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Goddess(女神)

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 神Godという言葉に対して、女神Goddessという言葉ほど西欧の性的偏見を表している言葉は少ないだろう。現代語の含蓄は古代のものとは大きく違っている。古代人にとって、女神は宇宙および宇宙の法則を作り出した、十分に発達した、宇宙的親の姿をとり、自然の支配者、運命、時、永遠、真実、知恵、正義、愛、誕生、などを意味した。

 何世紀にもわたって、男性著作者たちは女神を砕いて、無数の「女神たち」にしてきた。その女神たちは、異なる時代の異なる種族たちから与えられた、異なる添え名や名前を用いた。そのような体系が通常の男神の概念に持ち込まれていたら、全能の神、ヤハウェ、主、聖霊、正義の太陽、キリスト、創造主、立法者、エホバ、神、アラー、救世主、救い主、パラクリート(聖霊)、天の父などの無限に続く名前をもつ、多数の神々が存在するようになっていただろう。そして世界中の神々はそれぞれ、特定の役割を振り当てられていただろう。中世の間に、男性神の古い名前や添え名の大部分は唯一の神の「秘密の名前」として融合してしまった。一方女神の名前や添え名はさらに細かく分類されて、中には男性化されたり、人間化されたり、悪魔にされたりしたものもあった。しかし女神の場合ほとんど全部について、同じ原形的な特徴を解明する研究を進めていくと、そのような分類は崩壊していく傾向がある。

 女神に関する古代の見方を精査することは有益である。そうすると、ほとんどいつも男性より女性が強力であることが示される。女は男の母で、男という存在を作り出したものであるばかりか、生命の源泉の血を全創造物に吹き込む神である。男神は女性の知恵の分け前に与るか、女性のカをとり入れて初めて繁栄するが、全面的に男性中心の神学を創造することによって、最終的自信過剰、象徴的母殺しを犯すようになる。子供を生み、世話をする女性の本能の力が、男性を支える父権制の結婚制度に縛りつけられるようになるにつれて、女神の力も、新しい男性中心の宗教を支えるために利用されるようになった。学者たちは今日でも、男も女もひっくるめて、古代の神をgodsと呼ぶことがある。そしてときには、女神の神託的発言はgodから出たと言われる[1]。

 おそらく女神には千もの名前があるという、何度もくり返されてきた古代人の見解をもっと真剣に取り入れるべきだろう。現在の百科事典に載っている女性の神はどれも正しくは、女性の天帝の核となる概念の一面を表しているだけと見るべきかもしれない。現代の寺院には、この中心概念を永続させているものはない。キリスト教の福音書が命じるままに、男たちはずっと昔から、女神の神殿を打ち壊してきた(『使徒行伝』19 : 27)。それでも、女神の神殿をつまらないものだと中傷した社会においてさえ、中心となる概念は存続している。その中心となる概念から新しい女性神学が今世紀のうちに生まれてくると信じている人々もある。


[1]Prithchar, A. N. E. 1, 285 ; 2, 185.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)



[画像出典]
Magna Mater