集計ベスト200"を送ってもらいました。部数が入っていなかったので、少しがっか
 りしましたが、なかなか面白いようなので、うちも来年1月には同じものを作ってみたいと思いま
 す。しかし、うちではどうも200社は無理のようで、意味のある数字が並ぶのは、せいぜいベスト50
 社がいいとこのような気がします。カードをとりあえず出版社別に分けてみたら、岩波書店がだん
 とつで、講談社、中公、筑摩あたりが多いようですが、文庫、新書、ブックレットなどが大量に含
 まれているし、単行本だけの比較とか、選書、叢書、全集はどうカウントするのかとか、いずれに
 しろ「ゲームの規則」を決定しないことにはどうしようもないようです。

 
[人智学の本について]
 
 うちが人智学書を意識的に揃え始めてから既に十五年以上になる。関西のいくつかの研究会の方々
 などが常連になってくださっているので、古本屋なみに「人智学関係書在庫リスト」を作り、講演
 会場で配っていただくというような効果的な宣伝もできて、まあよく売ってきたほうだと思う。し
 かし、実のところ、数年来の日本協会の内紛の影響が出てきたためか、昨年はやや不調だったので
 はないかと感じられる。とくに一番応えているのは、高橋巖氏訳によるイザラ書房版「シュタイナー
 選集」が、7冊出たところで途絶してしまい、続刊がほぼ絶望的になっていることである。翻訳者
 は第一人者の定評があり、横尾忠則の装訂も良く、続刊を待つ人は何十人もおられるのに、ほんと
 に惜しいことである。トラブルの内容について、高橋巖氏は一般の目に触れる範囲では何も語って
 おられない。反対派に回ったらしい人々の意見は、イザラ書房の本の一、二で読めるが、小生のよ
 うな外部のものには、教義問答のようでさっぱり分からない。まあ察するに、親鸞亡き後の浄土真
 宗とか、マルクス亡き後のマルクス主義のようなものではないかと思われる。また、翻訳以外でも
 一番売れる高橋巖氏の新刊が、普通の出版社からは出ずに、某宗教団体の内部出版物として出たの
 も残念である。仕入れるコネがあるにはあるのだが、正味が100%!なので諦めた。また、人智学書
 の著訳者としては高橋巖氏に次ぐ存在である西川隆範氏が、昨年後半に何と8冊もの翻訳書を出さ
 れて棚は充実したが、あまりにも一度に出たため、ファンの人でも全部は買えなかったらしく、
 それぞれの売れ行きは同氏の従来の翻訳書に比べていまいちだった。下に販売資料としてイザラ書
 房の売上カードを載せてみましたが、それ以前の資料がないので増減の比較はできません。
 イザラ書房以外では、 水声社(旧・書肆風の薔薇)が快調に出版点数を増やしていますが、 以前大量
 にシュタイナ−の翻訳を出した人智学出版のものは、翻訳が落ちるとかでほとんど売れなくなって
 います。

 [イザラ書房の人智学書売上] 1991/09?〜1993/01

01 健康と食事 シュタイナー著/西川隆範訳 2200円 17冊
02 病気と治療 シュタイナー著/西川隆範訳 2300円 15冊
03 色彩の本質 シュタイナー著/高橋巖訳 1957円 11冊
04 シュタイナー選集 第二巻 シュタイナー著/高橋巖訳 3610円 9冊
05 シュタイナー教育小事典 シュタイナー著/西川隆範編・訳 2300円 8冊
06 いま、 シュタイナーをどう読むか 西川/松澤/鎌田/中島/渋澤 著 1545円 7冊
07 シュタイナー選集 第一巻 シュタイナー著/高橋巖訳 3610円 6冊
07 シュタイナー学校のフォルメン線描 高橋巖/ニーダーホイザー共著 1545円 6冊
07 シュタイナーの宇宙進化論 シュタイナー著/西川隆範編・訳 2100円 6冊
07 いま、 シュタイナーの「民族論」をどう読むか 西川/松澤/渋澤・著 1545円 6冊
07 ルカ福音書講義 シュタイナー著/西川隆範訳 2500円 6冊
07 シュタイナー教育の四つの気質 高橋巖著 1545円 6冊

