「三月書房販売情報(仮題) 抄録版倉庫04」   ▲三月書房homeへ

 現物は、ワープロ打ちの縮小コピーで、B4判の紙を半分にたたんだ、B5判4頁のものでした。
 ワープロ打ち以外の記事や写真や図表を、のりとはさみで張り合わせて版下を製作していたため、
 今回はコンバートできなくて省略した記事もあります。

●目次 

第0巻(1992年〜1993年) 01 02 03 04 05 06 07 08 09

三月書房販売情報(仮題)004号[第0巻第4号]                   

1993/04/25 [00-04-04]  SISIDO,Tatuo 禁無断転載 無断複写&配布歓迎 (非売品)

 三月書房 販売情報(仮題) 準備0000号

 [わりとよく売れてる本@(1月初〜4月中旬)]
   ※売上数5冊以上/文庫・新書・コミック・ブックレット類などを除く/順不同

重力の虹 1 国書刊行会 別冊太陽:北大路魯山人 平凡社
身体の深みへ 宝島社 追悼私記 宝島社
闘うコラム 宝島社 別冊宝島:裁判ゲーム 宝島社
別冊宝島:ワイセツ大行進 宝島社 新版 古書店地図帖 図書新聞社
きもの 新潮社 退屈な迷宮 新潮社
育児の百科 岩波書店 意識の形而上学(☆1) 中央公論社
そば猪口(☆2) 河出書房 滞欧日記 河出書房
マルコムX自伝 河出書房 赤い盾(上/下) 集英社
フーコーの振り子(上/下) 文藝春秋 女ざかり 文藝春秋
CG STEREOGRAM (1) 小学館 ねじ式・紅い花 小学館
夜想31:マヌカン ペヨトル工房 花咲ける孤独 青林堂
新・書物の解体学 メタローグ リテレール B/同C メタローグ
別冊:読書の魅惑 メタローグ CD:吉本隆明講演 メタローグ
音楽の本質と人間の音体験 イザラ書房 色彩の秘密(☆3) イザラ書房
すてきな人生(☆4) 思潮社 現代短歌雁25号/26号 雁書館
世紀末「時代」を読む 春秋社 海・呼吸・古代形象 うぶすな書院
生命形態学序説 うぶすな書院 コンプリート・ジャズ・コミック(☆5) 双葉社
サルの正義(☆6) 双葉社 天使の愛(☆7) 講談社
ワイルド・スワン(上/下) 講談社 社会がわかる本(☆8) 講談社
思想としての死の準備(☆9) 三輪書店 京に蠢く懲りない面々(☆10) かもがわ出版
書評10年(鶴見俊輔) 潮出版社 歌集 鳥獣蟲魚(☆11) 小沢書店
雪月花の近代(☆12) 京都新聞社 内蔵のはたらきと子どものこころ 築地書館
藁の天皇(☆13) 情況出版 磯野家の秘密 飛鳥新社

