犬儒学派の哲学者。太女神を祀った神殿の入口に置いてある土器の壺の中で生活していた。そして、つねに、1人の正直な人が現れるのを待望していた[1]。犬儒学派の人々 Cynics というのは、その名が意味する通り(kynikos=イヌのような人々)、太女神に仕える「イヌたち」、あるいは「番犬」であった。彼らは正直な人を探し求めた。それというのも、自分たちは、今、世界の終末期に生きており、もし正直な人間が1人でも生きていなければ、太女神がこの世界を破滅させる、と信じていたからであった。
こうした考えはオリエントのカリ・ユガの考えに相当するものであった。カリ・ユガというのは,クリタ・ユガ、トレーター・ユガ、ドヴァーパラ・ユガ、カリ・ユガと4期に分けられる世界周期の最後の周期のことで、このとき人間は非情で、凶暴で、勝手気ままで、下劣になっている[2]。完全にこうした状況になったときに、世界の終末の日が目の前に差し迫ったものになっている、ということであった。
cynicalという語は、ディオゲネースが一生かかって待望したにもかかわらず、地球の破滅を防いでくれる正直な人間がついに1人も見つからなかった、という意味からきたものであった〔ホンマカイナ!?〕。
Dog.
Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)