 (人智学関係書在庫リストの一部)※省略

 [新潮社の本 売上トップ10] 1992/1/末?〜12/31

01 こころの処方箋 河合隼雄 1100円 27冊
02 ユーカラ・おもろそうし 吉本隆明他 1300円 20冊
02 沖縄いろいろ事典 ナイチャーズ編 1500円 20冊
04 京都おもしろウォッチング 路上観察学会編 1300円 10冊
05 植木等と藤山寛美 小林信彦 1200円 9冊
06 幸田文 2000円 8冊
07 楽天記 古井由吉 1900円 6冊
07 橋のない川(7) 住井すゑ 1545円 6冊
09 立原正秋 高井有一 1500円 5冊
09 ウンベルト・エーコの文体練習   1800円 5冊

 総冊数536冊は、ほぼ昨年1年間の新潮社の書籍の売上だが、世間から見ればたいした部数ではな
 いだろう。それでも、新刊の配本は一切なしで、ほとんどすべてが、発行日から1週間以上後で
 ないと入荷しなかった、という状態の中でとしたら良く売れたほうだと思う。参考までに言うと、
 同時期の新潮文庫の売上は400冊台である。文庫の方が多く売れるのが普通の傾向ではないかと思
 うが、毎年書籍のほうが上である。新潮社はそれでも直接FAXすれば、たいていの新刊は1週間
 程で送って来てくれるから、講談社、集英社よりはましである。両社についてはいずれ次号以下で
 述べたい。そして、このような大出版社の新刊配本が来ないことは困ったことではあるが、全体か
 ら見ればわずかなものである。ほかに出版社はあまたあり、そちらの書籍の新刊の9割以上は、事
 前予約さえしておけば、ほぼ希望どおり仕入れることができるからである。というわけで、
[1月の売り損ねNO.1]は集英社の堀田善衛著「めぐりあいしひとびと」である。1月初旬の発売で、
 2月に入ってもいまだに事前予約分も追加注文分も、1冊も入荷していない。順調に入っていれば、
 10冊位は売れたと思われる。そして、[2月に売り損ねが心配]なのは、文藝春秋のウンベルト・エ
 コ著「フーコーの振り子(上下)」あたりですが、文藝春秋は「女ざかり」もぽつぽつ入ったし、集
 英社ほどには心配ないような気がします。集英社といえば、昨年はクンデラのいいのを次々に出し
 てくれてかなり悩まされたのを思い出した。次は仕入れの簡単な、


 
[北冬書房の本の売上 TOP20]1987年後半?〜1992年末(総数319冊)《R》印:喇嘛舎発行

01 つげ忠男読本 つげ忠男 88/06/15 2575円 26冊
02 虹龍異聞 湊谷夢吉 88/12/10 2672円 25冊
03 夜行 NO.16   89/03/03 1648円 20冊
04 夜行 NO.17   91/05/15 2060円 22冊
05 山野記 つげ義春 編 89/ 1800円 21冊
06 夜行 NO.15   87/ 1648円 15冊
07 花ちる町 林静一劇画作品集   86/01/31 2575円 13冊
08 「ねじ式」夜話 権藤晋 92/05/30 2500円 11冊
09 つげ義春資料集成   91/12/ 9000円 10冊
09 犬泥棒の夜 菅野修作品集   90/ 2600円 10冊
09 踊るミシン 伊藤重夫 86/ 1236円 10冊
12 雨季 つげ忠男劇画作品集T   85/03/15 1854円 9冊
13 片山健画集 美しい日々《R》   85/ 2575円 8冊
13 宿場行 高野慎三 88/05/30 1545円 8冊
13 コミック論 石子順三著作集V《R》   88/11/20 3296円 8冊
13 定本・夢の散歩(新装版) つげ義春 92/03/16 2500円 8冊
13 夜行 NO.14   85/07/07 1854円 8冊
18 魔都の群盲 湊谷夢吉 84/ 1648円 7冊
19 私の絵日記 藤原マキ 85/ 1339円 6冊
20 マルクウ兵器始末 湊谷夢吉 86/ 1442円 5冊
20 イメージ論 石子順三著作集U《R》   87/04/20 3605円 5冊
20 夢と祈祷師 鈴木清順 91/07/28 1800円 5冊
20 三橋乙揶読本   90/06/09 2800円 5冊