 [わりとよく売れた本]を5冊以上にしたのに深い理由はない。次は、10冊以上を[かなりよく売
 れた本]、20冊以上を[たいへんよく売れた本]にしてみようかと考えている。
 また、いろいろな理由でリストからはずしたものも多いし、あまり厳密なものではない。
 上のリストにおいては、@文庫・新書・コミック(雑誌コード)・ブックレット以外にも、A書籍
 の定期刊行物や、B同一タイトルのまとめ買い(いわゆる採用品)は除いてある。@については、今
 のところ枚数を数えるのがせいぜいで、それ以上のことはめんどくさくて調べ切れないためである。
 Aについては岩波書店の「新日本古典文学大系」、「講座近代日本と植民地」とか、筑摩書房「年表
 日本の歴史」、吉川弘文館「国史大事典」その他いくつかのものが、定期5人以上あるが、これら
 は別の機会にまとめてみたい。Bについては、外商と言えるほどのことはしてないが、近所のお役
 所と高校に少し納入している関係で、例えば「『栄養と料理』フーズデータ@ABF」各26冊とか、
 「Q&A同和問題の基礎知識」50冊というようなものが多種あったが、そんなのをいちいち載せて
 も、 あまり面白くないので止めておいた。「外商」以外でも、個人客の注文で例えば「パラノイア
 スター」20冊、「筆蝕の構造」20冊、「シュタイナー教育の方法」15冊、あるいは「近代個人主義とは
 何か」12冊、などのけっこうな売上が多種あったが、やはり1冊づつ売っている本とのバランスが
 崩れそうなので止めておいた。「別冊宝島」と「別冊太陽」は雑誌だが単行本と売れ方が変わらな
 いので載せた。ほかにも例えば「ユリーカ」「ジャズ批評」「レコード・コレクターズ」「鳩よ」
 「たくさんのふしぎ」その他の雑誌も、バックナンバーを置いているし、売れ方も「別冊宝島」同
 様だが、売上カードが入っていないので無視した。「本の雑誌」「IS」などは売上カードは入っ
 ているが、細かくなるので止めた。書籍コードのコミックでも安いのは同じく止めておいた。(例
 「問題外論A」) 。
 (☆1)は井筒俊彦氏の遺著。井筒氏の本で残念なことは、せっかくの「著作集」の編集がお粗末で
 しかも定価が高いことである。それでも定期読者が3名おられるが、もう少し安いか、もう少し編
 集がよければバラでももっと売れるだろう。(☆2)は料治熊太著の新装版。その道では有名な人の
 有名な本だそうである。うちの店のある寺町二条界隈は、古道具、骨董、古美術、アンティーク関
 係のお店が多いことで有名である。(「別冊太陽:京の骨董屋さん」参照のこと)。その関係か、うち
 でも「INAX BOOKLET」「別冊太陽」 「季刊銀花」のバック・ナンバーなんかが良く売れる。(☆3)
 の「色彩の秘密」と前の「音楽の本質〜」は、どちらもシュタイナー著/西川隆範訳。シュタイナー
 関係書については「00号」に書いたように、近ごろは西川氏の本ばかり出版される。(☆4)は北村太
 郎の遺作集。(☆5)はラズウェル細木「コンプリート・ジャズ・コミック・コレクション」。「ジャ
 ズ批評」誌連載のを中心にまとめたジャズ漫画集。うちは「ジャズ批評」を創刊時から扱っている
 ので、その手のジャズ・ファンのお客が何人もおられる。(☆6) は呉智英の最新刊。呉氏の本は
 すべてうちの店のロングセラーである。(☆7)は横尾忠則の画集のようなもの。講談社の本の分類
 はよく分からないことが多くて、この本はなぜか「コミック」に分類されている。(☆8)橋爪大三
 郎の本はどれもロングセラーだが、この本の内容は少し物足りないので、今後はあまり期待できな
 いような気がする。(☆9) の出版は3月20日過ぎの読売新聞広告で知った。この本(山折哲雄編で吉
 本隆明・河合隼雄ほか)のようなうち向きの本の事前情報でも、入手しそこなう時がたまにはある。
 出版社も初耳のところだったが、FAXで注文したらすぐ手配してくれて1週間後に25冊入荷。そ
 の後の約20日間で18冊の売れ行きは順調なほうだろう。(☆10)は完全なローカル物。京都が政治経
 済的には、ちゃちな田舎町であることがよく分かる本。(☆11)前登志夫歌集。最近この本で何かの
 賞を受賞されたようだが、もとからそんなこととは関係なしに売れている(通算12冊販売)。うちの
 店の現代短歌関係書の棚は、客観的に見てもかなり充実していると言えるはずである。詳しくはい
 ずれ別の機会に特集するかもしれない。(☆12)は加藤一雄著で、副題を「京都日本画の100年」と
 いう。書名も出版社名もややローカルぽいが、けっしてそんなことはない。主著「京都畫壇周邊」
 (用美社)もロングセラーである。(☆13)は寺山修司の本。彼の本については後述。

