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Fates(運命の三女神)

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 3人の運命の女神、すなわち処女そして老婆(あるいは創造者、守護者、破壊者)というおきまりの登場人物となって過去、現在、未来を支配する者としての三相の女神の跡は、ほとんどすべての神話にたどれる。女性の三相一体は西欧の宗教ではさまざまな外観を装った。例えば北欧のノルンあるいは運命の三姉妹Weird Sisters(wyrd=運命に由来する)、スラヴ人の三相のグィネヴィアあるいは三相のブリジットなどである。

 ギリシア神話では、3人の運命の女神というと、モイラたち、あるいはフェイトのような主たる三相の女神と並んで、ホーラたちグライアイムーサたちゴルゴン、フューリーなどの三相の女神たちが挙げられる。この女神たちは必ずと言っていいほど織り姫であった。アングロ・サクソン文学の中では、運命は「織られる」ものであった。ラテン語のdestino(運命)は織られるもの、あるいは紐や糸で固定されるものを意味する。妖精-女たちの魔力が「結ぶ」ように、運命も必ず事が起こるように「縛る力がある」のである[1]

 モイラたちとは、生命の糸の紡ぎ手クロートーと、測り手ラケシスと、切り手アトロポスをさした。どれも昔の三相一体アプロディーテーの一面であった。アプロディーテーの本当の名前はモイラで、「時の神」より年老いていると言われた[2]。現実には、のちに運命-女神についた名前であった。この名前は、ミケーネ時代には、古い母権制にしたがった、女性の財産所有者による土地所有を意味した。ここからモイラは用地を表し、それがのちに「割り当てられた運命」の意味になっていった[3]

 アプロディーテー三相一体は分けられて、3人のホーラたちか、天女になることもあった。すなわち、それぞれ秩序運命平和を意味するエウノミアディケーエイレーネーEireneである。これらは、個人を形成する四大を「定めること」と関連があった。そして太母によって各人に定められた運命と、「平和のハト」と言われたアプロディテ・コルンバによって生命の終わりに規定されているのもたらす「平安」とも関係した[4]

 機を織る運命の女神たちを誘惑して、危ない瞬間に糸を切らないようにできれば、各人は生命を引き延ばすことも可能だろう。だめなら死ぬことになる。魔法のまじないはこの原理に基づいていることが多かった。傷を癒すスラヴのまじないがあるが、これは女神の楽園があるブジャンあるいはブヤンという神秘の島に住む運命の織り姫に向けて唱えられた。「大海原で、ブヤンの島で、美しい乙女が絹を織っていた。乙女は絹を織るのをやめなかった。生命の血が流れを止めた」[5]という文句であった。ロシアの神話によると、この乙女はラテンの女神マトゥタ、あるいは、伝統的に第一の運命とされるエーオースEosに相当する暁の乙女であった。太陽神は、この乙女の魔法の島に毎日休息に出かけ、そこから起きて天に昇った[6]

 運命-女神のギリシア名は、ほかにテュケーディケーネメシスがあった。ローマ人はフォルテュナFortunaと呼んだが、この女神は、三相一体であることも単一であることもあった。ヴィエンヌ〔フランス南東部の都市〕から出土したテラコッタ製の円形浮き彫りに見られるように、運命の女神は月桂樹(ゲッケイジュ)の輪に囲まれた城壁冠をかぶった都市の守護女神の姿を示した[7]。バビロニアの「運命の母」としては、フェイトは創造女神マムタンと名づけられた[8]。すべての原初の印欧のカルマの母、すなわちカーリー・マーKali Maにもとづいていた。

 Fateは中世においてfairyと同義語となった。アルフォンサンス・ド・スピナは、運命の姉妹たちを悪魔の一覧表のいちばん上に載せて、述べている。「運命の姉妹たちを見たことがあるという者があるが、そうだとすると、見たのは女ではなく、デーモンだ」[9]。ボルムス〔西ドイツ西部の都市〕のブルカドスは、次のような不満をもらした。人々は毎年、年の初めに運命の女神、または運命の姉妹たちを崇め、卓上にお供えの食物と飲み物を置いて、さらに肉を切るためのナイフを添える。これはおそらく人間の死を扱う運命の切り手が自分のナイフを使う気を起こさせないようにするためである[10]

 ギリシア人は今でも、運命の女神がすべての新生児の揺籃を訪れて、妖精の名付け親として子どもの将来を決めるという。両親は番犬をつないで、戸を開け放し、モイラたちの機嫌をよくするように美味しい食物を並べる[11]。おとぎ話の多くが、妖精の名付け親を怒らせるのは愚かだと厳しい教訓を与えている。現在でも、ジプシーはどの子どもの揺籃のところにも「白い服の3人の貴婦人」が立っていて、アーサー王伝説の「3人の女王」のように、生命が走りつきたときに霊魂を取り返すという。ギリシアの死者への哀悼の言葉は、今でもmoirologhiaと呼ばれるが、これはモイラたちに死者を返すという意味である[12]


 画像は、
BLAKE, William
(b. 1757, London, d. 1827, London)
Hecate or the Three Fates
c. 1795
Pen and ink with watercolour, 430 580 mm
Tate Gallery, London
 出典:<http://www.wga.hu/html/b/blake/>


[1]Cavendish, P. E., 75.
[2]Bachofen, 57.
[3]Lindsay, A. W., 32.
[4]Larousse, 138.
[5]Wedeck, 50.
[6]d'Alviella, 168.
[7]Lindsay, O. A., 379.
[8]Epic of Gilgamesh, 107.
[9]Robbins, 127.
[10]Miles, 181.
[11]Briffault, 3, 160.
[12]Rose, 40.

Barbara G. Walker : The Woman's Encyclopedia of Myths and Secrets (Harper & Row, 1983)