 上の表を見ると1年間に60冊程度の売上だが、年間に3点ほどしか新刊が出ていないことや、途
 中で品切になってしまった本が多いことを思えば悪くないといえるだろう。湊屋夢吉の2点や
 「夜行15」などはかなり前に切れたままである。それから、「つげ義春資料集成」は限定版で発売
 と同時に版元売切である。この本は限定880部で予価8800円、実物を見ずにちらし一枚で注文する
 のは難しく、度胸がなくて結局10冊しか仕入れられなかったが、予想以上によい本で、1月足らず
 で売り切れてしまい惜しいことをした。北冬書房とは同社が取次口座を開く以前からというより、
 同社の前身の幻灯社時代から、あるいは「漫画主義」の時代からの付き合いである。当時は直扱い
 だった。うちはまんが本を扱い出したのはけっこう早くて、「ガロ」の2年目で「COM」が出始
 める前ごろからである。前号に書いたように、現在「週刊少年ジャンプ」は毎号4冊に対して、
 「ガロ」は十数冊売れているが、単行本も同じ傾向で青林堂や旧「コミックばく」系が強い。いず
 れ販売資料が集まれば、もう少し詳しく分析できるでしょう。最近では「虹色のトロツキー」 (@
 A刊行以下続刊)がよく売れたが、これは読んでみたら面白く、思わず満洲関係の本を読みあさっ
 てしまった。ついでながら、いずれ中華人民共和国の域内植民地支配が崩壊したら、「満洲共和国
 (仮称)」のようなものが誕生しかけると予想される。ソヴィエト崩壊によるモンゴルブームに続く
 可能性大であろう、というよりすでにここ数年、「渤海国」関係の本が続いて出ているのが始まり
 だったのかもしれない。

 
 [おまけ]

 ●昨夏ごろ、文芸書出版から撤退かと噂された福武書店は、新刊点数が目立って減ったこともあり
  心配されたが、どうやらまだ続けてくれるらしい。撤退かと噂された時には、サンリオ、旺文社
  各文庫の経験から、うちも福武文庫の在庫を積み増したが、そのころ大阪の某ブックセンターで
  は早くも「福武文庫さよならフェア」をしていたと、さるお 客が教えてくれた。

 ●新潮社「カフカ全集」(30000円)と白水社「ベルグソン全集」(35000円)の復刊セットは各1組売るこ
  とができたが、いずれも復刊直前の古書価は10万円を越えていて、お客もそのことを十分ご承知
  であった。古書目録を見ると、まだまだ復刊できそうなものがあるからどんどん復刊してほしい
  が、岩波の全集のように二、三次募集が普通になると、古書価は上がらず、その上、新刊も無理し
  て買わずに見送る人が増えたりするので難しい。

 ●数年前惜しまれつつ廃業した、京都大学前「ナカニシヤ書店」が、当局側の要請とかで教科書期
  間だけ、構内特設テントでテキスト販売を再開をすることになったそうです。

 ●ごくおおざっぱに計算して見たら、うちの店の売上に雑誌が占める割合は、雑誌コードのコミッ
  クを含めてもせいぜい15%位のようである。店売分だけなら10%以下のような感じであり、それ
  もバックナンバーや別冊増刊ムック類が多いようだ。さらに、これもいいかげんな計算だが、う
  ちの店の客単価は2600円より上で、単品の平均定価は1300円よりは上のような感じである。いず
  れはもう少しあてになる数字を出して見ようと思う。  
               


 ※註釈及び言い訳(2002/03/11記)
  
  ○「ゲームの規則」はいまだに制定されていないというか、ぜんぜん気にせずに10年過ぎてし
   まったようだ。
  ○中華人民共和国はいずれは6つか7つに分かれると予想しているのだが、まだ少し先のことみ
   たいだ。
  ○福武書店の文芸書からの撤退はもう少し後のことになった。この後まずベネッセに社名が変わ
   り、さらに数年してから、ごく一部の雑誌を残してすべて撤退された。文庫にはいいものが多
   かったので残念だ。
  ○このころは古書価がまだ高かったようだ。現在は古書価は深刻なストック・デフレに陥ってい
   るそうだ。とくに全集物の値崩れはものすごくて、岩波物などは買い取りを断られることもめ
   ずらしくないようだ。
  ○現在ではうちの店の売り上げに占める雑誌の比率は10%以下になっている。

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