  [福武書店の本の売上]  1992年1月?〜93年3月

◆文庫以外の部◆ 計163冊   ◆文庫の部◆  計314冊  
1.批評空間増刊 ANYONE 8冊 1.ことばの自由をもとめて/田中克彦著 26冊
2.戦国大名と天皇/今谷 明著 7冊 2.私版京都図絵/水上勉著 9冊
3.むずかしい愛/カルヴィーノ著 6冊 2.古本屋四十年/青木正美著 9冊
4.南島イデオロギーの発生/谷川健一著 5冊 4.新版古書街を歩く/紀田順一郎著 7冊
4.批評空間 8号 5冊 4.異彩天才伝/荒俣宏編 7冊
6.龍の住むランドスケープ/中野美代子著 4冊 4.サラサーテの盤/内田百闥 7冊
6.批評空間 7号 4冊 7.香りの手帖/松榮堂広報室編 6冊
6.お引っ越し/ひこ・田中著 4冊 7.第三阿房列車/内田百闥 6冊

 福武書店は昨年の春頃から、 ほとんど新刊が出なくなり、夏頃には撤退が噂されたほどだった。ま
 あそのわりにはそこそこ売れたと言えるだろう。近ごろはぼちぼち毎月の出版点数も回復しつつあ
 るようだが、質の方ははいまいち回復しきれてないようだ。その傾向は、中野美代子氏や澁澤龍彦
 氏を担当していた編集者が、89年頃に日本文芸社に移ったり、90年代に入って吉本隆明氏が「海燕」
 の連載を中止された頃から現れつつあった。文庫のライナップもひところは魅力的だったが、近ご
 ろは平凡である。単行本も文庫もよかったころのものの在庫が品切れがちで、重版の見込みもはっ
 きりとしないので困ったことである。もともとは受験産業で充分儲かっていて、税金をたくさん払
 うよりは、文芸書出版で赤字を出した方がいいという、まことけっこうな理由で進出されたと聞い
 ていた。以前のように《赤字覚悟本》を景気よく出し続けてほしいが、前年度までは定価の4%と
 いう高率だった文庫の褒賞金が、今回からは一律で1枚4円になってしまったことを考えると、あ
 んまり気楽に赤字を出してはいられなくなったのかもしれない。

 [おまけ]
 
 「寺山修司」がブームと認定されたらしく、 新刊、復刊はもとより雑誌の特集号、増刊号からビデ
 オやCDにいたるまで、実に多種のものがすでに出版済み、あるい出版予定されている。しかし、
 どうもこんなふうに、大々的に売り出すのは似合わないように思う。「カルト」はもとより、「サ
 ブカルチュア」なんていう古い言葉すらなかった頃の、「アングラ」の親方だから、本当は隅っこ
 の方で細々売り続けるほうが似つかわしい。よーするに、「マイナー」の中での大物であって、「メ
 ジャー」な大物として商売しようとしても、そんなには売れないのではなかろうかと思う。まあそ
 れはともかく、こんな機会でなければ出せそうもない、渋くて長持ちのする本が何冊か出てくれれ
 ば、ブーム後も扱い続ける予定の、うちの店としては何も言うことはない。

 [おことわり]

 当「販売情報」は、事務処理能力不足のため(例、うちにコピー機がない)、いまのところ、 どな
 た様からも定期予約をお受けできません。悪しからず。


 附録[京都書店地図(テスト版)] @寺町二条周辺  <※地図省略>

 寺町通りの書店史は、脇村義太郎氏の「東西書肆街考」(岩波新書)に詳しい。現在、うちの近所では
 書店は減少したが、古道具屋、書画骨董古美術アンティークの店、画廊ギャラリーなどが増加中。
 そのほか、筆墨和紙硯などの書道専門店が五、六軒も集まっているのが目立つ。地下鉄も徒歩3分
 のあたりに開通予定だし、各商店の傾向とあいまって、行政用語でいうところの、《高齢化社会》
 や《生涯教育》の時代にふさわしく、イチョウ並木の舗道も落ち着いた雰囲気で、京都の商店街の
 中では、見通しが明るい方だと言われている。

 [☆1]芸艸堂(寺町二条下ル)美術書の出版社の小売部で木版画なども売っている。
 [☆2]尚学堂(寺町二条下ル)古書店。
 [☆3]三月書房(寺町二条上ル)三月(1950年)に開店したので三月書房としたらしい。東京の同名の
    出版社とは何の関係もない。
 [☆4]若林春和堂(寺町二条下ル)脇田氏の前掲書に詳しい老舗。現在は教科書を含む新刊書店。
 [☆5]檜書店(二条通寺町西入ル2筋目)観世流謡曲本の版元として有名な会社の京都出張所。
    小売もしている。
 [☆6]藝林荘(寺町夷川上ル)反町茂雄氏の「一古書肆の思い出」に、京都で一番の古典籍商として何
    度も登場する。
 [☆7]文苑堂書店(寺町夷川上ル)書道関係書の専門店。古書店だが新刊書も扱う。
 [☆8]東方書店(寺町夷川上ル)中国書の専門店。よく留学生に道を聞かれる。
 [☆9]貝葉書院(二条通河原町東入ル)と
 [☆10]芝金聲堂(同)はともにお経の本の専門店。版元と小売を兼ねているようだ。とくに貝葉書院
    は鉄眼禅師の一切経版元として有名である。
 [☆11]クリスチャン文書伝導団(河原町通丸太町下ル)はキリスト教関係書の小売店。
 [☆12]大龍堂書店(新椹木通竹屋町上ル)有名な建築書専門店で出版もしてる。少し分かりにくい場
    所なのでよく道を聞かれる。
 [☆13]文華堂(河原町通竹屋町上ル)美術書、考古学書専門の古書店で一部新刊も。
 [☆14]彙文堂(丸太町通河原町西入ル)内藤湖南揮毫の看板で有名な中国図書専門店。
    地上げで50mほど東に新築移転した。
 [☆15]永澤金港堂(河原町通夷川上ル)教科書関係の新刊書店。
 [☆16]高文社(丸太町通富小路角)京都地方裁判所の東隣で法律書の新刊専門店。
 [☆17]金原商店京都店(河原町通丸太町上ル)医学書専門店。
 [☆18]文藻堂(新烏丸通竹屋町上ル)古典籍・書画専門の古書店。
 [☆19]文祥堂書店丸太町店(河原町通丸太町上ル)河原町三条の本店新築中の仮店舗だったが、
    完成後も営業中の新刊書店。
                   以上1993/04/25現在。 蒙御免。


 ※註釈及び言い訳(2002/03/21記)
  
  ○「わりとよく売れてる本」の第1回。わずかに5冊だがこれがなかなか売れない。しかし、
   初版3000部の本を5冊と3万部の本を5冊では、ぜんぜん意味が違うような気がするのだが
   そのあたりの区別はめんどうなので無視した。このころはペヨトル工房もまだ現役だった。
  ○福武については前号にも載っていたが、結局このあとベネッセになり徐々にうちが売ってい
   たような新刊は出なくなった。したがってこのころが実質的にはほぼ最後だったようだ。
  ○寺山修司はやはりすぐに盛り下がったが、いまだに根強いファンがついている。
  ○「京都書店地図」には地図がついていたのだが、技術的理由で省略しました。この号はうち
   の店の周囲、半径200mくらいにあたりますが、けっこう多くの立派な専門書店があるこ
   とがわかります。現在は消えた書店もいくつかありますが、改訂版がこの先の号に出てきま
   すから省略します。